写真集「祭 角館」

角館町在住の写真家・千葉克介さん

角館の祭30年の記録を発行し、好評(9月26日・火)

 角館町在住の写真家・千葉克介さん(54)の写真集「祭 角館」が評判だ。日本写真家協会会員として十和田湖、奥入瀬、八甲田を中心に東北、北海道などの風景写真を撮り続けてきた千葉さん。これまでに「みちのく四季彩」(ぎょうせい刊)、「十和田 奥入瀬 八甲田」(旅行読売出版社刊)、「千年のブナの記憶」(七賢出版社刊)、「紅葉を撮る カメラワーク」(主婦と生活社刊)など数々の写真集を発行してきているが、今回は角館が最も熱い日々となる祭りに視点をあてまとめた30年にわたる記録でもある。オールモノクロで、変形A4版にびっしりと角館の迫力ある祭りが収録されている。プロ写真家の確かな目で見つめ、記録し、語ろうとして撮った写真集「祭 角館」。写真集に寄せた富木耐一さんの文「祭りの原点回帰への指針」もまたいい。

 角館の祭りは9月7日から9日まで3日間にわたって展開される。神明社と薬師堂のお祭りで、重さ7トンとも8トンとも言われるナラ材で組み合わせた木造戦車のような曳き山が武者人形の飾り物と踊り子、囃子(はやし)方を乗せて神社参拝や町内への披露のため狭い城下町を練り歩くのが特徴だ。今年も18台の曳き山が繰り出され、若者たちの手によって町内を練り歩き、華麗な囃子に乗って踊り子たちが舞を披露。そして9日の夜には通行権を巡っての交渉、決裂、山と山とが激しくぶつかり合う“山ぶっつけ”が徹夜で行われた。1990年には国重要無形民俗文化財に指定されている。

 千葉さんは30年前からこの祭りの写真を撮り始めた。いつかは「写真集に」という思いがあった。しかし、なかなかまとめきれずに年月ばかり経てしまった。今回、2000年というミレニアムを迎えたことから最後の機会ではないか、とこれまで撮り続けた膨大なネガとカラーポジから写真を選びだし、白黒の写真集として発行を思いついた。

 角館の祭りは県外に出た若者が、お盆や正月に帰って来なくても、祭りには戻ってくると言うほど町全体が熱く燃える。何と言っても山に乗せた歌舞伎の名場面を演じる武者人形がいい。そしてその人形を前に踊り子たちが踊りを披露する姿がいい。その踊り子たちを陰で支え、山の中の小さな居室で笛や太鼓、三味線、鉦(かね)による華やかな演奏の囃子もまたいい。そして若者たちが着た祭り袢纏(はんてん)がまたいなせだ。いや何よりも3日目の夜の激しい山ぶっつけが最高だ。木造戦車のような山と山とが通行権を巡って交渉し、決裂すれば「では勝負と行きましょう」とばかりに男と男が「ワッショイ、ワッショイ」と燃え上がって「ガツーン」と激しくぶっつけあうケンカ祭りが最高だ。

 千葉さんはその祭りを人形づくり、山の組立などの準備から神社への参拝とお払い、踊り子たちの舞、露店でにぎわう町の様子、そして祭りの大切な義務となっている旧殿さまの「佐竹家」への上覧などを様々なレンズを駆使し、時には詩情豊かに、時には冷静な目で記録した。豪快なのはやはり祭りのクライマックスの“山ぶっつけ”だ。通行権を巡って交渉する若者たち。よその町内の山と行き合わないように将棋盤のような道路絵図の上に町内名を書いた駒を置き、行き先を決める「作戦盤」などは「角館の祭は面白いがどうなっているのか分からない」と言う観光客にも通じる。

 写真集「祭 角館」からいよいよ山ぶっつけだ。写真はにらみ合った2台の山と山とが激突する瞬間をスローシャッターとストロボで見事に捉え、迫力満点だ。提灯を手に叫び、怒鳴り散らす若者たちの生き生きとした表情がいい。ぶつかり合った山と山とが天にせり上がり、若者たちが雲霞のごとく山にのし上がる姿がいい。絶叫、叫喚、怒号。男たちの様々な声が写真から聞こえてきそうだ。それにしてもそのぶっつけ合いのさなかでも微動だにせず山の上に乗ったまま、ジッとこらえようとする「秋田おばこ」姿の女たちもいい。男たちの激しい動の中で静かに恐怖を見つめ、こらえ、戦いを見つめる角館の女たちの姿がいい。

 明け方。激しい山ぶっつけと言う祭りは終わった。男も女も泥のようになって山の上で眠っている。道路で眠っている若者もいる。山が帰っていく様子を丹前姿で見送る男の後ろ姿もまたいい。最後のページを飾った各町内の提灯。これこそ角館の祭りの意気込みを語っているようだ。121ページの写真集は退屈させない出来だ。「祭 角館」は千葉さんの主宰する「黎明舎」の発行となっている。1000部印刷し、主に黎明舎と町内の書店で販売中。本体価格は2000円。問い合わせは角館町上菅沢457-1、黎明舎(0187−55−4645)へ。