新酒の初しぼり

南外村の出羽鶴酒造

本格的な酒造りスタート(11月16日・金)

 酒袋への詰め込み作業初冬の冷え込みを待って、今年も酒造りが始まった。南外村字悪戸野の「出羽鶴酒造株式会社(伊藤辰郎社長)」では16日朝、この秋に収穫した新米「あきたこまち」を使って仕込んだ新酒の「初しぼり」を行うと同時に新しい酒ができあがったのを知らせる「杉玉(酒林)」を玄関先につり下げ、酒造りシーズン到来を告げた。酒蔵の最高責任者でもある杜氏の佐藤賢孔さん(51)=同村及位=は蔵で絞りたての酒を茶わんで受け止め、「毎年のことだが、この初しぼりの時ほど緊張することはない」と言いながら、香りを確かめ、グッとひとくち口にすると「ウン。いい出来だ」と顔をほこらばした。絞りたての酒は季節限定品の本醸造原酒「出羽鶴」の「新米初しぼり」として22日から、同社の販売ルートに乗って全国で発売される。

 春から秋まで人の姿がなかった蔵に杜氏をはじめ頭(かしら)や麹(こうじ)師、もと師(酒母)、精米師、蒸し番、槽場(ふなば)など15人の蔵人が蔵入りしたのは10月15日だった。酒米として地元から仕入れた「あきたこまち」3000キロを搬入し、22日には米研ぎを行い、米の蒸し作業やこうじ揉み、酒母造りなどの作業を経て、容量5000リットルもの巨大なタンクの中でゆっくりと発酵させ、酒の母胎となる「醪(もろみ)」を誕生させた。

 この発酵の段階で大事なのはアルコールを発酵させる酵母にストレスを与えることだと言う。酵母の栄養となる糖分を少なくし、さらにタンクの温度を下げ、厳しい環境に置くことで「酵母に冷や汗をかかせるのがコツ」と技師長の佐渡高智さん(39)。酒母が冷や汗をかくと、酒独特の味の深みや甘さが生れると言う。

 生れたばかりの酒を試飲する佐藤さんタンクの中のもろみはこうじの粒が混じってまだ白く濁っているが、これを布製の酒袋に詰め、絞り出すと原酒が生れる。もろみが眠るタンクからパイプラインで運ばれた酒を2人の蔵人が絞り場で次々と酒袋で受け止め、槽(ふね)と呼ばれる容器の中に横積みする。2層3層と袋が重なるとその重みで槽の下の細い管から酒が流れ出す。

 静まり返った絞り場にチョロチョロと流れ出す酒の音だけが静かに響く。甘い香りが流れる。それを見つめる杜氏の佐藤さん、技師長の佐渡さんの目は厳しい。ステンレスの容器に流れ落ちるのをジッと見つめる。今年の米は「品質も良く、こうじもいいものが出来上がった」と二人。だが、「試飲してみるまでは心配だ」と話した。やがて茶わんで生まれたての酒を受け止め、グイッと試飲。「うん。いい出来だ」。二人は顔をほころばせ、ホッとした表情を見せた。初絞りの酒は「やや荒っぽいが、味の切れが良く、爽やかな飲み口が楽しめる」と言う。「これで今年もお客さんに喜んでもらえる」。二人は酒の出来ばえに自信を深め、「蔵から出したばかりの酒をそのままお客さんに届けたい」とその醍醐味を語った。

 佐藤さんは新しい酒が出来上がったのを知らせるための杉玉を手にハシゴを登った。玄関先につり下げるためだ。杉の葉を束ね、バスケットボール大の大きさに丸く仕上げたもの。酒林とも呼ばれ、昔はその真新しい緑の杉玉を見ては「新酒」を買い求めに多くの人が来たものだと言う。杉林のつり下げを終えることで、雪の中で冷やされ、雪の中で育てられる酒蔵の本格的な酒造りが来年の4月いっぱいまで休みなく続く。

 出羽鶴新米「初しぼり」はアルコール度数18℃。一升ビン入りで2200円、720ミリリットル入りで1000円、300ミリリットル入りで430円の値段で店頭販売される。
玄関につり下げられた酒林