若い女が死んでます−。15日朝、大曲署はこんな通報で色めき立った。殺しか!。署員のほとんどが遺体の見つかった大曲市美原町の国道105号・大曲大橋の下に駆けつけた。しかし、遺体を検案した結果、外傷もなく、衣服にも乱れはないなどから薬物を飲んでの自殺と断定。遺体を秋田大学医学部附属病院に運んで司法解剖となった。
問題は女性の身元確認となったが、遺体からは身元を表わすものが何一つもなかった。所持品の手提げバッグの中にさえ自分の住所氏名を表わすものがなく、まるで自分をこのままソッとこの世から姿を消させて欲しいと訴えているようだったと署員。自殺はもう新聞記事にさえならないが、身元が明らかにならないとなれば新聞発表によって遺族が名乗り出るのを待つことになる。結局、夜まで待ったうえで自殺した女性がいることが新聞に発表された。同時に警察の遺族探しも行われたが、朝刊が出る前に本荘市出身で大曲市内の会社に勤務している19歳の女の子と分かった。遺書らしいものもあったが、なぜ自殺までに追い込まれたかは明らかにならなかった。ただ、同僚と同じアパートに住んでいたが、孤立した生活だったようだと警察官は話す。
秋田県は自殺が異常に多いとされている。県民の脆弱性がそうさせているのだろうか。あるいは雪国という風土性がそうさせているのだろうか。深夜にたった一人でアパートから抜け出し、橋の下の原野で自殺を図った若い女性。遺体を検案した警察官は「まじめな生活だったようでしたね。遊んで歩くというようなことさえほとんどなかったようです」と話す。
19歳の女の子がなぜ自分を死に追いやったのか。身勝手な想像は避けたい。ただ、そこまで苦しむ何かがあったろうと思うと胸が痛む。19歳と言えばそれこそ箸(はし)が転んでも可笑しくて、笑い転げる年代だ。自分の知っている周辺でもこの年代の女の子たちの明るさはうらやましくなるほどだ。だが、広い世間ではそうした中で一人黙々と悩みを抱えて苦しんでいる子もいるのだろう。死ぬ前に何か救いの手はなかったのか。死に追いやられる前にもっと別な救いの手段はなかったのか。
チラッと聞いた話だが亡くなった女性はパソコンが好きで、その道を勉強中だったとも言う。だったらパソコン通信とかインターネットを通じてもっともっと世間に自分を広げる方法があったのにと、とても残念に思う。記者もパソコンに向かおうとしたのは一つの辛いことを乗り越えたいと思ったからだった。何かに夢中になるものが欲しくて、パソコンという未知の世界に取り組んだ。とにかく未だに未知の世界をさまよっている状態だが、ワープロとインターネットだけはどうにかこうにか使いこなせるまでにはなった。
そしてインターネットで新聞を発行し、随分、多くの人たちと知り合えた。いい出会いを何度も経験した。10日には秋田市の高杉静子さんが主宰する「あきたnews」の呼びかけで、県南食べ歩きツアーにも参加した。10人ほどのツアーだったが、高杉さん以外はほとんど初めての出会いだったのに「あきたnews」の掲示板「ゲストブック」でのやり取りも有り、もう何年も前からの友人のように心をオープンにして会話を楽しめた。不思議なくらいだった。
パソコンはお宅族を生み出すとも言われたが、実際は違う。パソコン通信を通じてもそうだったし、インターネットを通じたメールのやり取りでもお互い心を許して話し合える。しかし、インターネットに関しても、パソコンに関してもそれを知らない人たちはインターネットと言えば、ポルノとか薬物売買とか、いずれも悪い方へ悪い方へと解釈を持って行こうとする。確かにインターネットの世界には悪質なホームページもあるだろう。しかし、それを語る前にインターネットとは悪いものだと目を背ける体質は良くない。
毎年のことだが農家の嫁さん探しを取材する。農業委員会が世話人に呼びかけて30歳、40歳になっても嫁さんを迎えることが出来ないでいる農家の男性のために必死になって農村を探し回っている。中には中国まで行って嫁さんを探してくる人さえいる。この取材を通じて情けないと思うのはもうそんな見合いの時代ではないんだと言いたいからだ。
農業委員会の事務局職員に何度か言った。「嫁さんを探したいと思うなら、その人たちにパソコンを覚えなさいと勧めるべきだよ」と。ところがその話を聞く市の職員もパソコンにはまったく疎い。こちらが「パソコンを通じて、あるいはインターネットを通じての人と人の出会いのチャンスの多さ」を説明しても相手がそれに対して無知では話しにならない。のれんに腕押し、ぬかに釘なのである。まるでハトがマメ鉄砲を受けたようなキョトンとした顔を見せるだけだ。
しかし、それを言う自分の方が無理かもしれない。女性と知り合うこともなく30歳、40歳、あるいは50歳代になってしまった農家の独身男性だ。パソコンを覚えようとする前向きさがあったなら、他人に頼まなくてもとっくに嫁さんぐらいは見つけていたろう。
それにしても19歳の死。なぜ死に急いだのか。パソコンが好きだったと言うなら、それを活用して新しい人との出会いがつくれたのに。死ぬ前に、悲しむ前に、苦しむ前に心開いて話せる人を見つけて欲しかった。深夜、真っ暗な橋の下で薬を飲み、この世を去るなんて。僕は亡くなった君の顔は知らないが、なぜか悲しいよ。でも亡くなったんだね。ゆっくりお休み。そして生まれ変わることが出来たら今度は楽しい人生を味わってよね。