殴られ、斬られ、殺されて38年経ちました
草薙良一さん、故郷で家族と老いをテーマの人情劇を初公演へ(6月4日・火)
角館町出身で悪役スターとして舞台、映画、テレビで活躍している草薙良一さんの舞台劇「ほいさかさっさ ほいっさ おばこ旅館 花吹雪 んだ。んだ」が29日と30日、同町の樺細工伝承館で公演される。「裕次郎に憧れて役者になったはいいけれど、ついた役は殴られ、斬られ、殺されて、38年経ちました」。草薙さんが役者生活を語る時の決まり文句だ。4日、角館町で草薙さんと会った。
草薙さんは角館町岩瀬浜町生まれ。中学まで角館町で過ごし、大曲市の理容学校を卒業後、東京へ出て理容師目指して修業。理容師の免許を取得した19歳の時に「役者になろう」と決意。俳優養成の専門校「舞台芸術学院」に入学し、3年間、役者のタマゴとして芸を学んだ。22歳の時に俳優小劇場に入団。そして2年後にプロダクション「現代製作社」に移って22年間の役者生活となった。「ここで役者としての自分自身の本体を磨いた」と草薙さん。しかし、与えられた役は映画でもテレビでも、舞台でも全部、悪役だったと言う。
大スター・石原裕次郎が健在だったころ、テレビの人気ドラマだった「西部警察」「大都会」にも出演。裕次郎を殴る、蹴るの悪役に抜擢された。しかし、裕次郎は草薙さんにとって「偉大過ぎて、雲の上の人。役の上とは言え、とても殴れなかった」と苦笑い。その時、裕次郎は草薙さんに「遊びのつもりで殴ってこい。おれの顔に当たってもいいからやれ」と強い口調で命じたという。「配慮があって、優しくて、大きい人だった。体が大きいだけでなく、存在感が偉大だった。おれにとって裕次郎は『光り』そのものです」。草薙さんは俳優・裕次郎の思い出を語る時、遠くを眺めるような目をした。
やせ形で一見、取っつきにくい、いかにも悪役らしい厳しい目を時折見せるが、笑うと人懐っこい笑顔で優しい目にしわが寄る。「悪役?。芝居が好きですから何とも思わなかった。悪役がいなければ芝居も人生も成り立たない」と草薙さんは話す。
6年前に自分の舞台をやりたいと思って独立。さいたま市盆栽町にオフィス「なぎ」を構え、東京・銀座の「銀座みゆき劇場」で今年3月15日から24日まで同名の舞台を公演、秋田を舞台にした人情劇は笑いと涙で観客を魅了し、評判を呼んだ。その話を聞いた地元の同級生で写真家の千葉克介さんらが「故郷でもやれよ」と声を掛けたのが切っ掛けとなって公演が決まった。56歳になって初の故郷公演の実現だ。
両親は亡くなったが、姉夫婦が実家で暮らしており、毎年、角館町の祭りには帰郷している。帰ることによって故郷から元気をもらっていると草薙さん。「俺だ、俺だ。俺がいなきゃドラマにならねぇ。角館育ち、ご存知、悪役スター見参」。草薙さんの押しのいいうたい文句だ。今回の故郷公演では「観ないと損してしまいますよ。人間って、いいもんだ。そんな舞台なんです」とアピールする。家族と老いをテーマにした人情ドラマだ。 31日から始まった写真家・千葉さんの野外大写真展「北の彩り 秋田、青森、岩手」の応援で帰郷した。チケットはペア券5000円、ひとり券3000円。角館町役場商工観光課、樺細工伝承館、広域交流センター、地域活性化センター「かつらぎ」、そしてポスターの張ってある店で販売中。公演は29日は午後6時半から。30日は午後1時半と午後6時半の2回。舞台には草薙さんら9人の俳優が登場する。1時間40分の公演。
主催は草薙良一かくのだて友の会(熊谷新吉会長)。問い合わせは090−2843−3162、熊谷さんへ。