岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(62)国民総背番号」(99・8・6)

 今日、サンノゼの日中の気温は20度を割ってしまい、夏とは思えぬ寒い一日でした。青空が出ればもう少し気温も上がったと思うのですが、あいにく一日曇り空でした。平年と比べても少し寒い夏のような気もします。でも暑さ知らず、汗知らずと云う暮らしやすさは広いアメリカでも他の土地では得られないと思います。

 今日はアメリカ人一人一人が一生付き合う一つの番号について書いてみたいと思います。

 戸籍も住民票も存在しないこの国ですが、ソシアルセキュリテイー番号と呼ばれる9桁の数字(XXX−XX−XXXX)が、実はアメリカで生活する中で一生付き合う必要のある番号なんです。

 日本の国民保険と同じような年金に関わる番号なので、もともとは給与所得に対して一定率で引き落とされる保険料の払込や受給を受ける為に必要な個人の管理番号であった訳ですが、所得に関わる番号であることから税金納付上の個人管理番号にも流用され、会社では社員番号に、大学では学生証の番号になり、住宅ローンを組む場合の口座番号になり、預金口座を開く場合の証明番号にも使われ、交通違反でも、この番号は免許書番号同様に記録され、損害保険、生命保険に加入する場合にも、電話加入する場合も、車を購入する場合もといった具合で、生活においては運転免許証同様に個人を証明する為の大切な身分証明番号の一つとなっています。また電話で個人情報を問い合わせる場合のパスワードとして、この番号を相手方から聞かれることもあります。

 アメリカで就職する場合には、まず初日に、このソシアルセキュリテイー番号と証明カードの写しが会社に保管されますし、ソシアルセキュリテイー番号を持たない人間を会社が採用してはいけないことも法律で定められています。したがって、駐在員としてアメリカで仕事をする人達も、派遣後は何よりも先に労働資格を証明するビザがスタンプされたパスポートを持って社会保険事務所に出かけて、この番号の取得を申
請する必要があるわけです。

 アメリカ人の場合、この番号を本人が実際に使うのはアルバイトなどの仕事を始める年齢に達した時からなのですが、子供の親が毎年、税金の確定申告書の作成において、子供を含めた家族を扶養者として控除を受けようとすると、実際に扶養家族の一員であってもこのソシアルセキュリテイー番号を皆が持っていない場合には、扶養家族として数えてもらえませんから、必然的に子供でも早い時期に、この番号を取得さ
せることになります。

 逆に、この番号から色々な情報を探っていくと個人の財産や負債や犯罪歴など、過去の個人記録が全て公に出てきてしまう問題があります。金融機関などはこの番号に基づく個人情報の交換を行っており、その個人情報を整理して第3者に提供するビジネスも存在しています。
私も一度だけ実際に驚いたのは10数年前に、初めてアメリカで住宅ローンを借りる手続きをした時でした。自分で書き込む申請書の中に申請日の時点で自分のクレジットカード会社への支払い残額を明記する項目がありました。あまり細かい数字は気にしないだろうと思って、それぞれのカードに対して大体の数字を書き込んで提出した訳なんすが、審査の段階で、書き込んだ申請書の数字と調査会社がまとめた数字が一
致していないと云うことで、最終支払いを行った証拠の提示を求められました。後日、実際にそのリストを見せてもらったのですが、過去3年間の各銀行口座の預金額の推移の詳細、各クレジットカード毎の使用金額、支払い金額が完全な形で出ていました。これでは事実上個人の秘密も無きに等しいと驚き以上に感心させられました。

 交通違反や事故歴も運転免許証だけで無く、実はこのソシアルセキュリー番号で管理されていて、他の州で違反した場合の記録や保険を利用した記録も全てこのソシアルセキュリテイー番号で引き出すことが出来、免許を取りなおしたとしても、ソシアルセキュリテイー番号は変わらないので、保険会社には個人が情報を隠しても全て別のルートから情報として入ってしまうと云う仕組みです。

 まあ常に悪い話ばかりでもありませんが、この番号は生活の中であまりにも馴染みが深い為、自宅の電話番号同様にほとんどのアメリカ人は記憶して、人に聞かれるとすらっと暗唱出きるのが普通です。
 

岩間@サンノゼ