角館町の町長選スタート

現職と新人2人の三つどもえ戦に

新緑の武家屋敷通りに響く「お願い」の声(5月15日・火)

 任期満了(6月16日)に伴う角館町の町長選が15日告示され、現職で4選を目指す高橋雄七氏(62)=横町72、無所属=と新人で会社役員の太田芳文氏(53)=田町上丁18、同=、僧りょの平元駿作氏(54)=西勝楽町63、同=の3人が立候補を届け出た。三つどもえの選挙戦は高橋氏が初当選した1989年以来12年ぶり。20日が投票日。午前7時から午後8時まで町内16カ所の投票所で投票が行われ、同8時50分から役場隣の角館公民館旧館で即日開票される。

 
高橋雄七候補
太田芳文候補
平元駿作候補
 新緑がまばゆく大勢の観光客が行き交う武家屋敷通りに鳴り響く3台の選挙カー。修学旅行の中学生や観光客が選挙カーが来る度に手を振って応える。外人観光客は不思議そうな顔で見送る。新緑深まる歴史の町・角館町は5日間の熱い戦いが展開されている。

 高橋候補は89年6月の町長選で三つどもえの選挙戦を戦い抜いて初当選を飾った。しかし2期目は元議長との一騎討ち、3期目は共産党の新人候補との一騎討ち、そして今回は再び三つどもえの戦いと常に選挙の洗礼を受けてきた。昨年12月の定例議会で「これまでの12年間、町民が誇りに思える町にしたいと町政を担ってきた。歴史の中継ランナーとして、次の時代にバトンを渡せるよう、もう一度頑張る覚悟だ」と出馬表明。3月24日に後援会事務所を開いて準備を進めてきた。

 高橋候補はこの日午前8時半から事務所で必勝祈願の神事を行い、同9時15分から町役場前で第一声のマイクを握った。激励に駆けつけた郡内の町村長らが見守り、町役場職員や支持者ら300人近くが沿道に立った。落ち着いたと言うよりむしろ余裕さえ見せてマイクを握った高橋氏。「歴史と文化の町として多くの方がこの町に心の安らぎを求めて訪れるようになった。年間200万人を超える観光客がこの町に来ている。これまでは下りの新幹線に乗ってこの町に来て下さるお客さんを待つ姿勢だったが、これからは上りの新幹線を利用して首都圏に乗り込み、この町を、北浦のブランドを売り込む時代だ。出ていくことで町民の所得も上がる。歴史を逆戻りさせてはならない。私は歴史を前に進め、次の世代に引き継ぐのが役目だと町政を担ってきた。その判断がこの選挙戦で求められている」と訴えた。

 温泉施設「花葉館」の新築、3つの小学校の改築、そしてIT(情報技術)を先取りした総合情報センターの建設など箱ものの整備も手がけ、武家屋敷通りの道路も整備し、町のイメージも一新した。しかし情報センターの建設を巡っては反対の声を抑えて強行したと独走への批判もある。そうしたくすぶりが太田氏の擁立につながり、町議20人のうち農村部の議員ら11人が現職の応援に付いたとはいえ、今度の選挙戦を予測の付け難いものとした。

 一方の太田候補は3月8日に出馬表明。商店街の中心部に後援会事務所を設け、新人ながらも出身校の角館高同期生らの支援や町議会の議長、副議長ら町議7人の支持を受け、町観光協会、角館工芸協同組合など主要団体の推薦も受けるなど強力な布陣を敷いた。記者会見で「高橋町長の12年間にわたる長期間の町政の結果、町民の意見が正しく反映されない政策や不公正・不平等・不透明な町政が目立ち、このままでは町が衰退していく」と厳しい口調で高橋町政を批判。町政の流れを変えようとのイメージで選挙戦に臨もうとしている。

 午前8時から事務所で必勝祈願の神事をやった後、近くの立町交差点に移動して第一声のマイクを握った。支持する町議や運動員、町民ら200人ほどを前に「町民による町民のための町政を行いたいと今度の町長選に出た。町民の代表である議会との連携を深め、町民の声が還元される町政、分かりやすくクリーンな町政を目指したい」と声を振り絞った。そして町長交際費の基準の見直し、事業経費の公開、102億円もあるという町の借金を減らすためにも「事業の見直しと財源の効率化を図り、財政の健全化を進めたい」と訴え、「今度の選挙戦で必ず公約をなし遂げ、高橋町長の4選を阻止する」と激しく敵愾(がい)心を燃やした。選挙は大票田の町部で優勢に戦えば勝利の目が出てくると初日から商店街を歩いてあいさつ回りをするなど町中心での運動に力を入れた。

 リーフレットでは「このままでいいのですか?」と町民に疑問を投げかけ、運動員らは「チェンジ」の文字が印刷された黄色い小旗を手に太田氏への支持を呼びかけ、町政の流れを変えようとするイメージの浸透に力を入れている。しかし、町教育委員長を努め、昨年12月議会で再任されながら翌月には町長選出馬のために辞職すると言った行動に「身勝手」と不快感を表す町議も多く、その反発が懸念される。

 「もう30年も前から町長選に出ろと10回も言われてきた。それを見送ってきたが、 今の状態では余りにも心もとないので出る事にした」。3月8日、学法寺の庫裏で淡々とした表情で出馬の決意を述べた平元氏。選挙戦に出るのは98年の参院選秋田選挙区で新社会党が候補者を公募してそれに応じての出馬以来2度目。2人の町議の応援を得て、「楽しくくらせる角館町をめざす会」を結成、▽助役、収入役は公募▽国保税の引き下げ▽水道料は月3立方メートルまでは無料▽緊急苦情処理係の設置▽町所有の西宮家・花葉館の株を全町民に均等配分−などユニークな公約を次々と掲げ、町内を回ってきた。

 この日の出陣式も午前9時からお寺の本堂で行うと言ったお坊さんらしい発想。座布団に座った80人ほどの支援者を前にいつもの僧衣姿で立った平元氏は「本来なら法華経を通して世界の平和、人類の幸福、個人の幸せを広めるのが私の務めであるが、こういう事態になった」とお説教を述べるような調子で淡々と語り始めた。しかし、言葉には熱気がこもる。「 102億円を超える町の借金は町民一人当たりにすると70万円の借金を抱えた事になる。このため町民一人当たりの税金は、周辺町村よりも5割増しの高さとなって跳ね返っている。水道料金だって秋田市の4倍、周辺町村の2?3倍の高さだ」と数字を並べる。そして「大曲仙北14市町村で都市計画税があるのはこの町だけだ。これを廃止したい」と訴え「町役場の幹部、助役、教育長、それに町審議委員会もは広く世に人材を求め、広報で公募したい」など直接民主制の導入を強調した。

 15日現在の有権者数は男5647人、女6580人の1万2227人。

 高橋雄七(たかはし・ゆうしち)氏=1939年2月8日生まれ。東北大学文学部卒。69年から74年まで角館図書館勤務。76年から町議を連続3期。89年町長に初当選し、現在3期目。県町村会長。

 太田芳文(おおた・よしぶみ)氏=47年8月24日生まれ。東京農工大大学院農学研究科卒。王子緑化入社、エムプレス社長、ホテル会社会長。99年3月から今年1月まで町教育委員長。町商工会理事。

 平元駿作(ひらもと・しゅんさく)氏=47年1月21日生まれ。立正大文学部卒。98年から日蓮宗・学法寺住職。学習塾「新しい寺子屋」主宰。県宗教者協議会事務局長。