岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(18)就職」(97・11・3)

 今回の写真は良いですね。日本の秋と言う感じです。逆に日本では何でもない風 景なのかも知れませんが、海外で暮らしている中で触れる秋の風景とは何か違い を感じます。 私の暮らすシリコンバレーも落葉はあるのですが、気温が下がらないからでしょ うか? ただ枯れて、汚い色の葉が落ちるだけで何の風情もありません。最も1 1月に入っても半袖で過ごせる生活が出来る土地で贅沢は言えないですね。

 今日は就職を取り上げてみました。

 最近の日本の不況下で高校や大学が卒業予定者に対し、どの程度まで学生に就職 先を斡旋してくれるのか?私には定かでありませんが、アメリカの場合、学校は 就職斡旋そのものにほとんど力を入れません。 むろん求人があれば、その旨の掲示をおこなったり、企業側が採用の為のPR活 動を学内で行う場合は、会議室を貸す等の便宜をはかりますが、元々、学生の就 職先を見つけることは学校の責任で無く本人の問題です。一方の企業側の立場は 事務系技術系に関らず、学生のポテンシャルだけを求めているので無く、直に仕 事が出来る人を採用したがる訳です。学生で成績は良かったのですが、仕事の経 験(バイト程度の職歴では相手にされない)はありません。専門の仕事も出来ま せん。では就職出来ません。

 日本企業は、とにかく学生を採用、社内で先輩上司がそれなりの指導や教育し て、仕事が出来るようにする。従って将来は出来そうな人を求める訳ですが、アメ リカ企業の場合、エントリーレベルの職種を除いて、仕事を教えることは先輩や 上司の仕事では無いことです。つまり、日本の定期採用と言うのは予定の人員を 採用して、後に適正を見てと言いながら必要な部門に割り振る訳ですが、この考 え方がアメリカ企業では考えられぬ話です。まして日本流の定期採用と言う考え 方から疑問に感じるでしょう。

 求職者には誰でも出来る極めて低賃金の職種を除いて、具体的な職務能力が採用 時から要求されます。 従って何々学部を卒業したと言うだけでは履歴書を送っても書類審査の段階で不 合格です。ましてや、同一時期入社、同一給与なんて原則は皆無、同じ学歴で も、出来る職務とそのレベルによって始めから給与もポストも違います。

 では学生はどう対応するのか?と言うと学生時代に職務経験を積み実績を作る訳 です。人によっては夏休み、授業の合間等、様々です。これはバイトと違いイン ターンシップと呼んで3ケ月程度実績を積むと学校側も単位として認めるケース が多く、官庁も一般企業も学生を見習いとして受け入れてくれます。貰えるお金 はわずかですが、この期間に仕事を覚え、自分の能力を会社側に売り込む訳で す。 また創業者意欲が高く且、能力があれば学生時代から自分で会社を作ってしま い、卒業後もその事業を継続すると言う例は沢山ありますし、理工科系の学生で は卒業研究のテーマをそのまま製品事業化したり、このインターンシップ中に取 得した特許を武器に事業を起こし成功したと言うのがシリコンバレーの事業経営 者の原点です。

 それでは、とにかく学校は出たけど何のキャリアも無く、エントリーレベルの仕 事を見つけた場合は? まず社内で自分が他に出来そうな上位の職種を見つけることです。社内に必要な ポストがあれば会社は社外での採用活動をするのと同時に普通は社内でも公募し ます。当然、社内で既に実績のある人間は第一候補となります。また学歴が不足 する場合は夜間の学校に通い、必要な単位を取得したり、専門学校で実務能力を 身につけ、それを武器に新たな就職先やポストを求める訳です。私自身がアメリ カの良い点だと思うのは私立公立に関らず、会社で働く人間の為に夜間に高校、 短大、大学、大学院共に生徒を受け入れることです。これには何年生と言う区別 はありませんし、必要な単位が揃えば正規に卒業が認められ学位も受けられる点 です。学校側も昼夜の学生を区別せず卒業資格も同一です。また企業側も全く同 じ様に受け入れますし、中規模以上の会社であれば社員が仕事が終わった後に学 校に通う場合、授業料や教科書代の一部を負担すると言うのは福利厚生プログラ ムの一つになっています。

 日本ではアメリカ人は短年で仕事を辞めると言う評価があり、悪いことのように 思われますが、逆に言うとその人間は世間で認められる能力があるから何処でも 相応の仕事が就くことが出来る訳であって、その自信の無い人は出世出来なくて も一つの会社に残るか、仕事を変わっても同じ様な職種にしか就いていません。 就職しても常に競争原理の働く社会ですから、職場で先輩とか後輩等の意識は無 く、そこで成果を認められる人間が年齢に関らず上のポストに就くと言うのが自 然であり、それが企業の活力を産み出していると思います。