西仙北町の大沢郷公民館
都会の人たちとの交流にわら細工名人を育成(3月15日・木)
西仙北町の「林業者等健康増進施設(大沢郷公民館)」で15日、わらじ作り大会が開かれた。大沢郷地区の農家の人たち20人が参加、わらを編みながら、昔懐かしい「わらじ」作りに挑戦した。仙北地区都市農村交流研究会と県仙北総合農林事務所、町教育委員会の主催。都会の人たちと農村とを結ぶ「グリーン・ツーリズム」の体験型コースの目玉の一つに「わらじ作り」の名人を育成し、中山間地域の新たな活性化策にしようとの狙いを込めた。集まった農家の人たちはすべて60代から70代の男性。「昔は自分でわらじを編んで、学校に行ったものだ。わらじを編むなんて50年振りだべか」と和気あいあいのムードだった。
まだゴム靴がなかった戦前の履物と言えば雪のない季節は下駄、冬になるとわらで編んだ履物が主流だった。自分の足の大きさに合わせ小判型に編んだわらじ、つま先をわらで覆った防寒用の「わら靴」、雪深い道を歩く時に履いた長靴のような形の「シベ」など様々な形のわら靴があった。参加者の一人、伊藤久治さん(71)は「冬は自分で編んだわらじを履いて学校に行ったものだった。学校に着くころになるとわらじは雪でグシャグシャに濡れ、教室のストーブで乾燥させ、家に帰るとこたつに置いて乾かして履いたものだった。せいぜい1週間も履くとわらがだめになるので毎日のように自分の手で編んだものだった」と懐かしむ。50数年振りの挑戦と言うが手のひらでわらを編み、足の親指に2本のなわを通し、わらじに仕上げていく作業は手慣れたもの。30分もすると一組のわらじが出来上がった。
県仙北総合農林事務所と都市農村交流研究会では農家の人たちにこのわら細工の伝統技術の継承や担い手になってもらい、都会の人たちに田舎体験をしてもらう際の一つのメニューにしたいと考えている。都会の子どもたちは最近、修学旅行で秋田の農業を体験したいと訪れる機会が多くなっているが、田植えや稲刈りの体験はその季節にならないとやれないが、わらじ作りなら季節を選ばず楽しんでもらえるからだ。
わらじ作り。素朴な作業だが、一筋縄では作れない。農業の原点でもあるわらに触れ、わらの香りを通し、わら靴という民芸品を都会の人たちに作ってもらう体験は田舎ならではの趣向と言えそうだ。農林事務所の藤田公仁主任は「都会の人たちに単なる田舎の宿を提供するだけでなく、コメ作り農家への理解を深めてもらい、自由化で年々経営が厳しくなっている農家の人たちのために日本の農業を守ってもらう応援団になってもらいたいのです」と話す。
わらじ作り大会を終えた後は田沢湖町のわらび座の牧田正臣さんを講師に「体験インストラクター」の講演があった。わらび座ではこれまで都会の中学生や高校生の修学旅行生を受け入れ、地元の農家の人たちの協力をもらって農業体験やわら細工体験を楽しんでもらっている。牧田さんは「都会の子たちと接っして新しい孫ができたと喜んでいる人たちがたくさんいる。ぜひ体験インストラクターとして登録してほしい」と呼びかけ、都会の子どもたちとどう気持ちよく接してもらうかを講話。主催者ではこれからはわらじ作りだけでなく、山菜やキノコ採りの名人、伝統芸能伝承者などを育て、グリーン・ツーリズムを通じて田舎の活性化を図りたいとしている。