こちら編集室「ヒット数10万」(98・6・29)
 
   なぜかこのところ落ち着いて過ごせる時間がない。パソコンの故障もあったせいか、見ていてもさっぱり分かりもしないのに修理に来てくれたサービスの方とともに市役所記者室で時間を過ごす羽目となってしまった先週である。トラブルが発生するとパソコン音痴の自分はなす術もなく、ただ回復するのを祈るしかない。
 
  そして「やはり自分の世界には向かないんだ」というどん底の敗北感に陥りながらも、アクセス数を確認する。24日。9万9000台を記録。この調子なら27、8日当たりが10万のヒット数となるかと予測していたが思いの外早い、26日朝8時55分にパソコンのスイッチを入れたら「10万216」の数字となっていた。この新聞を立ち上げたのが96年12月1日。あれから1年と7カ月で10万というヒット数を記録したことになる。
 
  パソコンもインターネットもまるっきり分からないのに自由に記事を書ける新聞を持ちたいと始めたインターネット新聞だった。インターネットなら紙も印刷工場も要らない。わずかな経費で新聞を発行できると思ったからだ。無謀な計画だったが、田沢湖町のたざわこ芸術村デジタルアートファクトリーの全面的な協力があった。チーフディレクターの長瀬和男さん、チーフエンジニアの海賀孝明さんの技術的な支援があったおかげだ。
 
  あの当時を振り返ってみようと、県南日々がヒット数1万を記録した時に長瀬さんらが開いてくれた祝賀会の思い出を書いた「こちら編集室」を読み直した。1万を記録したのは昨年3月21日だった。そして4月4日夜、私たち夫婦は西木村の民宿「泰山堂」で泊まり込みの祝賀会に招かれた。その喜びを4月6日付で書いている。懐かしい思い出の記事である。
 
  その記事では「12月1日。当然ながらアクセス数はゼロ。それでも自分で書いた記事が紙面を飾り、そしていずれは多くの人が目を通してくれるかもしれないと淡い期待を持っていた。それが数日後には50数件となり、10日後には100件近くのアクセス数が刻まれ、ドキドキしながらノートに数字の伸びを記録した毎日の喜びは未だに忘れられない。まるで玩具を手にした子供のようにはしゃいだ毎日だった」と記している。
 
  ヒット数が1万を超えるのに当時は4カ月近くかかった。いま、県南日々は1万のヒット数を超えるのに40日ほどである。それだけ多くの読者が見ていてくれるんだと思うと胸が熱くなる。10万という数字がこのインターネットの世界では重いのか軽いのかはよく分からない。毎日、数万単位で入ってくる人気ページからすれば「たかが10万」かもしれないが、自分にとっては「されど10万である」。
 
  7月3日夜、その10万のヒット数を祝うパーティーを再び長瀬さんらデジタルアートファクトリーの方々が企画して下さっている。そしてヒット数10万を記念した「プレゼント企画」も計画してくれているとか。この新聞を立ち上げて以来、いつも感じてきたのは人の輪(和)の温かさである。読者のお便りもそうだ。挫折しそうになったときに決まって温かい励ましのメールが来た。あるいは直接、訪ねてきてくれる読者もいた。遠くはアラスカから、イギリスからと。そして静岡県焼津市や愛知県からも読者が訪ねてきてくれた。普通の新聞では決してあり得ない読者とのつながりがこの新聞では実現できている。
 
  その上、嬉しいことにまた新しいリポーターがアメリカから参加してくれた。ロサンジェルス在住の大曲市出身者の敦子・リーさんである。敦子さんからはさらに県南日々が26日の紙面で報道した大曲高校へ短期留学生として訪れているアメリカの高校生の記事を読んで、同校で教師をしている弟さんに電話をし、「アメリカから高校生が行ってるんだってね。お姉ちゃん情報が早いでしょう」と自慢できたと喜びのメールがあった。その弟さんが、市役所に用事があったついでにと記者室に顔をだしてくれた。「私はインターネットをやってないもんだから」と頭をかきながらも、インターネットを通じた情報のやりとりの速さに驚いていた。そして一度もお会いしたことのないお姉さんのことを「大変、お世話になっているようで」とお礼まで述べられた。お礼を述べたいのはこちらだった。
 
  新聞はこのところ参院選の報道で一色だ。この県南日々も各候補者を追うべきかと考えた。これまでも選挙のたびに候補者の車を追ってその戦いの様子を報道してきた。しかし、今回の参院選の立候補者は6人である。一人で6人の候補者を果たして追いきれるのか。来月12日の投票日まで一人でも取りこぼしがあれば、選挙報道の公平さを欠くことになる。無理をするなともう一人の自分がささやく。いや、走るべきだともう一人の自分が叱咤する。しかし、選挙カーを追い始めるとほぼ1日がつぶれてしまう。普段の取材活動もある。一人で発行する新聞の限界がまた、いらだちを募らせる。
 
  ヒット数10万を祝って、多くの読者が書き込みをして下さっている。海賀さんが設けてくれた「祝10万ヒット記念寄せ書き」。本当に毎日の励みになっている。ありがとう。県南日々は多くの読者の励ましで今日も歩いています。そして書くことを楽しみとしています。