手元に「職場定着『いまどきの若者』を理解するために」と題した小冊子がある。ふるさと秋田定住総合雇用対策推進協議会などがまとめたもので、先日のハロワーク大曲主催の「高校教諭と企業の就職活動のための情報交換会」の席上で資料として渡されたものだ。何気なく目を通したのだが、これが結構面白い。誤解されないよう先に紹介しておくが、「いまどきの若者」と批判の意味をこめてまとめたのではなく、どうしたら若者の企業定着を図れるかを狙ったものだ。
その中の「あなたの職場にもいる『いまどきの若者』」を紹介しよう。▽人の話を最後まで聞けず必ず「でも」と遮る。あげくの果てに「だって」とつぶやく。なるほど。だけど「でも」や「だって」ぐらいならむしろ可愛いじゃないかと筆者は思う。この場合、上司がどんな態度で新入社員を叱ったかにかかって来るだろう。ガミガミと頭ごなしに叱ったのでは「でも」も「だって」も怖くて口にさえしないはずだ。
▽寝坊して、直行したと報告し、デートで直帰と報告し、平気な顔をする。この文章からは意味が良く呑み込めない。市役所の20代の職員に意味を尋ねた。「寝坊して直行した」と言うのは、「寝坊したため、会社に寄らず出先に直行したという意味ではないでしょうか」と言う。そして、「デートで直帰」とは「デートのため、会社には寄らず真っ直ぐ帰ります」とのことらしい。直帰と書いて「チョッキ」と読むらしい。なるほどこれで「平気な顔」をされては上司の心も穏やかではないだろう。まあ、寝坊はともかく、デートのために仕事の報告はおざなりにされたうえ、「チョッキ」されたんではたまったもんではない。
▽分からない、間違いに気付いても質問ができない。ウーン。これも困る。分からないなら、分からないなりに質問をしてほしい。しかし、これなら上司と部下の信頼関係と言うか普段からのコミュニケーションの深まりでいずれ解決しそうだが。
▽恐いからと言って外線電話をとらない。エー。そんな弱気でどうするんだい。これじゃ、気が長い自分だって怒ってしまうよ。
▽仕事で分からないことがあったとき、「○○さ〜ん」と大声で呼んで、席まで先輩を呼びつける。うーん。愕然。なるほどこんな若者を部下として使うことになったとしたら、心から同情いたします。
▽「おはようございます」「お疲れさまでした」のあいさつができない。相手が先に言っても返事ができない。いるいる。確かに我が身近にもこんな女の子がいる。著名な大学を卒業したというが、こちらであいさつしても返事は聞かれない。あるいはあいさつをしているかもしれないが、声が低くて聞こえない。その上、まるで能面のような表情の冷たさが印象的だ。当初は腹も立ったが今では無視だ。それにしても朝夕、出会う近くの小・中学生たちは見ず知らずの自分にさえ「おはようございます」「コンニチワ」と気持ちのいいあいさつを交わしていく。先生たちの愛情こもった教育の成果だろうか。
▽最近やたらと残業していると思ったら、上司の退社後にインターネットでよからぬホームページばかり見ていた。ワハハハハッ。思わず笑ってしまった。しかし、笑ってばかりもいられまい。社交的でどちかと言うと明るい性格の子ならまだしも、普段は無口でじめじめした感じの男の子がこのような行為に走るようではちょっとあ・ぶ・な・い。いずれにしても「会社の経費を無駄遣いされては困るよ」。軽く注意する必要はあるだろう。
▽注意をすれば、それを注意と思わず「いじめられたー」と言う。これも困ったもんだ。被害妄想が強過ぎるのか、それとも自意識が強いのか。ともかく扱いにくい社員だろう。
▽30分として自分の席に着いていることができない。一度、給湯室に行けば10分は戻って来ない。なるほど毎日、顔を出す役所でもこんな光景をたまに見かけることがある。
▽周りを巻き込む私語が多い。黙っているかと思えば、コピーのボツ紙で折り紙をしていたりする。ウーン。思い出す。自分も若いころ、原稿を中々、書けず千切っては投げ、千切っては投げ、あげくの果てには紙飛行機を作って飛ばした。編集長の頭上を見事に飛んで、その口から逆に飛んできたのは「伊藤君!」の声だった。まあ慰めの折り紙作り。見てみぬ振りしようか。
▽打ち合わせ中でも携帯電話が鳴る。しかも私用電話だったりする。まあ。現代若者気質。いずれ、おいおいとマナーをしつけていくしかなさそうだ。▽雑用を極端に嫌がる。これもボツボツとしつけるしかあるまい。
▽「こうだから、こうなの」と仕事を教えたところ、「なるへそ」と言い、「ブラボー」と手を叩いた。最高傑作であり、手を叩いて笑った。こんな若者なら自分も会ってみたい。
それにしても多士済々な世である。「だって」「でも」と言い訳。そんな言葉を使える会社や職場ならまだいい。昔ならそんな言葉を使っただけで「分かった。もう明日から来なくてもいい」と即首を切るところだってあった。いわゆる「使ってやる」という態度ありありの、恩きせがましい会社である。
この情報交換会の席上である縫製関係の社長さんと話す機会があった。「うちの会社はね。落ちこぼれを救っているようなものなんですよ」と社長さんはぼやいた。「わずか1年の間に3カ所も職場を転々と回って、最後に自分の所に来るんです」と言った。「働きたいと言うのに、仕事を与えないのはかわいそうじゃないですか。まず面接で私は言います。転職を繰り返したってそんなに楽な会社はないものだよと。そしてまず手を見せなさいと。爪を見るんです。爪を長く伸ばしたりしている場合は、その爪では仕事は出来ません。一度、帰って良く考え、そして働きたいと思ったらまた来なさい」と。
「それで再び面接を求めてきたなら採用してます。爪をきれいに切っているのを見ると、ああこの子は働く意志があるんだと」。「落ちこぼれの子でも会社と言うものは一度、採用したら社会人として育てる責任もあります。爪を切るのも働きやすくするだけでなく、見苦しさをなくすためなんです。髪を赤く染めたり、金髪にした子にも面接で言います。うちの職場は髪のファッションを競う場ではありません。 すぐ元の髪の色には戻せないでしょうが、いずれ元の髪に戻して両親を安心させなさい」と。この社長さんの工場にはスーツを作ってもらおうと何度か足を運んだことがある。女子社員が中心だが、みんな明るい表情で働いている。そして顔ぶれも変わることがない。社員の定着率が高いのだろう。「例え、落ちこぼれの子だって働きたいと言うのに仕事を与えないのではかわいそうでしょう」。今では本社工場のほかに4つの工場を持っている。「採用した以上は愛情を持って社員と接したい」。この社長さんの所でスーツを作って良かった。そう思った。
最後にクイズ。「若い人が社会に出て成功するために最も重要だと考えている要素は次のうちどれか。A=個人の努力、B=運やチャンス、C=学歴」。正解は「A」であり、若い人たちもしっかりしてます。
そして「働く若者の悩みを割合の高い順に並べてみるとどうなるか。A=人生の目標が見つからない、B=恋愛・結婚問題、C=職場での人間関係、D=仕事への適正」。正解は「BDAC」。つまり何よりも恋愛・結婚問題で悩み、次に仕事への適正であり、人生の目標、人間関係となる。自分の20代だってそうだった。そんなに変わったものじゃない。