こちら編集室「美女たち」(98・8・12)

  江戸の小咄(こばなし)だという。朝、垣根越しにとなりの庭を覗(のぞ)き見していたら、寝巻姿のご新造(新妻)が出て来て、庭の草花を眺め、つと腕をのばし朝顔の花一輪を摘み取った。ああ風流だなと感心して見ていたら、やがてご新造さんは、「ちん」とその朝顔で鼻をかんだ。

 太宰だったろうか。何かの本で読んだ記憶がある。読んでいてプッと吹き出してしまった。なるほど小咄としてはよく出来ている。男性は女性に優雅さや優しさ、美しさ、色っぽさを求める。寝巻姿も色っぽいなら、たおやかな腕を伸ばして朝顔の花一輪を摘み取るその姿もまたあでやかだ。記者も想像しただけでゾクゾクしてしまう。小咄の主人公もその色っぽいしぐさにほれぼれとしていたのだろう。だが、新妻も罪な人である。摘み取った朝顔の花で鼻をかむとは。

  ねえ。長谷川雅美さん、shizukoさん、そして敦子・リーさん。そう。ここに名前をあげた3大美女は県南日々のためにわざわざ大曲市に訪ねて来てくれた嬉しい読者である。長谷川さんは静岡県焼津市の読者であり、shizukoさんは「秋田NEWS」というホームページを持って秋田のニュースを生活者の視点でとらえ、世界に向けて情報発進している人であり、県南日々の熱心な読者でもある。

  お二人とも県南日々の読者の広場を通じて交流が始まり、熱心な秋田ファンとなってしまった長谷川さんは今年に入って3度目の秋田入りである。今回はご主人とお子さんの3人で秋田に来たのだが、どうしても県南日々の自分とビールで乾杯したいとご主人、お子さんを静岡に送り出してから一人秋田に残って、shizukoさんとメールで連絡を取り合って大曲入りした。9日夜だった。お二人とも帰りの新幹線「こまち」の関係で大曲滞在はわずか3時間だったが、会話は大いに弾んだ。

  特に長谷川さんとshizukoさんとは面識もなかったのだが、お互い大曲駅の改札口で会うともう、何年も前からの親しい友人のように打ち解けてしまったのが不思議なほどだった。これがインターネットの面白さだろう。メールがもたらす心の交流だろう。

  両手に花。日曜日だったため接待できるお店は限られていたが、記者はお二人の女性を相手にビールを飲み、お酒を飲めるという最高の幸せを味わった。長谷川さんは朗らかで屈託のない明るさが魅力である。shizukoさんはその名の通り、物静かで知的なご婦人である。

  そして11日昼過ぎにはロスアンジェルスの敦子・リーさんがこの県南日々を訪ねて来た。小学3年生くらいのお嬢さんと、小学5年生くらいの男の子がいた。敦子さんは市役所で何人かの同級生とも出会い、感激していた。渡米して11年。実家への里帰りは8年振りという。敦子さんも長谷川さん、shizukoさんに負けない魅力的な女性だった。年齢はご3人とも40代である。つまり女盛りである。

  いまその3人の美女を思い浮かべながら、この方たちは小咄に出てくるようなはしたない真似は絶対やらないだろうと一人想像しながら、女性という不思議な魅力を楽しんでいる。女性の魅力はやはり笑顔が一番だと思う。記者は若いころカメラに凝ったことがある。モデル撮影会などにも出かけ、カメラを2台も肩に掛け、美女に迫った記憶がある。その時、指導に立ち会った有名なカメラマン氏曰く。「女を美しく撮る方法は何よりも会話が大事。話をすることで相手をリラックスさせ、自然な笑顔を引き出すことが大事なんだ。女性には美人だとか不美人だとかはいない。どんな女性でも魅力はあるものだ。その魅力の一番は自然な笑顔。これを引き出すことです」。これだけが記憶に残った。

  記者もだからといって特別に会話の手段を訓練したわけではない。いつも自然体で女性にも男性にも向かう。身構えての取材では相手が警戒してしまう。若いころは気負いもあって、時には詰問調で取材し、いま思い出すと赤面したくなるが、年齢を重ねるに従ってかどは取れたと思う。
 
  3人の美女との出会いからとりとめも無いことを書き出してしまった。詰まらない小咄を思い出してしまった。でも。ねえ。長谷川さん、shizukoさん、そして敦子さん。男ってかわいいもんでしょう。女性にいつも憧れを持って生きているんだから。女性にいつも母のような優しさ、強さを求めて生きているんだから。

  しかし、どうしてだろう。このごろ、近辺に接触する若い女性の表情が不安だ。結構、かわいい顔をしているのだが、能面のように無表情だ。話しかけても返って来る言葉には感情さえ感じられない。多分、特殊な方たちだろう。そう思いたい。そうそう。いつも行くガソリンスタンドの若い子は「伊藤さん。車に傷が付いているよ」とさも心配そうに自分の小指を握って車まで引っ張って行ってくれた。23歳。この子も間もなく嫁に行く。寂しいけど心から祝ってやりたいいい子である。

  最後にお断りしておくが記者は女性だけの訪問を大事にしているわけではない。8日には岩手県胆沢郡前沢町の胆南(たんなん)新報の記者・酒井隼男さん(39)の訪問を受けた。酒井さんは「インターネット新聞の将来性を語ってもらいたい」と切り出した。将来性。きっとインターネット新聞での経済活動が果たして可能かどうかだろう。県南日々はまだ本格的な経済活動は始めてないが、いずれは広告収入につながる新聞でありたいと夢は持っている。酒井さんには「インターネットの利用者は日進月歩で増えている。新聞社がホームページを設けたらといってもすぐに収入につながるという保証はないが、実績だけは積んでおくべきだろう」と答えた。

  酒井さんも「何か夢が開けたようだ」と喜んで帰っていった。その酒井さんから「県南日々に投稿したい」といかにも新聞記者らしい切り口のコラムが送られて来た。日々の新しい仲間がまた一人増えたのである。