大曲の花火、雨に咲く

「世界一の花火大会」と審査委員長、激賞

人出は58万人と減少、総理大臣賞は「北日本花火興業」(8月25日・日)

 大曲市が全国に誇る伝統行事「第76回全国花火競技大会」、いわゆる「大曲の花火」は24日夕、雄物川河川敷を会場に開催され、全国から選ばれた30業者(1業者辞退)の花火師が午後5時からの「昼花火」を含めた「夜花火」の部までに大・小合わせて約1万3000発の花火を打ち上げ、〃音と光〃の競演を繰り広げた。あいにくと朝からの雨で観光客の出足も鈍り、大会実行委員会の発表では58万人の人出(昨年64万人)と減少した。しかし、翌朝午前10時から大曲エンパイヤホテルで行われた表彰式で審査委員長の田村昌三東大大学院教授は「最高の技術を持ったすばらしい花火。内容的にも世界一の花火大会だった」と激賞した。注目の最優秀賞は本県の「株式会社北日本花火興業」に輝き、内閣総理大臣賞が贈られた。

  残酷な雨だった。朝に激しく雨が大地を叩いた。「ああ。雨かー」。「何もこんな日に降らなくても」。花火を心待ちにしていた市民、前夜から泊まり込みで見学に来ていた県外からの観光客からはこんな「うらみ節」さえ聞かれた。空は一面に鉛色の雲に覆われたまま、雨は断続的に降り続いた。それでも県外からの観光バスや車が続々と大曲市入りした。しかし、例年とは交通量が絶対的に違い、同市内小友から大曲西根の国道105号線はスムーズな流れ。

 敷物やクーラーボックスを手にした観光客が会場を目指す。大型バスから吐き出された県外からの客も群れをなして会場を目指した。その後となってこちらも大曲西根側から大曲橋(通称・金谷橋)を渡った。昨年から堤防は横断する以外は通行禁止となり、金谷橋は動きが取れないほどの混雑となったが、今年は市街地から入る客は左折して金谷橋下を通らせて桟敷席へ、そして大曲西根側からの客は橋を渡って右折させ、堤防に取り付けられた斜めの通路を下りて会場入りすると二つに分散させた。その効果もあって流れは比較的スムーズ。警備陣や会場整理の面での工夫が随所に見られた。

 しかし、桟敷席通路に入ってから女性観光客から悲鳴が挙がった。「なに、これ!。ひどい。靴が台無し」。「まるで泥田を歩いているようなもの。こんな状態でお金を取るというの」と苦情が次々に上がった。ビニール袋を足に巻いて長靴代わりにする光景も見られたが、ヘドロ状のぬかる道にビニール袋は脱げ、惨憺たる状態。「とても歩けない。来るんじゃなかった」とべそをかいて後悔する女性もいた。会場の事情を知らずに普通の革靴をはいてきたとはいえ、その姿は気の毒なほどだった。大会の今後の課題にすべきではないかとも思った。

 昼花火が始まってからも雨。時折、稲光も走る最悪の状態。このため満席となっているはずの桟敷席は空白も見られた。しかし、午後6時50分。500メートルのナイアガラの滝に点火され、大スターマインが始まるとそれまでの不満も雲散霧消。桟敷席を埋めた観客からは「ウォー」とどよめきが流れ、「いいぞー」と拍手と応援の声がこだました。雨も夜花火のころには上がった。背景の西山に響く「ドーン。バリバリバリ」といった花火の大音響。赤や青、金色、黄色。光と音の競演は何もかも忘れさせ、見学客はただあぜんとして空を見上げた。

 どぎもを抜くような割物の伝統の美。創造花火の技とアイディアの競い合い。どの花火にも「大曲なら」ではの競演の冴(さ)えがあった。そしてクライマックスは午後8時40分に打ち上げられた大会提供花火の「暁(あかつき)」。三味線、尺八、和太鼓をBGに「元気を出せ、日本」のメッセージを込め、幅450メートルの空間を彩った1400発、5分間の音と光のページェントは「すごい。すごい」と観客をうならせ、大満足させていた。

 桟敷と桟敷の間の通路。泥のような道を歩かされ不平不満をこぼした観光客だったが、フィナーレでは懐中電灯やペンライトを振って向かい側の花火師と「別れの交流」も楽しみ、見送る大会関係者に「ありがとう。良かったよ」と感謝の声もあった。

 その観光客をうならせた花火師たちの技を評価する「大曲の花火」表彰式は25日午前10時から大曲エンパイヤホテルで行われた。審査委員長を務めた田村東大大学院教授は「雨の天候の中で、事故もなく、最高の技術を持ったすばらしい花火を見せてもらった」と高く評価。そして「花の広がり、彩色、斬新さなどが審査基準となるが、危険を感じさせるような炸裂はどんなすばらしい花火でも評価できない」と安全性の追求こそ花火技術に求められる最高のものと訴えた。そして昼花火は「色彩、形が高い評価となった」と語り、夜花火の「10号割物」の部は「花の開き、色彩のすばらしさ」を評価し、「創造花火」は「リズム感があり、機敏性に富み、すべてが従来にない高いレベルの技術への挑戦で明日につなぐ意欲があった」とほめた。

 内閣総理大臣賞を受賞する北日本花火興業審査の結果、成績は次の通り。

 【最優秀賞】内閣総理大臣賞=株式会社北日本花火興業(秋田県)

 【創造花火の部】▽優勝(経済産業大臣賞・大会会長賞など)=株式会社北日本花火興行「ドラネコ ロックンロール」▽準優勝=株式会社磯谷煙火店(愛知県)▽優秀賞=株式会社イケブン(静岡県)、菊屋小幡花火店(群馬県)、株式会社丸玉屋小勝煙火店(東京都)▽入賞=有限会社篠原煙火店(長野県)、株式会社芳賀火工(宮城県)、三遠煙火株式会社(静岡県)、株式会社小松煙火工業(秋田県)、株式会社ホソヤエンタープライズ(東京都)、株式会社紅屋青木煙火店(長野県)、有限会社太陽堂田村煙火店(同)、信州煙火工業株式会社(同)、株式会社和火屋(秋田県)、株式会社山崎煙火製造所(茨城県)

 【10号割物の部】▽優勝(中小企業庁長官賞など)=有限会社菊屋小幡煙火店(群馬県)「昇曲導付四重芯変化菊」「昇曲導付三重芯点滅菊」▽準優勝=株式会社丸玉屋小勝煙火店(東京都)▽優秀賞=株式会社山崎煙火製造所(茨城県)、有限会社篠原煙火店(長野県)、有限会社太陽堂田村煙火店(同)▽入賞=株式会社北日本花火興行(秋田県)、根岸火工有限会社(埼玉県)、信州煙火工業株式会社(長野県)、株式会社芳賀火工(宮城県)、株式会社紅屋青木煙火店(長野県)

 【昼花火の部】▽優勝(秋田県知事賞など)=株式会社丸玉屋小勝煙火店(東京都)「夕陽彩花」▽準優勝=株式会社小口煙火(長野県)▽優秀賞=株式会社和火屋(秋田県)、堀米煙火店(茨城県)▽入賞=有限会社篠原煙火店(長野県)、有限会社菊屋小幡煙火店(群馬県)、株式会社北日本花火興行(秋田県)

 【特別賞】▽文部科学大臣奨励賞=株式会社磯谷煙火店(愛知県)▽社団法人日本煙火協会会長賞=有限会社篠原煙火店(長野県)