元校長の岸達郎さん
抽象画で自分の精神世界を描く(12月6日・水)
大曲市立図書館で岸達郎さん(71)=若竹町=の絵の個展が開かれている。展示されているのはサムフォールから20号までの13点だけという小さな個展だが、図書館を訪れる人たちは本を読んだり、新聞をひもときながら目の保養になると絵を楽しんでいる。
岸さんは四ツ屋小学校長を最後に教職から離れ、退職後の楽しみにと絵を習い始めた。絵の先生となったのは故・小野則夫さんで当時、新進気鋭の画家として中央からも注目されながら47歳の若さで急逝した人だ。岸さんはその小野さんの緻密な画法にほれ、絵の基本を学んだ。その当時は小野さん流に具象画を中心に描いたが、数年前から抽象画の方へと変化した。岸さんは「一枚の絵の中に何層もの絵が重なって見える、そのような世界を描いてみたいと思った。いわゆる構想を練ってその構想から浮かんで来るいろんな場面を一枚の絵の中に描くのも面白いじゃないかと」。岸さんはそう言って目を細めた。
使う絵の具は卵を溶剤にしたテンペラ画とテンペラと油を混合させたアクリル画。今回の個展では「消燈ラッパのなる頃」と題した絵や「笑う鳥」、「辰年 火山活動」、「自画像」と題した抽象画や「秋田マリーナ」「西山ほほえむ」「熱い日の国花苑」など具象的な風景画や静物も展示している。
「消燈ラッパのなる頃」は子供のころ秋田市で過ごした時の思い出を下にした。戦前だったから近くに「秋田17連隊」の本部があり、そこから聞こえてきた消燈ラッパの寂しい音を思い出に当時の軍隊が手にした「日章旗」や日本人形、昔の玩具などを素材に描いた。「笑う鳥」はまさに抽象画でまさに岸さんならではの精神の世界。自画像も抽象画で「20世紀と言う不安な時代を生きた自分の精神を現した」と語る。黄色を背景に不安を現し、スフインクスを想わせる人物とピストル、フクロウ、カタツムリのような動物が描かれている。ピストルは軍人が手にした銃でもあり、多感な少年時代に戦争を体験した人ならではの一面かもしれない。
絵は在職時代から描いて見たかったと岸さん。大曲市内の日曜画家の集まり「彩友会」のメンバーでもあり、7年前からは秋田市の仲間9人と年1回、アトリオンで作品展も開いている。秋田作家協会の応募点で2回入選している。図書館での個展は後藤昭三館長からの依頼で開いたもの。岸さんは「いつまでかと言われても。まあそれは館長任せです」と言い流す。本を読み、新聞をひもとき、疲れた時にちょっと一服しながら絵を見るのもいい。目に優しい色が多く、心安らぐ。