秋田市在住の高杉静子さんからの報告

グリーンツーリズム推進シンポジウム

都会の人に田舎体験を推奨しよう(98・3・15)

 3月14日(土)13:00から17:00まで、秋田県児童会館で秋田県主催、秋田クラインガルテン研究会共催による「グリーン・ツーリズム推進シンポジウム/農業・農村が持つ教育的機能の活用について」が行われた。

 グリーン・ツーリズムというのは、30年ほど前にイギリスやフランスで、経営に不安を持つ農家の活性化対策として、あるいは農地を手放さずに出来る農家の主婦のサイドワークとして始まった。農業とは無縁な都会の人々に「田舎体験」をしてもらい、土や動物にふれ自然の中でのんびりとした時間を過ごして貰おうという試みの滞在型余暇活動だ。

 日本では、平成4年農林水産省構造改善局にグリーン・ツーリズム研究会が設置され、その後各自治体でそれを受けるという形で検討が進められた。秋田県では平成7年「グリーン・ツーリズム検討委員会」が設けられ、平成8年はそれを拡大した形で「グリーンツーリズム研究会」が設置され、農政課が中心となりその取り組みが続けられている。

 昨日のシンポジウムはその、副題の通りグリーンツーリズムの教育的意義を探るものだった。

 まず、はじめの基調講演は岐阜大学の講師、三宅康成氏(33)による「市民農園の現状と課題」と題するもので、関西の事例を中心として、都市近郊にある市民農園といわゆる田舎にある市民農園のちがい、農家が自主的に行う市民農園と、自治体が作るそれとの違いなどを、スライドを交えながら紹介した。

 また、フランス在住のジャーナリストで「グリーン・ツーリズム」(家の光協会)などの著書もある大島順子氏の「フランスの教育ファームの取り組みについて」と題する講演は豊富なフランスの事例を紹介する大変興味深いものであった。都市部には人工的に作られた教育のための農場が、郊外には農家の手になる農業体験の出来る教育的意図を持って整備された農場がたくさんあるという。これらの教育ファームでは近くの幼・小・中学校と提携し、子ども一人1日700円から2000円ほどで子どもを受け入れているという。

 その後おこなわれたシンポジウムは「農業・農村の持つ教育的機能の活用について」と題するもので、コーディネーターの秋田県立農業短期大学教授で農村地域の過疎化、農家民宿の国際比較などを研究している山崎光博氏(51)により進められた。パネリストには西目町にある(農業法人)秋田ニューバイオファームのハーブガーデン主任の田口則子氏、NHK青春メッセージで農家民宿への熱い思いを語り審査特別賞に輝いた雲雀靖子さん、長野県伊那市立伊那小学校で動物の飼育や農業体験を通して「内から育つ」総合教育を目ざしている山岸政明教頭(52)の各氏であった。

 山岸政明氏は、伊那小学校での実践のビデオを紹介しながら、動物を飼育していくことで育つ子どもの感性や、農作業を通して深まる地域とのつながりを説いた。牛の体重を量るために、たくさんの家庭用ヘルスメーターを敷き詰めその目盛りを足すという子どもの発想に、会場からは感嘆の声があがっていた。自然の中で自ら学ぶ自主的な子どもを育てる教育実践の成果を紹介した。  

 雲雀靖子さんは、両親の農作業を幼い頃からみて育ち、農業というのはいいものだという印象を持ち続けていたという。「雲雀さんとこのお米、なんとうめえこと」「あえぇ、その苗いいすなぁ、わけてもらえねべか」。集まる人の笑顔に囲まれて育った彼女は、2年間の徳島のトマト農家での体験、1年間のスイスの農家での体験を基に、自分でも農業の楽しさを体験して貰いたいと思うようになったと話した。

 また、田口則子氏によれば、秋田ニューバイオファームは水耕栽培の部門、きりたんぽやリンゴジュース、アイスクリームなどの加工部門、そして平成7年にオープンしたハーブワールドアキタの3つの柱からなるが、最近は近くの高校生に、つみ取り、もぎ取り、農作業、ガラスふきなどの作業体験をして貰っているということだった。他のパネリストの話を聞き、今後秋田バイオファームでも教育ファーム的な展開が可能なのではと語っていた。

 会場からは「どこの県でも一斉にグリーン・ツーリズムというのは変ではないか」「旅行代理店が飛びつかないのは採算的に成り立たないからではないか」などの意見が出された。

 それに対しコーディネーターからは、「確かにどこの県でも同じようなあり方ではおかしい。秋田県独自のものでなければ生き残れない。また、遠くの客でなくても、秋田市にもそのような需要はあると思う」とのアドバイスがあった。また、大島順子氏は「確かに大手資本がレジャーランドをつくってその収入が東京へ持って行かれてしまうような旅行と違って、グリーン・ツーリズムは農家の収入増につがるものだ」という点を強調した。

 秋田でもわらび座(田沢湖町)や泰山堂(西木村)など、個人や団体でグリーン・ツーリズムの実践をしている所はあるが、今回のシンポジウムを聞き、グリーンツーリズムというのは秋田のようなホスピタリティ(もてなしの心)のある土地にこそ、きめ細かい対応が出来るのではないかと考えた。会場からは「グリーン・ツーリズムの《イズム》をもっと検討しなければ」という意見も出たが、私は雲雀さんのような「農家民宿をやりたい」という農家の掘り起こしをどのようにするか、そしてその人たちへのバックアップを行政がどのように進めていくかが大切だと考えた。