岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(17)大学受験」(97・10・20)

 北カリフォルニアは週始めは夏の再来。後半は秋の気配と、よく分からぬ天気と なっています。今日は快晴ですが、日にあたると暑く、日陰に居ると寒いと言う 陽気です。とは言え、多くの人はまだ半袖で過ごしている訳ですから、秋田辺り の季節感とは随分違いがあるかと思います。 日本でも受験生は追い込み時期と思いますし、アメリカでも来月ぐらいから、願 書を提出する時期になりますので、今日はこちらの大学受験を取り上げてみたい と思います。

 まず日本とアメリカの大学受験の根本的な違いは、アメリカの大学の場合、公立 私立に関らず、芸術関連の学部を除いて大学独自の入学試験と言うものがありま せん。これは超名門と呼ばれる大学でも同様です。 ではどうするか?なんですが、 まず高校の最高学年(3年生の後半か4年生が始まって間もなく)になる前後 に、生徒は民間会社が実施するSATと言う試験を受ける必要があります。この SAT試験は年間に5ー6回、週末に国一斉に実施され、本人が希望すれば何回 でも受けることが出来ます。今は確か日本でも年何回か受けることが出来ます。

 試験内容はいわゆる語学関連と数学関連の2科目、両方とも800点、合計で1 600点満点となる試験でマークシート方式です。私も実際に問題を解いたこと がありますが、問題そのものは学力試験と言うより、理科系、文化系両分野の思 考力を測定するような問題のような印象でした。ですから早い話、学年の早い時 期受けても遅い時期に受けても成績はあまり変わらないように感じます。試験の 成績は3ー4週間して、本人に郵送されてきますから生徒も自分が何点をとった か良く知っています。

 この試験の難易度についてコメントすると米国全体で数学は800点をとる生徒 はある程度いるようです。ただ、語学関係では800点をとる生徒は本当に希 で、合計1600点満点をとった生徒が出た場合、地元では大きな新聞の記事と なります。日本から駐在員子女として長く現地の学校に通った生徒で、英語の成 績は悪くないと言う生徒でも、このSATの語学試験の結果が惨澹たる結果と言 うことで、本人も一気に自信を無くして方向を変え日本の大学の帰国子女枠に応 募すると言う例を良く聞きました。

 もう一つ重要なことは高校の普段の成績結果です。各大学は入学の資格として高 校で取得する最低数の科目を規定しています。逆に言うと高校の科目は選択方式 ですから選択の仕方によっては、高校は正規に卒業出来ても大学受験資格が無い と言うケースもおきます。また、どの大学を目指すかで選択する科目も変わって きます。この大学側が指定する科目に関する成績の平均値をGPが非常に重要で す。成績は5段階方式でABCDFとなる訳ですが、Fは不可ですから点数にな りません。最高がAで4点、Bが3点、Cが2点、Dが1点となり、過去の成績 が科目に関らず全てAと言う生徒であれば(俗に言うストレートA)GPA= 4.0となります。

 ただし先週書きましたように、出来る生徒やチャレンジした い生徒は難易度の高いオーナークラスとかAPクラスを選択しますから、普通の コースのBとオーナークラスのBが同じ点数では不平等と言うことで、同じBで もオーナの場合は大学毎の算式でGPAがプラスになるように加味されていま す。

 さて各大学を志望する生徒は願書(クラブ活動やボランテイア等も自己PRのポ イントになる)と共に、このSATの成績とGPAの成績に最近はエッセーと称 する小作文を求める大学も多く、科目担任やカウンセラーの推薦状等も添付して 大学に送付します。丁度、毎年11月から1月がその時期となります。

 大学側は、これらの内容を審査して合否を判定し、本人に通知すると言うのがこ ちらのシステムです。 合格通知も願書出願順に合否を判定して順次通知していく大学と決まった日に一 斉に通知する等様々ですが、州立大学の場合、その州内から応募する生徒枠と州 外の生徒枠を分けて合否を決めたり、州外の生徒に対して合格成績ラインを高く する等の対応をしているのが普通です。 ついでですが、授業料関しては公立は各州の懐具合と教育行政で全く授業料が違 いますし、他の州から来た生徒の授業は高く設定してあり、税金を払っている州 民の為の大学と言うことを強く打ち出しています。

 まだ同一州内の州立大学でも研究型大学(大学院教育に力を入れている大学)と 実務型大学では授業料も異なります。 最後に高校を卒業しても取得単位の関係で大学を受験出来ない生徒はどうする か?と言いますと、本人さえ希望すれば各学校区にあるコミュニテイーカレッジ (2年制)に通って、不足単位を修得するすれば、その時点で大学受験資格が整 います。また、そのコミュニテイーカレッジで修得した一般教養科目は各大学の 正規単位として認められ、成績次第では本人の希望する大学に編入することが可 能です。

 そんなことからアメリカの大学は受験浪人等と言うものを産み出さず、色々な形 で生徒を受け入れる体制が出来ています。また逆に在学中の成績の悪い生徒を追 い出すシステムも良く出来ています。俗に言う卒業は難しいと言う理由はそこに あります。

 それから医学、歯学、法学等プロフェショナルと呼ばれる分野の学部には存在し ません。大学4年を卒業して、始めてこれらの分野への出願資格が得られます。 ですから医学を目指す学生は4年間はまず他の学部で勉強して卒業後、大学院と して医学を目指すことになります。

では