昆虫学者の昆野博士(東北大助教授)

本紙の記事が縁となって十文字町で講演

昆虫棲息の場を奪うコンクリート化を懸念(4月9日・月)

 講演する昆野博士本紙で紹介された記事が縁となって8日、平鹿郡十文字町の十文字総合文化センター講座室で東北大学農学部助教授・昆野安彦さんの講演会があった。「成瀬の水とダムを考える会」の主催で、農学博士でもあり昆虫学者でもある昆野さんは40人ほどの聴講者を前に「21世紀の農村環境・田園風景を展望する・・・消えゆく昆虫たちの目線から」と題して1時間半にわたって農薬の害や市町村レベルで行われている護岸工事や砂防工事などの公共工事によるコンクリート化によって「土」が消失し、里山の昆虫や小さな生き物たちに決定的なダメージを与えていると警鐘し、環境保護を訴えた。

 成瀬の水とダムを考える会は東成瀬村の奥地を源とする成瀬川をせき止め、治水と水道水の確保、かんがい排水事業などを目的とする成瀬ダム建設に対して自然環境保護の面からも疑問を示し、成瀬川流域の山と川の自然保全とその利用を図ろうと結成された。同町在住の農業・奥州光吉さん(49)がその代表世話人の一人で、昨年1月12日に本紙で紹介した「子どもたちに昆虫の世界を紹介 月刊誌『子供の科学』で発表 大曲市の東北農試勤務の昆野博士」の記事が縁となって昆野さんを講師に招いた。

 奥州さんは「2年前の6月に東北農試を訪問した時にゲンゴロウなど水生昆虫物を展示してるのを見て、ここでは稲だけでなく、こういう昆虫を研究している人もいるんだと感激。そして昨年秋にケンニチの表紙を飾った赤とんぼに対して昆野さんが読者の広場を通じてそのトンボのことで書き込みをしてたのを見てあああの昆野さんだと直感。そして昨年、ケンニチに紹介された記事を読み直し、だめで元々の気持ちでメールで講演を依頼したら快く受けてくれました」と話す。

 成瀬ダム建設計画に併せ「平鹿平野地区」約1万ヘクタールを対象に国営かんがい排水事業も進められようとしているが、奥州さんは「ほとんどの農家ではもう水は十分だと言っている。その上、ますます水田のコンクリート化が進み、生物が棲息できる場が失われようとしている。21世紀の農村環境がこのままでいいのか。ダムだって最初からダム建設ありきで議論が進められてきた」と疑問を示し、「とにかくただ反対するだけでなく、私たち自信も勉強して、小さな生物のことも考えるべきだと昆野さんに来てもらうことにした」と話す。

 昨年9月から東北大学勤務となった昆野さんは東北農試勤務時代に研究したゲンゴロウやミズスマシ、ヤゴ、アメンボなどの写真をスクリーンに映しながら「田んぼのある風景こそ日本の原風景かもしれない」と「水田は心休まる日本の原風景」を強調。しかし、農薬や除草剤の使用によって日本最大の水生甲虫であるゲンゴロウやタガメなど水生昆虫が水田から消失しつつあると警鐘した。一方ではイネミズゾウムシなど稲の害虫が農薬に対する抵抗力を付け、生き残っていると懸念。また空中散布によって色素が抜けたオタマジャクシの例などを写真で示し、農薬によってカエルの姿も見られなくなったと環境への影響も懸念した。また実際に足を踏み入れた工事現場の写真を見せながら「市町村レベルでは年末から年度末にかけて意味の分からないような護岸工事が繰り返され、コンクリート化し、昆虫が棲息する場である土が消失している。自分のふるさとを破壊するような公共工事であっていいだろうか」と疑問を示した。

 昆野さんは東北農試時代(2日から機構替えし、独立行政法人「農業技術研究機構『東北農業研究センター大曲キャンパス』」)、「農薬に代わって稲の害虫を駆除する方法はないか」を課題に、稲の害虫の天敵として知られるクモやハチ、アメンボウを研究。さらには除草剤を使わなくてもいいようにと雑草を食べるコガタルリハムシ、サカマキガイなど昆虫の生態研究に打ち込んだ。東北農試時代の昆野さんの記事は下記へ。

file:///C|/NITINITI/news00/Jan/n000112.htm