岩間郁夫さんの「アメリカ暮らし(66)カジュアルデー」(99・9・6)

 夏休みの終わりを告げるレイバーデー(勤労者の日?、勤労感謝の日?)の3連休に入りました。既に多くの学校では先週から新学年が始まっているのですが、本格的な授業は、このレイバーデーの祝日明けから始まるのが習慣になっているようです。ただ連休とは云え、ほとんどの家庭では既に夏のバケーションを終えてしまい、予定していたお金も使ってしまっていますから、レイバーデーの3連休に大きな旅行計画を持つ人は少なく、私の近所の人達もほとんどは家に留まり、のんびりしたり、家の補修とか車の手入れや庭仕事などで時間を過ごしています。

 連休とは関わりありませんが、今日は職場の服装に関わるカジュアルデーについて少し書いてみます。

 少し前まではアメリカでも事務所の中で仕事着については品位を保つと云う点から会社毎にドレスコードと云う規則がありました。この規則を逸脱する服装で事務所内で仕事に就くと上司とか、総務部門から本人に注意があり、ドレスコードに合う衣服に着替えるか、帰宅を命ぜられたりすることがありました。ドレスコードの目的は日本の会社同様に来客者に対して失礼のないような服装であることと極端に他人を刺激(不快感を与えると云う表現になっていますが)するような服装で事務所内で仕事をしてはいけないと云うようなものでした。具体的に云えばジーバンにTシャツのようなかっこうとか、サンダル履きとか極端に短いスカート、ノースリーブの服などを上げている訳ですが、今は昔ですが、女性はスカートで無ければいけないようなことが書かれたドレスコードもあったそうです。個性を大切にするアメリカではありますが、簡単な話、事務所の中では日本の職場同様の服装をしていれば全く問題が無い訳です。ただ、シリコンバレーのように100%の社員が自分の車で通勤するような環境では、電車通勤などと違って他人と直接接触する機会が少ないだけにどうしても通勤着等への気配りがいまいちになることが多く、それに歯止めを掛けるのがドレスコードでした。

 ですから10年ほど前は先進的なシリコンバレーの企業でも事務所の中で働く男性はネクタイにダークスーツ、女性もスーツ姿が多く、スーツで無くてもいわゆる外出着の服装で仕事をしていました。

 このような伝統的な事務所内の服装に対して、大きな変化の原因になったのがハイテック分野の技術者と呼ばれる人達でした。

 本当かどうか?分かりませんがネクタイをしめた状態で創造的な仕事は出来ないと云う考え方もあるとは思いますが、技術者と呼ばれる人達は仕事上、他の事務所で働く人達よりも外部との接触が少ないと云うような背景があったのだと思うのですが、彼らの仕事場からネクタイ姿の人がいなくなってしまいました。次にカッターシャツがポロシャツに代わり上着もじゃまと云う具合で、少なくとも技術部門に関する限り、ドレスコードそのもので彼らを縛ることが出来なくなってしまいました。

 そんな中でこの変化に最も大きなインパクトを与えたのが、当時、シリコンバレーで異色企業として隆盛を極めたアップルコンピューター社です。この会社がドレスコードなるものを大きく変えてしまった訳です。つまり、事務所内での服装は個人の問題と云うことで規定をほとんど無くしてしまった訳です。

 当時はアップルコンピューター社を訪ねると、我々にとってはただ驚きでした。会社の中で会う社員は遊びに来ているじゃないか?と感じるような服装ばかりが目立ちました。そんな中で会議を持つとアップルコンピューター社側からの参加者はTシャツにジーンズとかタンパン姿、極端な人は靴じゃなくてサンダル姿。一方、外部から参加した人達はネクタイにダークスーツのいでたちで両者が向かい合った会議は本当に妙な感じがしました。

 でも誰でも楽な格好で仕事したいというのが当たり前の気持ちですから、自然にこれらの変化は各企業に伝わり、ドレスコードなるものの規則が存在しても、それを基準に云々と言う会社は少なくなりました。

 それでも外部の人や顧客との接触が必要な会社幹部や営業関係者は依然としてネクタイにスーツという服装がしばらく続いた訳ですが、そういう人達にとっても楽な服装を好むのに決まっていますから、その対応策として多くの会社は週末の金曜日だけノータイ姿を全社員に認めるカジュアルデーと云うルールを作りました。どちらかと云うと社内に対してと云うより社外に対して、今日は金曜日ですから、カジュアルデーですから、事務所の服装に関して気にしないでくださいといったことをアピールする目的だったような気がします。そんな訳で、しばらくの間はこちらがスーツ姿で金曜日にカジュアルデーが実施されている会社に出かけると、まず先方から開口一番、今日はカジュアルデーなんで、こんな格好で失礼します等と言われました。また技術者出身の経営者が多いこともこのカジュアルデー化に拍車をかけたと思います。

 しかし、現在はシリコンバレーのほとんどの会社でこのカジュアルデーなどと云う言葉は過去のものになってしまいました。事務所の中でネクタイにスーツ姿は曜日に関わらず、自然に消滅してしまいました。今シリンコンバレーで僅かに一般企業としてスーツ姿が残っているのは金融関係の職場と政府関係の幹部ぐらいではないかと思います。市役所などでも相当の幹部クラスでも公式の席以外の場所でネクタイ姿を見か
けることは少なくなりました。営業関係者でも顧客と合う日と合わない日で服装を分けたり、社内で着替えをするなんて人もいます。

 また、今はハイテック関係の会社経営者のほとんど事務書で仕事をする時をカジュアル姿で過ごす人がほとんどになりました。

 まあ私も周りの動きに合わせて、事務所の中でスーツ姿でいることがほとんど無くなってしまいました。また、出張で訪問するアポイントメントを取ると相手からカジュアルで来てくださいなんて云われたり、訪問先での会議が終わって別れる時に、相手側から次回はカジュアルで来てくださいなんて云われることも増えてきました。カジュアルと云えどもあるレベルでのコントロールは必要ですが、服装が楽になったことは個人的には大歓迎です。

 またこの服装の自由化は、一番保守的な日系の企業も例外でなく、年輩の方にはこの動きに眉をひそめる人もいるようですが、今では事務所内でスーツ姿で働く日本の駐在員も随分減ってきているように思います。
 

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Ikuo Iwama

San Jose, California, U.S.A.
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