大曲市大川西根小の楽器まつり

今年も多くの感動を与えて幕

101人の児童がミュージカル「怪盗ドラゴン 今どこに」(11月20日・月)

 大川西根小の全校音楽全校音楽で知られる大曲市大川西根小学校の「第30回楽器まつり演奏会」が19日、市民会館で開かれた。今年も素晴らしい演奏と歌声、そしてミュージカルで会場を埋めた保護者やファンを沸かせた。

 同校の全校音楽は1961年に生れた。町の子と違って、山あいの児童数100人前後の小さな学校だけに子供たちはどこかもの静かで、表現力の乏しさがあった。それを憂いた当時の音楽の先生・後藤昭三さん(72)=日の出町=が、音楽を通して「演奏する事の喜び」、「歌う事の喜び」を伝えたいと全校児童で楽器を演奏し、歌うのを指導したのが始まりだった。地元企業の理解もあって、バイオリンやチェロなど弦楽器、トランペット、ホルンなど管楽器から打楽器など高価な楽器が次々と寄贈されるようになり、小学校では珍しいオーケストラの誕生となった。そして1年生から3年生までは歌とリコーダーやピアニカを手に、4年生から6年生はオーケストラで演奏すると言うユニークで温かい音楽が生れた。

 上級生が下級生にマンツーマンで楽器の演奏方法を以心伝心させて歌う。大川西根小の全校音楽は次第に評価も高まり、全国大会にも次々と出場して好成績を修め、海外からまでも視察団が訪れるほどとなった。67年から79年まで市長を努めた故・最上源之助氏は当時、「大曲市には世界に誇れるものが二つある。それは大曲の花火であり、大川西根小学校の全校音楽だ」と自慢したほど。そして新しい現在の校舎が誕生した際には高橋司市長のアイデアで全国にも珍しいパイプオルガンが音楽室に設置された。

 この日の演奏会は2部形式で、築地明校長は「大川西根小の楽器まつりが30回も続けられてこれたのは小原徹二秋田振興会長をはじめ地域の皆さま、たくさんの方々の指導、ご援助のおかげ」とお礼を述べた。そして全校音楽「心のハーモニーを奏でよう」で第一部のプログラムの幕を開けた。子供たちは普段着姿でステージに登場。校歌「われらの母校」に始まり、タイケの「旧友」、NHKテレビ「生きもの地球紀行」のエンデングテーマ曲「ビリーブ」、「ウィーンはウィーン」など8曲を洗練された演奏、元気な歌声で聴衆を沸かせた。入学してまだ半年しかならない1年生。それでもお兄さんたちお姉さんたちにとけ込み練習に懸命に付いてきてりっぱな楽器演奏と歌を会場に響かせた。

 第一部の最後には全校音楽生みの親で元同校校長の後藤さんが30年振りに指揮棒を握って登場。同校卒業生の中学生や高校生、元職員、父母ら35人が子供たちのオーケストラと一緒に「旧友」を再演、楽器まつりに花を添えた。

 プログラム第二部はもうすっかりお馴染みとなった大川西根小ならではの「ミュージカル」。バイオリンとチェロ、トランペット、ホルンだけで構成された10人のオーケストラをバックに今回は「怪盗ドラゴン 今どこに」を演じた。児童のミュージカル委員が中心になって台本づくりや場面ごとのオリジナル曲を作った。「友情と冒険」をテーマに少年探偵団が幾多の困難を乗り越え、怪盗ドラゴンを追いかけていく物語。秋田市で「親子ミュージカル」を主宰しているさとう修三さんの演出指導もあったが、ほとんどは築地校長も含めた12人の先生と101人の子供たちが協力して音楽、劇、衣装などの舞台設定を仕上げた。

 子供たちによるミュージカル怪盗ドラゴンが登場するプロローグはオーケストラの怪しい音でムードを高める。黒いマント、赤いマスクをしたドラゴンが登場する。追いかける刑事たち。勇気を奮って少年探偵団も登場する。歌があり、ダンスがあり、バラエティーな演奏が聴衆を楽しませる。セリフにも力がこもる。生き生きした踊りの場面ではしっかりとその役を担っているかのように身振り手振りを交え、かわいい笑顔も。子供たちは音楽だけでなく立派な役者にさえなっていた。

 歌うことも演奏することも、そしてサンバやハワイアンの曲に乗って踊り、セリフを言い回すこともみんな楽しみながらやっているのが伝わって来る。故・最上市長が「世界に誇れる」と激賛した大川西根小の全校音楽はますます円熟の度合いを深め、今年も聴衆を感動させ、泣かせた。会場から沸いた大きな拍手。役柄から裸足の子も、ズックを履いた子もミュージカルが終わるとそのまま全員がエントランスホールに駆け出して「ありがとう」と見送った。子供たちは今年もいっぱいの感動をお父さん、お母さん、そしてファンにプレゼントして楽器まつりを締めくくった。