東西南北に丁度、長方形のような形で広がっている北京はその面積も広大ですから、ちょっとした移動でも徒歩ということはあまり現実的ではありません。実際、郊外に山はありますが、市内は起伏が少なく、かつ道路が片側2〜3車線ということになりますと、視界が広いことから5キロ先の高層ビルでさえも1キロ先にあるような錯覚を覚えます。私はこれで俗にいう「はまった!」ことがあり、炎天下くたくたになるまで歩いたことがあります。
「自転車」
中国と聞くと皆さん、思い浮かべるのが自転車での通勤風景だと思います。あの人民服を着て延々と続く自転車の流れ…。ところが経済の発展に連れてその様子も様変わりしてきました。というよりも未だにテレビの中継では、この自転車通勤を冒頭にもってくるアングルが多いことから皆さんのイメージも若干固定化されているんだと思います。
確かに自転車の数は多いですし、庶民の気軽な足という点では現在の日本の比ではありません。ただし人民服をきている人は皆無ですし、日本人と変わらない服装がだんだん増えてきています。また自転車のスタイルも、昔の牛乳配達の自転車の様な無骨な三角フレームはだんだん少なくなり、現在はマウンテンバイクが流行です。
このマウンテンバイクも値段は様々、友人はディスカウントストアで300元(5400円)で購入してますし、私はデパートで700元(12000円)で購入しました。あまりの差じゃないかと思われますが、友人の自転車は走り出したら後輪がきれいな弧を描いて走らなかったという笑えない話がおまけについています。ちなみに私の自転車は変速機が日本の有名メーカーということで店員も「これは○○○の変速機だからね」などと力説しておりました。
さて、この広い北京で自転車はつらいんじゃないの?という印象を持たれると思いますが、実は北京市内には胡同(フートン)という路地が網の目のように広がっています。この胡同が古い北京の町並みを今に残す唯一の風景となりつつあります。そこを自由自在に通り抜け、目的地まで近道をするのに自転車は有効な手段なのです。大通りは交通量も多く、排気ガスやほこりで歩きにくくなっているのが現状ですし、胡同には庶民の生活が色濃く出ていることから、その生活の息吹を確かめるには自転車が最適なのです。天気のいい日などは自転車で市内を走っていると1日で20数キロをゆうに走っていることもあります。実際、農村風景を見ようと思って1日で40数キロを走ったこともありました。さすがにこの時の帰りはつらかったですが。
また、自転車専用レーンが大通りには必ずあるというのも大きなポイントでしょう。例えば片側3車線の道路というのは、実際には車用3車線、自転車等用1車線、歩道というように片側5車線ある場合がほとんどです。つまり乱暴な自動車の運転にさして気を遣わずに自転車を運転できる訳です。ただし自転車の数も多い訳ですから接触には十分注意が必要ですし、時には車が入ってくることもありますから油断は禁物です。
それから日本では防犯登録の制度がありますが、実は中国にもあるのです。自転車を購入後、領収書をもって自分が住んでいる近所の公安(警察)に赴きます。そこで氏名、住所、自転車の色等、必要事項を記入して手数料を払うと、ナンバープレートとなんと!自転車運転免許証がもらえます。ナンバープレートは各地によって様々ですが、北京は蛍光色の反射版に黒字で「京・朝陽(区)番号」が刻印されています。これを自転車につけて晴れて自転車を運転できるという訳です。もちろん盗難もあることからこのプレートをしっかり着けていることは盗難防止の意味もありますし、交通違反などして警察官に呼び止められたときにも自分の自転車であるという証明にもなります。実際、プレートを着けていなくて罰金を取られた例もあるようです。
これは中国らしい話なのですが、僕はこの防犯登録を住んでいるマンションのマネージャーにお願いしました。手数料は後で払いますということでお願いしたんですが、登録を終えたとのことでいくらですかと聞くと、「知っている人を見つけたからタダだよ」ということでした。これがいわゆる「関係(グゥワンシー)」というものです。この「関係」についても機会を改めてお話ししたいと思います。
話は戻って自転車ですが、日本では最近、駐輪禁止区域が設けられ、そこに置いておくと不運な時にはすぐに自転車を撤去されるということがありますね。北京はその点、露天駐輪場が市内の大きい店の前には必ずあります。お金を取る場所と取らない場所があるのですが、お金を取る場合は2角(3円弱)を払います。その代わりそこでは盗難の心配もする必要はありませんし、管理人がきれいに自転車を並べてくれま
す。とはいえ、そこに止めるのが嫌でわざわざ別のところに止める人がいるのは万国共通のようです。
最後に、自転車が根強い足として確固たる地位を保ちつづけている理由に、自転車修理工の多さもあげられるでしょう。実際、日本では「町の自転車屋」が少なくなりましたよね。ところが北京では大きな通りの路傍には必ず「修車」と看板を掲げた露天の自転車修理工が店を出しています。ありとあらゆる部品を揃え、空気入れから虫ゴム(これをわかる人はいい年?)の交換、パンク修理、なぜかサドルや車輪まで売っています。ですからちょっとしたトラブルなら半径数百メートルに必ず修理可能な条件が整っているというわけです。そのような訳ですからタクシーやバス、地下鉄があろうとも自転車は根強い足としてこれからも北京で生き続けると思います。