夫からの暴力、危険を感じたら逃げて
横手市で「家庭内暴力」で活発な意見交換(3月5日・月)
女性へのあらゆる暴力の根絶を目指そうと4日、横手市のかまくら館で「秋田県DV対策フォーラム」が開かれた。全国的にも増えている夫からの家庭内における妻への虐待や暴力。ドメスティック・バイオレンスと呼ばれる家庭内暴力は学歴や収入、職業、地位、年齢を問わず、あらゆる階層、あらゆる地域で起きていると言う。安全であるべき家庭での夫からの暴力に泣き寝入りしないよう社会全体の意識啓発を図ろうと県が主催した。
フォーラムには県南各地から地域婦人団体連絡協議会のメンバーら300人が参加。始めに寺田典城知事が「家庭こそ一番安全な場であるはずなのに総理府の調査では20人に1人の女性がDVで命の危険を感じていると言う実態が報告された。男女共同参画社会、安心して暮らせる家庭を目指すためにも県としてはDVも含めた相談活動に力を入れている。気安く相談してほしい」と呼びかけた。
「ザ・ニュースペーパー」によるコントで気持ちをほぐした後、「DV、秋田県の現状と今後の課題について」と題して婦人団体連絡協議会の阿部恭子さんをコーディネーターに県女性相談所の山王丸愛子所長、あきたDVを考える会の山下博子代表、秋田県警犯罪被害者対策室の伊藤治喜室長補佐がシンポジストとなってシンポジウムに入った。DVは夫からの暴力だけでなく、恋人、内縁関係、別れた夫や恋人、同性愛者などの間で発生するのも含まれている。暴力だけでなく「おまえはバカだ」「無能だ」とののしったり、物を壊す、おどす、家に閉じ込めて監視するといった精神的な虐待、妻に金を渡さない、必要な出費にも文句を言うなど経済的な支配、さらには女性の意志に反して性行為を強要するなど性的虐待もDVに入る。
阿部さんは「女性への暴力をなくし、住みやすい地域をつくろうとこのフォーラムの開催となった」とあいさつ。続いて山王丸所長は昨年4月から12月までに受けたDV関係での相談件数が280件、一時保護が59人と急増していることを強調。「暴力はエスカレートする。何よりも自分の身の安全を考え、危険と思ったら姿を隠すのが大事。そのための逃げ場として相談所では一時保護の場を確保しており、活用してほしい」と訴えた。山王丸さんは「ある30代の専業主婦の夫は教師で、結婚して5年ぐらいから庭に枯れ葉が落ちているだけで『掃除が行き届いてない』と怒り出し、ガラスを割ったり、殴るなど暴力を振るうようになった。子どものために我慢しようとしたが、耐えきれなくなって相談に来た」と悲惨な実例を挙げた。中には歩くのも困難なほど傷められ、「離婚したいが生活の術がないと不安がったり、夫の暴力でケガをしても病院に行くのさえ恥ずかしいと相談に来た人もいる」とDVが身近なところで発生している事を強調していた。
DVの被害を受け、逃げてきた人は30代だけでなく、40代、時には70代の人さえいるという。そうした夫婦関係は対等ではなく、バランスが崩れ、一方的に夫からの攻撃を受け、それを「自分が悪いから」と受容してしまうケースも多いと言う。中には「殴るのは『しつけだ』と思っている夫さえいる」と嘆いた。
伊藤補佐は「警察はこれまで家庭内での夫婦げんかや親子げんかには『法は家庭に入らず』を原則に介入しなかった。しかし女性に危険を与えるような暴力は看過すべきでないとして女性と子どもを守る施策に踏み切った。大事なのは被害女性の意志を踏まえ、検挙し、事件にするということであり、女性が被害者として届け出るかどうかだ」と説明していた。そして昨年1年間でDVによる検挙は17件あり、そのうち殺人が1件、殺人未遂2件、暴行1件、傷害13件と、殺人に走ってしまった深刻な例が県内でもあったことを明らかにした。
あきたDVを考える会の山下代表も「私にとってDVは別世界の事と思っていたが、教えている生徒から『父親が酒を飲むと母に暴力を振るって、パジャマ姿で家を飛び出して車で逃げたこともある』との相談を受け、DVを考えるようになった。暴力を振るわれている人たちは恥ずかしいとか思わず、勇気を持って相談すべきだ。暴力に泣いている人は一人だけでなくたくさんいるという事を知るのも大事」と訴えたていた。
県女性相談所の一時保護室は10人の定員で、親子で入居し、普段どおりの生活できるようになっているという。山王丸所長は「着の身着のまま逃げてきた人もいる。そうした人たちは体だけでなく、精神的にも深い傷を負っている。暴力は子どもに与える影響も大きい。相談所にはカウンセラーもいる。暴力を振るった人にも逃げた人にも冷却期間を与え、考えてもらうことにしている。夫が迎えに来た場合は女性の意志を尊重し、女性が会ってもいいとなったら会わせることにしているが、危険な場合は警察の会議室を借りて夫婦で話し合ってもらったこともある」と話す。またDVは子どもの時から「女らしく、男らしくと育ててしまう環境にも問題がある。転んだだけで泣いてしまうと『あなた男の子でしょう』と親は言いがちだが、性別ではなく人間としてどう育てるか」も大事ではないかと提言した。
一時保護された女性や母子が生活する期間は平均して35日ぐらいだが、半年にも及ぶ例もあると言う。山王丸所長は「24時間、相談に応じられるよう今は携帯電話を身から離さないようにしてます」とも。山下代表は「婚約期間は暴力的な態度を見せず、結婚すると妻を自分の所有物のように思って暴力を振るうようになる」と話し、「暴力は子どもを巻き添えにしてしまう」と家庭内暴力の深刻さ、悲惨さを強調していた。
県女性相談所は秋田市手形住吉町にあり、電話相談(018−835−9052)、来所相談、訪問指導、一時保護を受け付けている。