袴田勝浩さんの「イギリス暮らし(1)」(97・10・5) (秋田市出身)
はじめまして。6月からイギリスで仕事をはじめた袴田と言います。
イギリスに関しては、たくさんの本が出版されているのは承知していますが、 私自身がこちらで生活をはじめてみて感じたことを書いてみようかと思います。 いろいろと、勘違いもあるかと思いますが、ご容赦下さい。 イギリスに関しては、林望氏の「イギリスはおいしい」、「イギリスは愉快だ」 などの名著以外にも、沢山の本が出版されていますので、私ごときがこんなの を書くのも、恥ずかしい気もしますけれど。
イギリスに来たきっかけは、今年の1月末に届いた、イギリスで働く気ある? という一通の E-mail でした。(差出人は以前、同じ会社で働いていた人) その後、英語の履歴書を書いて送ったり、わざわざ面接のためにイギリスに行っ たりとあったのですが、最終的には、5月で退社して、6月からイギリスで働 く、ということになりました。
正直なところ、わざわざ会社を辞めてまで行くべきかはちょっと悩みました。 面接の際にも、正式な職員としては雇えない、あくまでも契約社員(コンサル タント)という身分である、と言われてましたし。 (なんといっても、日本国籍、というのが、ネックだそうです。) 最終的には、なかなかないチャンスだし、ここで断ると一生、悔いが残りそう だったので、行ってみよう、と決断しました。
出発前には、様々な事務的な手続きがあります。 思いついただけでも、パスポート、国際免許、転出手続き、年金、健康保険、 クレジットカード、銀行、などなど、いろいろと細かい手続きがありました。 ちなみに、転出は、海外への転出となり、どこの住民でもなくなります。 戸籍の附票とかいうのに、記録が残るだけで、再び日本に住むようになったら、 手続きをします。つまり、そのまま、1月1日を過ぎると、住民税を払う義務 はありませんし、所得税もありません。健康保険も、入ってません。 いま恐れているのは、日本に帰った時に病気になった場合です。病院などにか かると、全額払うことになると思います。 実をいうと、全部きちんと片付いた、という訳にはいきませんでした。 (ま、何とかなるだろう、と思ってますが、不安は残ってます。)
それよりなにより、大変だったのが引越しです。 普通の日本企業の駐在員などの場合、いろいろな面で、会社が面倒を見てくれ ると思います。(日本に残した荷物をトランクルームなどに預けるとか、各種 手続きをやってくれるとか。) 私の場合、引越し費用は先方が払うので問題はなかったのですが、問題は、日 本に置いていく荷物です。 いろいろと考えたのですが、所詮は一年でおしまいかも知れない、ということ で、身の回りの衣類と多少の本とパーソナルコンピュータだけを送ることにし、 他の荷物は、自宅においていくこととました。 (最終的には、某宅配便会社経由でダンボール箱を5個だけ送りました。私の 前任者は、ダンボール一個だけだったそうです。今考えると、これは、完全な 失敗だったような気がしてます。)
ぎりぎりまで各種手続きなどで手間がかかりました。あとは、送別会。 まあ、送別会と称して、誘ってくれる方は、一回なんだろうけど、誘われる方 は何回あることか。少しは、誘われる方の都合も考えて欲しいものです。 (とはいいつつ、義理難く断らなかったほうが悪いか?)
最終的に、イギリスに着いたのが、5月28日でした。 成田から、飛行機で約13時間かかります。直行便はある面で便利なのですが、 座りっぱなしなので、とても疲れます。おまけに、時差が8時間(夏時間なの で)あるので、日本を昼頃出発すると、イギリスに到着したときは、13時間 過ごしたにも関わらず、同じ日の夕方です。 入国審査では、あらかじめ送られてきた書類を見せたので、問題はなかったの ですが、審査官が、なんでここが日本人なんか雇うんだ、とかぶつぶついって ました。私は、何か喋るとめんどくさそうなので、黙ってました。 (観光目的じゃないと、あれこれうるさい場合が多いと聞いてます。)
入国審査を終えて、外に出ると(私は、全て機内持ち込みにしていました)、 あれ、と思うのが、想像以上に、肌の色の違う人が多いことです。 アメリカを”人種のるつぼ”とかいいますが、イギリスも、負けず劣らず、い ろいろな国の人が暮らしているようです。 特に、一時は世界を制覇したような国なので、旧植民地(アフリカ各国、イン ド、香港など)から来ている人が多いようです。
さて、勤務先があるのは、イギリスのヒースロー空港から西に車で30分弱走っ たところにある、レディングという町です。 (レディングとロンドンの中間くらいにヒースロー空港がある感じです。) アメリカだったら、ここで迷わずレンタカーを借りて出かけるところでしょう が、ヒースロー空港からは、各地の大きな町に行くバスが出ていて、非常に便 利なので、バスを利用しました。 空港を出ると、バスは、M4と呼ばれるモーターウェイ(まあ、日本で言う高 速道路でしょう。もちろん、アメリカのフリーウェイと同様、通行料金などと いうものは取られません。高速道路であんな高い金を取るのは日本くらいでは ないでしょうか。)に入ります。 そして、西に向けて約30分くらい走ると、レディ ングの駅に到着します。 モーターウェイにのってから窓の外を見ると、辺り一面、緑の牧草地の様な風 景が広がっていました。羊が放し飼いにされていたりして、それはまあ、のどか な風景です。お〜、これがイギリスか、と感動してました。(面接に来た時も 同じ景色を見ていたんですが、その時は余裕がなかったんだろうな) 空港を出たのは、既に、夕方5時を過ぎていたにも関わらず、日本の午後3時 頃の様な明るさでした。
レディングに着いてからちょっと恐かったのが、タクシーに乗る時です。運転 手に行き先を告げてから乗り込むのはいいのですが、タクシー乗り場にいって 先頭の車の運転手を見たところ、両腕一杯に彫り物をした人で、やだな、とは 思ったのですが、どうしようもないので、そのタクシーに乗りました。 (話をしたら、特別、変わった人ではなさそうでした。) この運転手に限らず、イギリスでは、彫り物をしたひとを見かけることは、少 なくありません。極普通の人(女の子)でも、アクセサリとして、やっている ようです。ただ、私の見たところ、日本のヤクザ映画に見られるような奇麗な 彫り物ではなく、何か、ボヤッとした模様が多いようにように見受けられまし た。(日本の、それこそ、恐そうな人の彫り物をまじまじと見る機会はなかっ たので、実際はどうなのかわかりませんけど) また、小学生くらいの子供でも、耳にピアスしたのを見たこともありますので、 皆さん、アクセサリとしか考えていないんだと思います。 (ピアスしてるのは、子供でも、珍しくも何ともありません。)
イギリスのタクシーといえば、ロンドンタクシーは、有名だと思います。 あれは、基本的に、しかるべきところ(駅など)で止まっている場合や、流し の空車の場合には、乗ることは可能ですが、電話などで呼ぶことはできません。 なんせ、タクシー無線が付いていません。(私の記憶では) 電話で呼ぶことができるのは、ミニキャブとか呼ばれていて、日本でいうとこ ろの白タク(公認らしい)です。要するに、普通の車と同じナンバーをつけて ます。ただ、ほとんど、屋根に、目立つように、それなりの看板(?)みたい なものをつけています。 どちらにも乗ったことがあるのですが、タクシーは、それなりのイギリス人の 運転手が多いような気がします。逆に、ミニキャブの場合は、インドあるいは アラビア系の人が多かった気がします。
話がちょっと、それてしまいましたが、イギリスのタクシーに無線が無い以上、 日本の様に、行き先がわからない時に無線で聞く、などということはできませ ん。その代わりといっては何ですが、私の乗ったタクシーの運転手は、携帯電 話を持っていました。私の行き先の家も、住所だけではわからなかったようで、 その家に電話をかけて、場所を聞いて、送り届けてくれました。 今ふと思ったんですが、誰も家にいなかったら、私はどうしてたんでしょうね?
まあ、そんなこんなで長い旅路は終り、その日は、ミルクティー(日本でお茶 を出すのと同じような感覚です)を頂いた後、シャワーを浴びて寝てしまいま した。まだ、7時頃だったと思いますが、外がかなり明るかったのが印象的で した。もっとも、この先どうなるんだろう、という不安も心の片隅にあったよ うな気がします。
なんか、思い出すだけでも疲れて来たので、以下、次回に続く、とさせて頂き ます。
次に続く。