土門啓介さんの「北京レポート(1)」(98・5・28)

 秋田も今年はいつになく春の訪れが早かったようで、角館の桜も連休を待たずに散ってしまい、すっかり初夏の装いだと思われますが、県南日々の愛読者の皆様にはいかがお過ごしでしょうか。4月6日に北京へ赴任し、7日から勤務を開始しました。

 個人的な紹介をさせていただきますと、私は県東京事務所に籍を置く秋田県庁の職員であり、昨年4月から出向で「財団法人自治体国際化協会」という地方自治体の国際化を推進する共同組織に勤務しております。この協会は海外7ヶ所に事務所をもっており、地方自治体が国際交流を進めるうえでの支援活動を中心に、海外地方自治制度の研究等を行っている団体です。

 北京事務所は昨年12月に正式に開設した新しい事務所です。スタッフも私をはじめ、島根、鳥取、静岡、香川などからの自治体出向者がメインです。 私は11年前に、交換留学生として北京経済学院に約1年間留学の経験をしています。そのせいか、こちらに来ての生活もすんなりと溶け込んで生活しております。何よりも11年前の北京を知っているということは他の同僚と異なり、比較ができるという点で自分にとって大きな財産ですが、これから約2年間の北京事務所生活を通じて、折々に北京や中国の様子を県南日々の紙面をお借りしてお伝えしたいと思います。

 北京ファーストフード事情= これまでの仕事柄、よく来ていたといってもいい北京ですが、11年ぶりに腰を落ち着けて生活をしてみると、その変化の激しさに圧倒される思いです。ビルの乱立はもとより、交通量の増大、生活水準の向上には目を見張ります。外資系ファーストフードの店だけでも、マクドナルド、ロッテリア、サブウェイ、31アイスクリーム、ピザハット、ダンキンドーナッツなどが進出し、市内の目抜き通りに出店しています。このような店はいつも混雑しており、中国人も当たり前 のようにそれらを買って食べています。

 例としてマクドナルドのビッグマックは9.9元ですから日本円で約170円ですが、所得水準が向上したといっても平均月収1000元といわれる中国人から考えればこれは高い食べ物です。それをビックマックセットで食べているのを見れば、いったいどういう所得構造になっているのであろうかと思うのは当たり前でしょう。マックに絞って話を進めますと、味も日本で食べるそれと変わりなく、ほとんどすべてのメニューがあります。もちろんメニューは中国語ですが。

 また一番驚くのは、従業員の接客態度です。何といっても中国は鉄碗飯(鉄の飯茶碗=落としても割れない=倒産がない)ということで昔は有名であり(今はそうではありません)、国営商店が巾をきかせていました。つまり公務員である国営商店職員は接客態度も最低で、売ってやらんかなという態度は当たり前、平気で物や釣り銭は投げる。「いらっしゃいませ」や「ありがとう」の言葉は期待するだけ無駄だったのです。

 それがどうでしょう。マクドナルドは違うのです。ドナルド人形(日本にはないですね)に出迎えられて店内へ入ると 、そこは清掃が行き届いており、従業員はあのマニュアルどおりに「マクドナルドへようこそ!」の言葉で出迎え、「ご注文は?」、「お持ち帰りですか?」、「100元札入ります」や「少々お待ちください」などなど、無いのは「ポテトもいかがですか?」という言葉くらいで、それはそれは世界標準をきちんと踏襲しているのです。それでもマック従業員の彼女をもつ友人に聞きますと「開業時よりも厳しくない。」とのことでした。

 この接客をみて私が思ったことは「中国人もやればできるじゃないか!」ということでした。 このように外資系ファーストフードは商売繁盛ですが、中国系ファーストフードも負けてはいません。こちらは当然、中華料理をメインとしていますが、大きく2つに分かれると思います。

 ひとつは伝統的な小吃(シャオチー)と呼ばれるものです 。これは朝の通勤時間帯をメインに路地で開店し、お昼までにはその多くが店じまいをしてしまうというものです。中国人は朝食を外で簡単に済ますというのが基本的な生活ですから、主な朝食はマントウ(小麦粉にイーストをいれて蒸しただけのパン)や油条(揚げパン)、粥(かゆ)、豆乳などを屋台でとってそれぞれの職場へ向かったり、子供を幼稚園に送り届けたりしながらの通勤になる訳です。

 この屋台は非常に熱気あふれる感じがしていいものですが、北京に来てからは未だに挑戦していません。また夕方には、日本でいうところのクレープに似たお菓子を売っていたり、少数民族であるウイグル族が、同じように路上で羊肉のシシカバブー(焼き鳥ですね)を売っていたり、と様々なものを食べることができます。

 もう一つは外資系ファーストフードの手法を踏襲した中華料理ファーストフード店とでもいいましょうか、トレイをもってカウンターで食べたいものを選んでいき、最後にレジで精算するという店です。これは一人暮らしの私にも非常に重宝な店なのです。一般的な飯屋(あえてレストランとはいいません)の料理は1品の量が多く、基本的には2人以上で入るのが妥当です。ですからこういうファーストフード店は、量を半分にして2品から3品選べますし、価格も若干高い程度(ご飯、ス ープ、料理2品で約25元)で十分な夕食になります。またマクドナルドとは異なり、やはり食事という気分を味わうことができるのです。

 北京に来ることがあれば、ホテルや有名レストランでの食事も結構ですが、機会があればこのようなファーストフード店を覗いて挑戦するというのもいい記念になると思います。