村岡氏の地盤・由利郡も抑える
自民党王国の“神通力”にも陰り?(4月16日・月)
知事選から一夜明けて投票結果を見ると、政党の推薦を受けず無党派で戦った現職の寺田典城氏(60)は全県を制覇しての完全勝利だった。自民・公明・保守推薦で完璧とも言える布陣を敷いた新人の村岡兼幸氏(43)に県内9市でわずかに敗れたのはその地元・本荘市だけだが、ここでも寺田氏は1万2392票、村岡氏1万3470票、その差はわずかに1078票だった。敗れたとは言え、互角の戦いだったとも言える。横手市長を辞職して戦った前回の様相とは一変して、県北でも完勝と言う結果だった。さらに注目すべきは勝ちようがないとさえ思われた村岡氏の地盤とも言える由利郡でさえも寺田氏が2万5927票を獲得、村岡氏に1172票の差を付けたことだ。自民党王国を誇った秋田の“神通力”にも影を射したと言えそうだ。
寺田氏45万146票。村岡氏22万6506票。共産党公認の奥井淳二氏(48)2万3806票。寺田氏と村岡氏の差は22万3640票と言うダブルスコアとなった。寺田氏圧勝のムードはあった。選挙戦本番に入ってから選挙カーを追い、それぞれの候補者に対する有権者の出迎えの表情や熱気、歓迎ムードはどう見ても寺田氏に風がなびいていた。六郷町での遊説で耳を傾けていた50代の男性は「寺田さんはあんなに難儀して県政を建て直した。その寺田さんを変えなければいけないという自民党の言い分がどうしたって分からない」と怒りの声だった。湯沢市、羽後町でも「県南から初めて出た知事。自民党の人たちがどう言ったって寺田さんがいい。あんなに明るい人だもの」「あのミネソタ大学の予算が自民党の人たちによってつぶされた時の寺田さんを思うとかわいそうでならなかった。絶対、寺田さんでなければ」と言った声が婦人たちから聞かれた。
秋田市で開かれた公開討論会に取材に言った時も耳にしたのは「討論を聞いた結果は村岡さんもいいが、秋田だけが自民党推薦の候補者を選ぶようなことになっては何か恥ずかしい」というためらいだった。そう言ったのは能代市から駆けつけた婦人だった。長野、栃木、千葉の知事選で自民党候補が次々と敗れ、無党派層の流れを意識した声だった。そして「候補者の人柄は良さそうだけど、率直に言って親子で秋田のトップを独占されていいのかなという疑問がある」。そんな答えもあった。
それにしても完勝だった。秋田市で前回は約2万票の差を付けたが、今回は約5万7000票と言う大差。県南3市では前回約2万1000票差だったのが、今回は5万3578票を獲得して、村岡氏に約3万9000票の大差を付けた。中でも寺田氏の出身地大曲市では寺田氏が1万8223票だったのに対し、村岡氏は5410票という結果に終わった。村岡陣営が最も力を入れたのが大曲市と仙北郡だった。前回は自民党推薦の候補者が大曲市で3918票差と言う僅差まで迫り、仙北郡では1万5000票もの差も付けた。「ここを基盤に票を積み重ね、大票田・秋田市で決戦を」。自民党陣営はそうにらんでいた。
だが、仙北郡でも寺田氏は雪だるまが転がるような勢いで膨らみ、前回(2万6422票)とは比較にもならない5万144票とほぼ倍増。村岡氏に2万5362票の大差を付けた。衆院選秋田3区で昨年6月、父の村岡兼造氏が全国でもトップの得票である約17万票も獲得したエネルギーは知事選の前に木っ端みじんに砕けた。「国政は村岡さんでないとだめだが、知事は違う」。村岡氏と御法川英文代議士が二人三脚を組んで投票日前日の14日、自民党の宣伝カーを繰り出して大曲市を始め郡部を精力的に回っててこ入れしたが、「国と知事選は違う」の有権者の意識を変えることはできなかった。この結果が、夏の参戦にどう響くか。自民党陣営にとっては不気味な風となった。