こちら編集室「悪徳商法」(97・10・13)

 日曜日(12日)夕方のNHKテレビドキュメント「悪徳業者が農家を狙う・多発するコメ売買トラブル」を見た。食管法の改正で、米の売買が自由化され、だれもが農家からコメを直接、買うことが出来るようになった。そこに目を付けた悪徳業者の「取り込み詐欺」である。

 「お宅のお米は本当においしい。これから当社の目玉商品として取り扱いたい」と目を付けた農家を電話を武器に徹底的に褒め挙げ、まず最初は数十万円程度の取引を契約。支払い期日を最初だけはキチンと守って相手を信用させ、翌月には100万単位の米を注文、農家から現物を仕入れたまま後はなしのつぶてとなるのである。被害を受けた農家は契約書に書かれた業者の住所を当てに東京のビルを探すのだが、見つけた事務所はもぬけの殻となっているのである。

 NHKの取材力はさすがだなと思わせたのは、その悪徳業者を画面に登場させたことである。もちろん、顔は隠し、音声も変えているのであるが、こちらを唖然とさせたのは、その業者の言い分である。「(だまされた)農家の人は授業料だと思ってあきらめるよりほかはないでしょう」のひと言である。

 良心のかけらさえも見せず、いわば「だまされた方が悪い」と開き直っているのである。悪人とはこのようなものであろうか。だまされた側の農家の人は「この世にそんなに悪い人間はいないと信じていた」と嘆く。実際、私自身も人を疑うことはまず滅多にない。幸いにも、今日までだまされるというか、詐欺の被害にあったこともない。いや、正直に言えば、だまされかかったが水際でうまく逃げることができたというべきか。

 数年前のことである。会社に見知らぬ女性から電話がかかってきた。早口で一方的に話すその内容は某大手電機メーカーの名を使い、さもその関連会社のように思い込ませ、「パソコンに興味はないでしょうか。いまでしたら、だれでも分かるような使用説明書とセットで大変、お得な値段でパソコンを手に入れることができます。しかも、あなただけに特別与えられたチャンスです」と一方的にまくし立て、いつの間にかその気にさせたのである。

 感情を押し殺した、ロボットのような声。話を聞いているうちに、次第に「確かにあったら便利だろうし、パソコンを自由自在に使いこなせるようになったらすごいだろうな」と思い込んだが、どうしてもふに落ちない一点があった。このため、「どうして私の名前と電話番号を知ることができたのか」と伺いを立てたら、相手は慌てふためいたのか初めて自分の肉声を聞かせ、「あっ。それは、えー。それはですね」。つまり、相手の女性は台本に書かれていないことを喋らなければならず、言葉が出てこないのである。

 ここでようやく「おかしい」と気付いて、断ったわけだが、関連会社として名前を使われた某大手電気メーカーの広報担当に電話で確認を取った結果、やはりそのメーカーでは「そのような会社を通じてパソコン販売はしておりません」とのことだった。ウッカリ話しに乗れば、30数万円を棒に振ったことになっていたのである。

 こうした悪徳業者の電話での誘い、あるいは催眠商法は後を絶たないのだが、悲しいのは相手の無知を利用して、あるいはお年寄りの寂しさ、気弱さに取り込んでまで、カネもうけに走る人間が後を絶たないことである。身の回りでも良く聞く「悪徳商法」の被害者の話しはやり切れない。

 人をだまし、悲しく、悔しい思いをさせて裏で喜ぶ人間の心とはなんと残酷なものか。「(だまし取られたお金は)授業料と思ってもらいたい」。何をか言わんやだが、悪い奴とはこうも冷酷で無情なものであろうか。

 幸いにして大曲で先月12日に発生した強盗事件は、容疑者も逮捕され、犯行も自供。9日には地検大曲支部から、地裁大曲支部へと起訴され、全面解決へと向かった。南外村の村会議員ということで単なる強盗犯としてだけでなく、村の名士の犯罪としてその名は一躍全国に広がってしまった。容疑者の自宅からは母親も妻も姿を消し、後に残ったのは飼い犬一匹だったという。気の毒に思った警察官が犬にエサを与え、散歩にも連れていったという話を聞いたが、強盗を犯した結果の報酬は余りにも悲惨で、悲しい。

 同時に思う。神々は人をだまして陰で喜ぶ「悪徳業者」に何らかの天罰を与えてはくれないものだろうか。秋田の純朴な農家の人たちに「人は疑ってかかれ」との思い込みが育たないためにも。

 10月13日朝は、取材日程もなにもなく、どうしようどうしようとウロウロしているうちに半日が過ぎ去ってしまった。アメリカの岩間さんからは「アメリカ暮らし(16)高校教育」が届いた。そして先日はシンガポールの柳千賀子さんから「シンガポール体験記」が届き、イギリスの袴田勝浩さんからも文化欄への寄稿者として新登場願った。

 県南日々はこうした方々の支援によって、世界の情報までを受けることができるようになった。サボってもいられないと「こちら編集室」に向かった。