北京交通事情パート2
前回は自転車という庶民の気軽な足についてご紹介しましたが、今回はバスについてご紹介しましょう。
バス
広大な北京市内には縦横に道路が走っています。地図を広げてみると、南北にいくつもの縦の道路、東西に長安大街を中心として何本もの道路、そして北京の旧市街、市街、郊外を分けるように市内を周回する3本の環状線が走っています。これをすべて網羅するように走っているのが、北京最大の公共交通機関であるバスです。バスには現在、私たちが想像する普通のバスと昔懐かしいトロリーバスがあります。
トロリーバスは旧市街を中心に走っていますので、ここでは写真のみの紹介にします。
さてバスですが、営業は市の交通局の下部機関である公共汽車公司が行っており、民間のバスというものはありません。ちなみに中国語で「汽車」は自動車のことを意味します。中国が建国してすぐに発足しているとのことですから、来年で50年近い歴史を迎えることになります。データで見ますと、現在、バス路線数が313路線、営業キロ数、27288キロ(北京市内ですよ!)、車両数5047台ということですから、さすがに12億の人口を抱える首都の公共交通機関です。
これだけの路線、車両数があれば快適と思いきや、実は終日、乗車率200%は固いくらいのぎゅうぎゅう詰めの運行です。確かに路線は網の目のようですから、乗り継ぎで市内の隅から隅までの移動が可能です。しかも旧市街であれば乗車運賃は0.5元(日本円で9円)、郊外でも1元から2元あれば十分ですから格安な移動手段なのです。また定期券もあります。
しかしながらあの混雑はいくら都会の通勤電車に慣れている日本人でも根をあげるくらいの混みようなのです。この数ヶ月、バスの中で日本人が乗っている姿を見たことはありませんし、ましてや通勤にバスを使っている日本人は市内でも私と同僚くらいではないかと思います。通常、外国人は会社の送迎用車両がありますし、ない場合はタクシーでの通勤がほとんどですから、同僚の中国人からは「今時日本人で、それも社会人が通勤でバスを使うなんて、なんて締まり屋なのだ」と笑われる始末です。
事実、冷房なし、夏はサウナ状態になるバスで通勤するのは正気の沙汰ではないと思われても仕方ないのですが、中国人の生活を垣間見る上で、そして日々の生活をやりくりする上でバス通勤は欠かせません。
このバス、乗るのにまず一苦労です。中国人の悪口ではありませんが、日本人のバスや電車の乗降と根本的に異なり、秩序がありません。中国人は並ぶという概念がないようで、小さな乗降口に扇型に数十人が群がります。そして押し合い圧し合いが始まるのです。私が乗るバスは、路線の関係で専門線といわれ、若干運賃が高い(それでも1元ですが)のと、始発から2駅目なので確実に座れるのですが、同じバス停から出ているバスを見ていると、絶対乗れそうにない人数がいつのまにかバスに入ってしまうのですから実に不思議です。それも出稼ぎの人間は布団を持って乗ったり、荷物を抱えて乗ってしまうのですから、バスが底無しに見えてしまいます。
乗る時がそうなのですから下りる時はもう大変です。バスの奥まで押されて入ってしまい、出口まで遠いのに下りる場所はもうすぐなどということがよくあるのですが、この場合はまず、隣の人に「降りますか?」と訊ね、降りない場合は場所を交換していくという方式を用います。これはいわばルールのようなもので、自分の降車地の一つ手前で開始します。自分の前の人が同じ場所で降りるのであれば、前についていくわけです。
ですから降りる場合は秩序があるといってもいいでしょう。しかし降りるのが先というルールがあるにせよ、中国人はとにかく先を急ぐ性格のせいか、降りるのと乗るのが一緒になって喧嘩が始まることもありますし、キセルがみつかって切符切りの乗務員からとっちめられる人もいる、そのわりには老人には席をゆずる、子供が一人っ子政策で制限されているせいもあるのでしょうが、子供に席をゆずるという微笑ましいやら複雑な世界が展開されます。
ただしバス内の治安はお世辞にもいいとは言えないことも付け加えておかなければなりません。バス内は非常にスリが多く、これには気をつけなければいけません。また北京のバスの名誉のために付け加えますが、最近はクーラー付きのバスが運行され始めています。これはバスの前や側面に大きくクーラー付きという文字が書かれていますし、窓を閉めていますのですぐわかります。ただし運賃はそれなりに高いようで私も乗ったことはありません。
それから、バス路線とほぼ平行する形で、ミニバスが走っているのも特徴です。これは15人乗りのマイクロバスなのですが、普通バス路線と同じ距離で2から3元の運賃で、座れるということと速度が速く、多少であれば降りるところに融通性があるということで非常に便利なバスです。最近、帰りは私もこのバスを利用しています。さすがに満員のサウナで帰る気にはなれません。
このように自転車と同じくらい庶民の足であるバスなのですが、最近では需要と供給のバランスが需要側に大きく傾いているような気がします。かといって慢性的な交通渋滞が発生しつつある北京で、これ以上バスの数が増えることは新たな交通渋滞を生み出す原因にもなりかねません。これは決してバスのせいではなく、今後紹介する自家用車やタクシーの急激な増加が原因ではあるのですが。
北京にお出での際は、ぜひバスを体験してはいかがでしょうか?とは今回はいえません。これで北京が嫌いになったといわれたら私の立つ瀬がありません。勇気のある方はぜひどうそ!