素直でまじめな「いい子」がなぜ非行に走る

非行の核心に迫った「いい子の非行」

春風社が出版、著者は秋田市出身の家裁調査官(11月21日・火)

 いま、素直でまじめな、いわゆる「いい子」による犯罪が目立っている。なぜなのか。素直で礼儀正しい「いい子」がなぜ凶悪な事件を犯すのか−。非行に走った少年たちと面接し、非行問題の核心に迫った「いい子の非行」と言う本が横浜市の「春風社」から出版された。筆者は秋田市出身で、現役の家庭裁判所調査官。東京や秋田、茨城などの赴任先で非行や問題行動のある中・高校生らと向き合って、なぜ犯罪をおかしたのか、どうしたら立ち直っていくのかを調査する「非行臨床」を体験して28年。かつては非行に走った少年たちは家庭の中に困難を抱え、学校では成績がふるわず、学びから逃走し、家庭でも学校でも居場所がない子供たちだった。だが5〜6年前から学校の成績もよく、部活も熱心で評判の「いい子」たちが“おやじ狩り”や恐喝、暴走族へと仲間入りし、凶悪な事件を起こして世の中を震撼させる。そして「いい子」と言われた女の子さえも「援助交際」という性の逸脱行動に走る。

 その異変に気づいた著者が、事件を起こした少年少女たちと対峙し、同じ目線で向き合い、子供たちの心を開かせ、話を聴き、子供たちの心の変化をひも解く鍵を探る。事件を起こした少年たちは「反省したから、事件をおこしたぼくの責任は消えた」とか「がんばりますと言えば、すべてが許されると思う」と幼児期のまま、中・高校生になったのではないかと思わせるような言葉を繰り返す。

 親や教師からみて「いい子」の少年の犯罪事例をケースファイルの中から取り出し、彼らが育ってきた生育史に共通するものを著者は見いだす。

 それは彼らが幼児期の「ごっこ遊び」の体験がなかったことであり、小学生になっても子供同士が群れることは「むだなこと」と追いやられ、自然体験を味わうこともなく、放課後のほとんどは親をはじめとした学習塾・スポーツ教室など大人の管理に置かれ、「一生懸命にがんばること」や「早く正しく行うこと」を言われ続け「子供の時代」がないまま思春期に至った事実だったという。「バランスのよい成長過程で、大事なものを忘れてきたのかもしれない」と著者は指摘する。

 「一般の親や教育関係者からみると、限られた領域でのトピックスなので、多くの子供たちには無縁な話かもしれないが、いま荒れている子供の姿にも成長する伸びる芽をみつけ、逆にいま積極的な子供の姿に危うさを見いだす目を養う必要がありはしないか」と呼びかけ「子育てに忙しい親や、特に幼児や小学生と関わっている教師、学童保育員、生活指導員などの専門職のみなさんにもぜひ読んでいただきたい」と訴える。「いい子」の非行事例をもとに、現代の文化的・教育的課題を探った書として注目されている。本に関する問い合わせは春風社へ。TEL045−721−0350 FAX045−721−04711
 
 

 著者は現在、水戸家庭裁判所土浦支部・総括主任家庭裁判所調査官。1946年秋田市に生れ、73年に東北大学大学院教育学研究科修士課程終了。91年最高裁家庭裁判所調査官研修所教官。97年文部省第16期中教審専門委員。現在、日本生活指導学会理事、秋田大学教育文化学部非常勤講師(生徒指導)を兼ねる。
 「いい子の非行」に関するホームページは下記へ。

 http://www.bekkoame.ne.jp/ha/sps/