子どもたちに昆虫の世界を紹介

月刊誌「子供の科学」で発表

大曲市の東北農試勤務の昆野博士(1月12日・水)

「子どもたちに昆虫の世界を語ってあげたい」と月刊誌「子供の科学」に様々な昆虫の生態を捉え、写真と文で発表し続けている人が大曲市四ツ屋の「東北農業試験場」にいる。今、発売中の2000年1月号では「冬の雑木林のオモシロ生物」と題して冬の雑木林で見られる小さな生き物たちを紹介している。この人は同試験場「水田昆虫研究室」勤務の昆野安彦農学博士(44)。2月発売予定の3月号では絶滅の恐れがあると心配されている「ヒメギフチョウ」の生態を4〜5ページ割いて発表するという。

  昆野さんは同試験場で水田に棲息している昆虫を専門に研究している。課題は「農薬に代わって稲の害虫を駆除する方法はないか」だ。稲の害虫の天敵として知られるクモやハチ、アメンボウを研究したり、除草剤を使わなくてもいいようにと雑草を食べるコガタルリハムシやサカマキガイなど昆虫の生態の研究などをしている。昆野さんは「環境ホルモンの影響を考えると除草剤や農薬は出来れば使わない方がいい。雑草を食べる虫を実際に使えるようになったら有機農業も完全に確立する」と昆虫をどう農業に生かせるかをテーマに5年後をめどに研究しているという。

  「名前が昆虫の昆野ですから、昆虫は子どものころから好きだったんですよ」と昆野さん。それこそ「ファーブル昆虫記」や昆虫図鑑に親しみ、大学も東京大学農学部で昆虫学を学んだ専門家。両親は岩手県出身で子どものころ、夏休みとなれば北上の実家に遊びに来て野山を歩いて昆虫と親しんだという。大学を卒業後、筑波農業環境技術研究所に勤務。同試験場には1997年に転勤して来た。

  「大曲は自然が大好きな自分のような人間にとっては天国ですね」と喜ぶ。休日となれば姫神山を中心に野山を歩き、野草や雑木林を観察し、小さな生き物たちとの出会いを楽しんでいる。いつも手にはカメラを持参。「姫神山はいいですよ。春はニリンソウ、キクザキイチリンソウ、カタクリなどの草花が一斉に咲き、その中をリスやウサギ、カモシカが遊んで歩く。もう今ごろになるとマンサクの花も芽を膨らましているころだと思います」と透き通るようなきれいな目を輝かして草花や小動物の世界を語る。

  その昆野さんへ「子供の科学」を発行している「誠文堂新光社」から「昆虫の世界を語ってもらえないか」との依頼があったのは昨年。昆野さんは二つ返事で引き受け、昨年の5月号では背中に泥を塗ることからその名が付いた「ドロオイムシ」を採り上げた。そして「子供の科学」創刊75周年の8月号では「ゲンゴロウの結婚は・・・」と題してゲンゴロウの世界を紹介した。ドロオイムシ。正式にはイネクビボソハムシという名前の虫で、5月から6月の田植え時期に田んぼに現われる虫だという。昆野さんはドロオイムシが背中に背負う泥のようなものは自分の肛門から出す糞(フン)を外敵から身を守るため乗せているのだと語り、その糞を背中に乗せている生態を写真と優しい語り口で紹介している。

8月号の「ゲンゴロウの結婚」ではゲンゴロウの交尾を2日間にわたってジッと観察、その詳細な姿を写真と絵、文章で紹介している。昆野さんは「ゲンゴロウは体長4センチほどの大型の水生昆虫で昔は田んぼや池、沼で良く見られたものだが農薬の影響を受けて今ではその姿を見るのはとても難しくなった」と話す。そして「このような小さな生き物たちの生態って良く見ていると興味がつきないんです。最近は子どもが子どもを殺すなど子どもたちの心までがすさんでいる。特に都会の子どもたちは自然の中に棲息している様々な昆虫の生態などを見る機会も少ない。子どものころにこうした小さな動物たちの生態に接すると言うことは心の成長にとっても大切なことと思う。その機会が少ない今の子どもたちにせめて本を通じて紹介する機会を与えたい」と執筆に取り組んでいる。

  発売中の2月号で採り上げた「寒いけど・・・たんけん!冬の雑木林  オモシロ生物」ではコナラの木にぶら下がる蛾(が)の繭(まゆ)やクヌギカメムシと言う昆虫の越冬する姿やピエロの笑顔のような不思議な形をしたヤマウルシの木の芽のアップ、クリの木に産みつけられたクスサンという蛾の卵の塊、コナラの木に生えたハナビラニワタケというキノコなどを紹介。子どもたちに小さな生き物たちの“フシギ”さを興味深く語っている。

  昆野さんは「今年は4回ほど発表を計画している。特に今年は赤とんぼの生態を詳しく紹介したい。赤とんぼならこの試験場の田んぼでも良く見かけられるので科学の好きな子どもたちに赤とんぼの不思議な生態を語ってみたい」と話す。昆虫好きの昆野さんの存在は次第に周辺の学校にも知れ渡り、昨年9月の同試験場の一般公開の日には昆虫のコーナーを設けて訪ねて来た地元・四ツ屋小の子どもたちに喜ばれたという。「子どもたちはやはり昆虫が好き。そんな子どもたちを大事にしたい」と昆野さんは優しい目を輝かせた。