ゆらゆらと夜空への旅立ち
県内外から1万人の観光客で賑わう(2月11日・日)
西木村上桧木内の小正月行事「紙風船上げ」が10日夜、幻想的なムードの中で行われた。同村の最も奥地に江戸時代から伝わる伝統行事で、14年前までは各集落ごとに行われていたが、会場を一カ所にしてからは次第に全国的にも人気を呼ぶ冬祭りとなって、今年も県内外から1万人もの観光客が大型バスや乗用車、鉄道を利用して駆けつけ、広さ約2ヘクタールの雪原は人ひとで埋まった。
この祭りの特徴は各集落ごとにテントを張って、コの字型に出店が設けられるのも一つだ。農家の主婦らがそれぞれの腕を活かしておでんや焼きそば、焼きとり、山菜料理、そして漬け物などを出して客を呼ぶ。訪れた人たちはそこで缶ビールや熱燗、地方色豊かなおつまみを口にしながら紙風船上げを待つ。
午後6時半。和紙を張り合わせて作った風船が次々に会場に運ばれる。折り畳まれた風船はガスバーナーで中の空気が温められ、膨らみだすと高さは6メートルから巨大なもので8メートルにもなる。膨らみだした紙風船には武者絵や美人画、あるいは漫画のキャラクターなどが描かれ、夜空の中にポッカリと浮かび上がる光景は闇をキャンバスに描かれた幻想的な絵を観る想いだ。江戸時代の科学者・平賀源内が旧秋田藩の招へいに応じ、阿仁銅山の技術指導に赴く途中、上桧木内に宿泊し、伝えたとの言い伝えもある。いわば熱気球の原理で、最後は灯油をしみ込ませた布玉を針金で固定させて点火し、そのエネルギーで紙風船は夜空に高く舞い上がる。風船が膨らむまで観光客はその裾を持ち上げ、ガスバーナーを手にした村の人たちの「回せ。回せよ」の掛け声に合わせ、風船をグルグルと回転させる。回すことで風船の中の温度を均一化させるためだ。冬祭りと言えばただ観るの観光行事が多いが、西木村の紙風船上げは観光客も自由に参加できるのが魅力だ。
郷土色豊かな料理とお酒を口にした観光客は次々と夜空に冬のホタルのような光りを灯して舞い上がる大きな空飛ぶ行灯(あんどん)を見上げ、「上がった。上がった」と大喜びだった。午後8時半ごろまでに100個以上もの紙風船が次々と上がっては星のように輝き、そして消えた。昨年は「秋田県南日々新聞」のアクセス数25万を祝おうと読者の手で「空飛ぶケンニチプロジェクト」が作られ、1個5万円もするケンニチの名前入りのオリジナルの紙風船が海外も含め全国の61人の読者から寄せられた募金19万1000円を下に3個も上げられた。思い出深い西木村の紙風船上げ行事である。
そしてこの日の夜も昨年、その「空飛ぶケンニチ」を企画して下さった「あきたNEWS」のshzukoさんとその仲間12人がその思い出の場で再び出会い、交流を楽しんだ。思い出のページは下記へ。