南外村の出羽鶴酒造
20日過ぎには店頭に新酒も(11月17日・金)
初冬の冷え込みを待って、今年も酒造りが始まった。南外村字悪戸野の「出羽鶴酒造株式会社(伊藤辰郎社長)では17日朝、この秋に収穫した新米「あきたこまち」を使って仕込んだ新酒の「初しぼり」を行うと同時に新しい酒が出来上がったのを知らせる「杉玉(酒林)」を玄関先につり下げて新酒の誕生を祝った。杉の葉を束ねてボールのように丸くした玉をつり下げるのは酒蔵の最高責任者でもある杜氏の佐藤賢孔さん(50)=同村字及位=。はしごに上って緑の杉玉を下げる作業を伊藤社長らが見守って、新酒の誕生と酒造り作業の始まりを祝った。
春から秋まで人の姿がなかった蔵に杜氏をはじめ頭(かしら)や麹(こうじ)師、もと師(酒母)、精米師、蒸番、槽場(ふなば)など15人の蔵人が蔵入りして米の搬入から精米、米とぎなどの仕込み作業に入ったのは10月12日。それから米の蒸し作業、こうじ揉み、酒母造りなどの作業を通して巨大なタンクの中でゆっくりと発酵させ、酒の母胎となる「もろみ(醪)」を誕生させた。
もろみはこうじの粒が混ざってまだ白く濁っているが、これを麻袋に入れて絞り出すと原酒が誕生する。もろみが眠るタンクとパイプラインでつながった絞り場で2人の蔵人が次々と麻袋にもろみを流し込み、槽(ふね)と呼ばれる内部がステンレスの容器の中に横たわせる。2層3層と袋が重なっていくとその重みで槽の下の細い管から生れたばかりの酒が流れ出す。
その酒の誕生を伊藤社長や技師長の佐渡高智さんらが見守った。管からチョロチョロと生まれたての酒が流れ出す瞬間を待つのはさすがに厳粛そのもの。ぴーんと張りつめた空気の中でその誕生を見守り「おう。出てきた。出てきた」と喜びの声が沸く。甘い香りがぷーんと漂い、その酒を茶わんに受けて味見する。「ウン。いい酒だ」。見守っていた人たちは生れたばかりの酒を口に含み、顔をほころばせた。
昨年は高温障害やかめ虫の大量発生で米の品質も劣り、洗うだけ米が砕けてしまうなどで杜氏らを泣かせたが、今年は品質も良く気づかうことなく酒造りに精を出せたと言う。この日生れたばかりの酒は「出羽鶴新米『初しぼり』」として21日か22日に店頭に出される。いずれも地元産の「あきたこまち」や「とよにしき」が原料。さらに純米酒や吟醸酒として地元産の酒米「美山錦」や「吟の精」、そして一升ビンで5000円近い高級酒「大吟醸」の原料として兵庫県からは「山田錦」を仕入れた。
酒はある程度、ねかせてやっとまろやかな味となる。初しぼりはその点、味はやや荒っぽさもあるが新鮮な香り、それにやはり「初もの」と言う“めでたさ”もあって固定したファンも多い。しかも何と言ってもアルコール度数が18度とやや高い原酒の味わいが魅力だ。「この生まれたての酒を楽しみにしているお客さんも多いんですよ」と蔵人たちは絞りたての酒を勧めた。一杯口に含んだ。甘い香りと甘さが口中に広がった。何とも言えない幸福感がのどごしに流れた。
厳かな新酒の誕生の儀式は春から秋まで眠っていた酒蔵を一気に活気づけた。酒蔵ではこれから降雪期を待って雪の中で冷やされ、雪の中で育てられる本格的な酒造りが3月20日ころまで続く。
出羽鶴新米「初しぼり」は一升ビン入りで2200円、720ミリリットル入りで1000円、300ミリリットル入りで430円の値段で店頭に出される。