〈嫌韓?反日?ー金大統領来日に思う〉
○…何か韓国のことについて書きたいと思っていた矢先、折良く韓国の金大中大統領が、先週来日した。1973年に東京から拉致され、そ後投獄、死刑判決を受け、赦免はされたものの一時「亡命」を余儀なくされた。しかし、野党指導者として政界に復帰し、3度の落選の末ついに大統領まで上りつめるという「事実は小説より奇なり」を地でいくような彼の人生を論じるのが本稿の目的ではない。
さて、よく日本と韓国は「近くて遠い隣人」という形容がされているが、本当のところはどうなのだろうか。巷間ささやかれているのが、日本における「嫌韓」感情と韓国での「反日」感情の衝突である。この両方とも実際にあることは認めるにしても表にあまり出ない部分を垣間みると、日本と韓国は「実は近い国」ではないか、というのが筆者の結論である。
○…1993年と96年の2回韓国に旅行し、実際に現地の人々とふれあう機会を得た。「韓国は日本人と見るとボッタくるぞ」と誰かから「脅し」、失礼、「忠告」を受けていたが、幸いにもそんなメには出会わなかったし、むしろ見も知らぬ日本人旅行者に親切にしてくれた思い出だけが強く残っている。韓国の友人宅にやっかいになったときには韓国式家庭のもてなしに大いに感激し、独立紀念館(「記」念館ではない)では信州大学に留学している学生と知り合って一緒に回ってもらった。ソウル近郊の水原(スゥオン)という町では、日本語に堪能な婦人の尽力で宿まで探してもらった。立ち寄った先々でも、いやな顔をされるとか差別を受けるとかという経験もなかった。逆に「自由の国」を標榜するアメリカでは、アジア人ゆえと思われるいやなメに2〜3度遭っている。
そして最高なのが韓国料理。韓国料理というと「辛い」というイメージが強いが、そんな見方は正確ではない。辛いものあれば甘いものも、脂っこいものもある。日本人旅行者が味わう典型的な韓国料理は、やれカルビだ、キムチだ、チゲだということにしかならないが、一般庶民がいく食堂では日本ではほとんど知られていないメニューがずらりと並び、それがまたウマイ!少なくとも「まずい」と思ったモノに出会ったことはなかった。そして例外無くどこでもキムチ、カクテキ、ナムルといった漬物がサービスで出され、それもまた旅の大きな楽しみだ。
ただ韓国の交通事情は少々きつい。ソウルの渋滞は全く耐えがたいほどの状態だし、ドライバーのマナーもかなり問題有だ。バスの運転は荒く、急ブレーキはしょっちゅうのことだから、吊革にしっかりつかまっていなければすぐ身体を飛ばされてしまう。筆者は、バスに乗っていて2度危ないメに遭遇した。一度目はソウルで乗っていた路線バスが急ブレーキを踏んだ刹那に後続のバスに追突されるという事故を体験、2度目は雨の中高速バスでソウルに向かう途中、ワイパーが突然動かなくなりそのまま突っ走られたというものである。またタクシーは合乗りが当たり前なので、初めての日本人はやや違和感を覚えるかも知れない。
○…話を元に戻そう。「本当に近い国」という結論はどこから出てくるのか。現在ある大学で日本語を教えている韓国の友人と、よく日本人と韓国人との考え方の相違を議論してきたが、彼は「反日世論」の背景をこう分析している。
1、マスコミや一部団体が「反日」を叫ぶのは、たぶんに情緒的な側面がある。つまり日本に対する敵愾心をあおることで「韓国よ、頑張れ」という効果をもたらしている。「反日」というよりもむしろ「克日」という意味合いが強い。別な見方をすればライバルとして認めている現れである
2、マスコミが「反日」と騒ぐのは、そういう記事が出ると売れるからである。
3、「反日」を叫んでいる人でも、根っからの「反日」は少ない。周りが騒ぐから自分も「反日でなければならない」と思いこんでいる人が多い
4、日本統治時代の公式的な評価は「国辱」であるが、当時を知る人々の間では両班(ヤンパン=朝鮮における地域の有力者)の統治よりも日本人の方がよっぽど良かったというのが一般的な感情である。とにかく両班は自己の利益しか考えなかったが、日本のお役人は人々のためによく働いてくれた
5、個人的に日本人を恨んでいる人はそんなに多くない。特に若い人はかなりニュートラルな「眼」をしている
6、韓国の「反日」が表面的でしかない証拠に、カラオケ、アニメTV、漫画、ファッション、音楽といった日本文化が、建て前上禁止されているのにも関わらず大人気を博している
もちろんこういう見方に異を唱える向きも少なからずいるに違いない。しかし普通の韓国人の「本音」とも見えるこういった意見は、表立つことはあまりないし、マスコミもこんな意見を取り上げることもない。
○…逆に日本人が韓国人を見る眼は
1、口を開けばやれ「謝罪せよ」、やれ「反日」だと喧嘩腰でくるから、できれば遠ざけておきたい
2、「従軍慰安婦」問題にみられるようにすぐ「補償金」「賠償金」と金をせびってくる
3、しゃべり方がきつく、喧嘩を売ってきているみたいだと、これまたステロタイプの域を抜け出していない。
要は両者とも本音をぶつけ合っていないから紋切り型、ある型にはまった考え方から抜け出せておらず、表面的な事象で判断をとどめてしまうという点に問題があると見る。
○…今や日本と韓国を行き来する旅行者は年間100万人を越えている。在日も日常的に日本人と接触しているから、そういったものも含めると交流人員たるや膨大な数に上るのである。日韓関係に「ノドに引っかかる小骨」のように影響していた「歴史問題」は、今回の大統領声明で一区切りついたかに思われる。2002年は世界の一大イベント・サッカーW杯が日韓で開かれる。さあ、本音をぶつけ合って真の隣人に
なり、大会を成功させよう。
酒井隼男=筆者のプロフィール 1958年岩手県生まれ.39歳。大学卒業後生協職員や家業の手伝いを経て、1996年から岩手の前沢町、衣川村を発行エリアとする「胆南新報」の記者。現在はフリーライター。
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