岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(19)転職・離職」(97・11・28)
世界最大のコンピューター関連ショーと呼ばれるコムデックス参加の準備と会場 作業、展示、説明、解体撤去と、この1ケ月はあっと言う間に過ぎてしまいまし た。ラスベガスでのこのイベントは先週の金曜日に終わり、土曜日にサンノゼに 戻ってきて、そのまま友人の結婚式に参加。翌日は風邪で体調を崩して1日半寝 込み、漸くリカバリーしたところです。今日からは感謝祭の祝日でアメリカでは 珍しく4連休となりました。事実上、この休みがクリスマスセールのスタートと なります。 しばらく日本のニュースを聞いていなかった間に日本の金融不安がまた表面化し たようですね。結局、企業問題を超えてバブル以来の不良債権問題に政治、経 済、法的に徹底的な手を打たずにお茶を濁している日本政府の問題のような気が しますね。
前回の就職の話とは逆に今日は離職の話をさせてください。 離職には二つの理由があります。会社側の都合で解雇されるケースと本人の都合 で退職するケースです。 今回は特に解雇されるケースを取り上げてみます。
現在の様にアメリカの景気が好調な時期にはレイオフと呼ばれる一時解雇(実際 は一時ではないんですが)はほとんどありませんが、アメリカ企業で終身雇用な る思想を取り入れている企業は少なく、特にハイテック企業の多いシリコンバレ ーでは企業そのものに労働組合も存在しませんから、企業の業績の見通しによ っては人件費圧縮の為にレイオフは経営の手法として実施されます。レイオフを 実施することが企業のマイナスイメージにつながると言う危惧より経営の健全化 を実践すると言うことで株主から評価されるケースも多く、株価も上昇するケー スも珍しくありません。
さてこのレイオフですが、大抵、金曜日の朝が、その実施日となります。一般的 にアメリカ人の場合、金曜日の朝一番に上司から、自分の部屋に来てくれと言う 電話を受けるのを嫌いますが、こればかりは本人には選択権がありません。 まず、上司の部屋に呼ばれた本人には簡単にレイオフ決定に至る経緯の説明があ り、お決りのように、「残念ながら君に退職してもらわざるを得ない」と言うこと で、赤色の解雇通知(通称ピンクスリップと呼びますが)を渡されます。
日本で あればこんな仕事は人事部門の仕事なのかもしれませんが、アメリカの場合は基 本的に上司の責任作業となっています。私も何回か、この場面に立ち会ったこと がありますが、そりゃ良い仕事ではありません。楽天的なアメリカ人でもチキシ ョーと言って出ていく人、ガックリ肩を落としてしまう人、特に女性の場合は泣 き出してしまう人もいて、本当に嫌な役なんですが、これが管理職の仕事でもあ る訳です。私の知り合いでも部下のレイオフ通知作業を終わったら、今度は自分 が上司から呼ばれてレイオフを通知されたなんてケースもありました。
このピンクスリップを受け取った本人が次に人事部門に出向くと既に給与関連の 精算は完了しており、そこで今日までの給与の精算と次の2週間分の給与の前払 いを受けとります。会社関係の証明書とか鍵とかを返却し人事からは保険に関す る説明や書類が手渡され、淡々と事務的な作業が終わります。さて、その後は自 分の机にもどり、周りが同情する中で、ダンボール箱に私物を詰めて、大体、午 後3時ぐらい迄には退社してしまうと言うのが、その日の一日です。
通常、解雇の通知は2週間前に出す義務がある訳ですが、会社としては解雇が決 まった人が会社の中に残ることを嫌いますから、次の2週間分の給料を前払い、 出社しなくても良いから...。と言うのが習慣になっています。 比較的、優良な会社の場合はこの2週間の前払い給与以外に何等かの一時金を加 えることもありますが、退職金制度の無いアメリカ企業の場合はその金を期待す るのはほとんど無理なようです。
同じサラリーマンでも日本とは違い、いつもこのようなことを覚悟した上で仕事 をする必要があり、自ずからまた家族の為に何とかと言うバイタリテイーはさす がだと思いますし、それだけに学歴プラス仕事のキャリアを付けると言うことに 熱をあげる事情も良く分かります。
ではまた