いつも題材を探しながら歩き回る北京市内ですが、明るい話題もあれば、当然暗い話題もあります。庶民の情報源である北京晩報(北京夕刊)には悲惨な殺人事件や強盗の話題も必ず載っているのが現状です。かくゆう私も最近、2件の殺人事件現場に遭遇しました。
中国の物乞いについて
北京などの大都市を歩くと、外国人が多い所や繁華街には必ず物乞いがいます。社会主義国は基本的に社会保障等をカバーしているのでは?という疑問が浮かびますし、事実、学校の授業ではそのように教えられた記憶もあるのですが、こちらにきて新聞や話を聞いてみると、従来、医療保険、養老保険、年金等はそのほとんどを職場がケアしてきており、今回の国営企業等の倒産や赤字経営によるレイオフ(一時帰休)などにより、その制度が根本的に崩れてきていることから、国としてこれまでバラバラだった保険システムを省庁の機構改革に合わせ一本化し、中国として新たな社会保障システムの整備を進めているところなのです。
つまりレイオフ(一時帰休)になったり、倒産にあった人たちはそういった社会保障がその時点でストップし、必要な保障が受けられないということになります。また今回の大洪水のような災害等で家屋が倒壊し、文字どうり一文無しになった人たちが、都会へ流れ出て物乞いになるということもありえます。
しかしながら、奇怪なのは年端もいかない子供がそういったことをしている。また明らかに親らしい大人が子供たちをけしかけているという光景をみることなのです。多くの観光客、特に欧米系の人たちは博愛の精神が強く、わずかなお金であれ子供にあげます。そうするとどうでしょう、ぞろぞろと子供が出てきておねだりを始めるのです。不審に思って中国人の同僚に尋ねると、「偽者だから相手にしないほうがいい」と言われました。
確かに盲目?の人と老人がペアになってボロボロの格好で物乞いをしているのですが、ある時同じバスに乗りあわせ、同じ場所で降りたことがあります。彼等は私のオフィス近くのマック前で普段は営業しているのですが、その時は私の住むアパートに近い、高級ショッピングセンター前まで移動し、そこで営業をしていたわけです。一応バスに乗るお金はあるようですから、これもまた不思議な話です。
最近の新聞に、この物乞いの行動を朝の10時頃から夕方5時過ぎまで追跡したレポートが載りました。それを見ると、例えば子供の場合、その日によって自称の年齢や連れている幼児が妹や姪に変わる(これは自分の前に自分の置かれた状況を説明する立て札をかけているのでわかる)、ちゃんと昼休みを取る、バスで通勤する等々、そして極め付けはやはり物乞いを管理する元締めがいるようだということなのです。
システムとしてはその元締めの下には数名の集金係がおり、その下に物乞いの集団がいるという一種のヒエラルキー構造になっているらしいのです。物乞いが営業開始後、数時間たつと、どこからともなく男が現れ、暑い日はアイスを渡したりしながら、売り上げを受け取り、数カ所回った後にそれを別のところでもう一人の男に渡す。その男はどこへともなく自転車で去るという具合に、役割分担がしっかりした組織で動いているらしく、その子供の場合、平日の多い日で30元、土日ともなると50元の売り上げになるようです。
例えば元締めの下に10名の稼ぎ組がいたとして、その1日の売り上げは、純収入で300〜500元になります。稼ぎ組や受け渡し役に1日1グループあたり20元やったとしても150元から350元の売り上げですから、1ヶ月の収入はすごい額になるわけです。これは平均月収1000元といわれる中国人の月収をはるかに超えることになります。
こうやってみると、非常に不可思議な世界ですが、子供が学校にもいかず、こういった形で働かせているのを警察や文教関係者は何もしていないのが現状のようなのです。一度私もまとわりつかれた際に、「政府の貧困救済対策室の人間だぞ」といったらクモの子を散らすように逃げられたことがあります。人口が多く、それに連れて問題も多い訳ですから、そこまで手が廻らないのが行政の現状なのでしょうが、これが文盲の解消問題や犯罪の増加に将来にわたって大きな影響を与えていくことは間違いないと思う次第です。
私自身、1歳の子供の親として、同じような年端の子供が親に抱かれてぐったりとしているのを見れば、自分の子供の影を重ね、いくらかでも恵んでやりたいと思うのは当然なのですが、反面、そういった子供をダシにして身銭を稼ぐ親に怒りを覚えることがしばしばです。まだ1度もお金を恵んだことはありません。
日曜日に繁華街で、着飾った子供の両手を握りながら楽しそうに買い物に向かうニューリッチな親子連れと、その道端で同じくらいの子供が両手を合わせて物乞いをする姿のギャップに大きな疑問を抱きます。
中国に来た際は、そういった風景も目に留めながら、決してお金を恵んではいけません。そのお金が一層堕落の道につながっていくのだと思います。