レザーアーティスト・田中章夫さん
11月には美術の最高峰「三越デパート」で個展(9月22日・金)
角館町のレザーアート・ギャラリー「角館の革館(かくのだてのかくのだて)」を訪ねた。店のオーナーは東京出身のレザーアーティスト・田中章夫さん(54)。財布や女性用のハンドバックなど革製品をデザインし、「世界のブランドとして通じるものを秋田から、角館にあるということを発信したい」と情熱を込めて話す。東京大丸デパートや丸善日本橋本店、仙台三越などで個展を開いてきたが、今度は美術の最高峰「三越デパート」から声が掛かりその本店で、11月21日から27日までレザーアートの個展を開くことになった。妻の出身地の秋田が気に入って、角館町田町の武家屋敷通りに店を開いたのが98年6月。町総合情報センター筋向かいの大正風の木造2階建ての洋館がその店「角館の革館」だ。喫茶店を兼ねた店内には男性の目から見ても素敵だと思えるハンドバックや財布がセンスよく並べられている。作品の独創性、芸術性が買われ全国の百貨店から「うちのブランドとして売り出してほしい」との誘いや国立大学からも講師として迎えたいとの声も掛かっていると言う。角館町に住み着いたレザーアーティストをぶらりと訪ね、その作品に目を通し、静かにコーヒーを飲み、田中さんの芸術性にこだわった話を聞くのも楽しい。
とにかくすごい経歴の持ち主だ。1966年、立正大学美術部で故清水喜美師のもとで皮革染色を学び、マヤ文明に引かれて71年にメキシコ・ベラクルス大学に留学。美術を専攻してハラパ市でベラクルス州政府主催の個展を開催。そして帰国後の91年に東京都内にレザーアートの店「Leather Art Miku」を創設。しかし、「一流のものはなんでも東京だという東京志向ではなく、この美しいまち角館町から東京に負けないものがあると言う心意気を示してみたかった。奥さんのふるさと秋田を良くしたいと思った」と妻への純真な愛情を示し、角館町に移り住んだ理由を語った。友人、知人、親類みんなが反対した。それを押し切って「地方からの文化を発信し、世界の一流ブランド『プラダ』や『ヴィトン』『シャネル』にも負けない逸品をデザインしようと思った」と話す。
赤や青の原色の美しい幾何学模様の入ったハンドバックや革ジャンパー、シックで落ち着いたデザインの黒革のカバン。いずれも機能的で柔らかい手触りと軽さ、肩や手にしっくりくるフィットさが自慢だ。使っている革はヨーロッパラム(小羊の革)。田中さんのデザインと指示を受けて腕の確かな職人がていねいに作り上げる。値段はカラーもので8万円から10万円、モノトーンのハンドバックは2万3000円から3万3000円と手頃だ。通販業界ナンバーワンと言われる業界誌からも商談があったが、ブランド商品らしい値段にしてほしいとの話で断った。「いいものを安く、そして手にしたお客さんに喜んでもらいたいからだ」と田中さん。
「地方からだって一流品は作れる」。田中さんの自信を裏付けるように田中さんのアート活動は「創作市場」と言った著名な月刊誌なども次々と取材に訪れ、その作品を紹介している。そして「秋田から全国に、いや全世界にとどろく『レザーアート』を発信中(創作市場)」と高く評価されている。「これからは三越本店での個展準備に専念したい」と言いながらも「嬉しいねー。僕の作品を分かってくれる人と出会えるのは」と少年のような目を輝かす。秋田の人との付き合いには戸惑うことも多いようだが、「とにかく秋田が好きだ、角館が好きだ」を連発する。明るい。その明るさは南米・メキシコの芸術を学んだ下地があるからだろうか。レザーアートだけでなく手がける絵は赤系を中心とした独特の色彩が目を引く。角館町にいや自分の目の前に世界に通じる一流ブランド品がある。そう思いながら飲むコーヒーもまたいい。