元助役と前副議長の一騎討ちへ
政争の町、自民支持層にねじれ現象も(5月14日・火)
任期満了(6月8日)に伴う仙北町の町長選は21日告示、26日投票と間近に迫ってきた。今のところ立候補を表明しているのは元助役の伊藤稔氏(60)=同町横堀字表木(たわらぎ)=と前副議長の本間輝男氏(51)=同町掘見内字福島=の二人。2期連続当選した小西省吾町長(72)は今期限りで引退を表明している。このため伊藤、本間両新人による一騎討ちの公算が大きい。かつては“政争の町”と比喩(ひゆ)された同町。伊藤氏は前回の小西氏との戦いでわずか146票の僅差で涙を飲んだ。「今度こそ」の思いを込めてのチャレンジ。一方、それを阻止しようと副議長職(4月4日議員を辞職)をなげうって出馬する本間氏は、小西町長のバックアップを受けての出馬。伊藤氏を自民党の御法川英文代議士が応援すれば、本間氏は自民党の原盛一県議が後押しするという保守系に“ねじれ現象”が生まれるなど、今度も政争の町の面目は躍如とも言える構図だ。
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亡くなった大山喜八郎元町長時代の1991年7月から94年5月まで、町議から抜擢されて助役を務めた伊藤氏は“剛腕”とも“ワンマン”とも評された大山氏の薫陶を受けた。その大山氏が2期連続で無投票当選を飾り、通算5期目の町長を目指した94年5月の改選時に立ちふさがったのが小西町長だった。小西氏3217票、大山氏2891票と326票差の接戦となったものの小西氏が大山氏の長期政権に終焉の幕を引かせた。
それから大山氏は病死し、伊藤氏が「場当たり的で、優柔不断な小西さんの町政では町の発展はない」として98年の町長選に初出馬。大山氏雪辱の願いも込めての戦いだったが、小西氏3100票、伊藤氏2954票、その差わずか146票の僅差に終わった。
今度の出馬でも伊藤氏は「小西町長は文化面では力を入れたが、交通網や生活環境の整備こそ行政が率先してやるべきなのに後回しにしてしまった。温泉改築でも美しい夕日を楽しめる環境を活かさず、温泉施設を2年近く休ませ、改築するなど唐突にやってしまう。行政はオープンであるべきなのに手法が違う」と強調する。これに対して本間氏は「小西さんは厳しい町財政を健全な方向へと建て直した。国指定史跡『払田柵』を中心とした郷土学習などソフト面に力を入れ、町民の要望が強かった温泉施設の改築など時代に即応した事業も展開してきた。政争の町とも言われた町民の融和にも努力した。その流れを継続したい」と小西町政の流れの継続を訴え、その後援会組織を受け継いだ。
同町の町長選はかつては“四・八戦争”とも言われた。元町長の伊藤喜四郎氏(故人)と大山氏が健在で、両氏が激しく一騎討ちを繰り返した71年から82年までの11年間のことだ。その間に事件もあって、大山氏が任期途中で町長を辞任すると言うアクシデントもあったが、いずれ4回の激突は共に二勝二敗の結果に終わっている。しかし、最後には大山氏が86年5月から94年5月までの8年間、2期連続で無投票当選を飾ると言う力を見せた。
かつての四・八戦争と言われた争いは地域別の争いでもあった。大山氏は旧高梨村を地盤に、伊藤氏は旧横堀村を地盤に出馬したからだ。ところが今回はその様相が違って、どちらも横堀地区が地盤。敢えて言えば、伊藤氏はかつての大山支持者の流れを、一方の本間氏は大山氏に反旗を翻した小西氏の支持者をバックにしての戦いと言えよう。
「活力(げんき)ある仙北(まち)を創る」と訴える伊藤氏は今回こそ最後の挑戦と必死だ。推薦団体は150を超し、公明党も推薦を決定している。すでに町内を3巡、座談会も40回50カ所以上でこなしている。11日午後7時半から町ふれあい文化センターで開いた「総決起大会」は駆けつけた支持者全員に署名を求めたが、その結果、集まった町民は1258人だった。その会場で御法川英文代議士が伊藤氏の当選に向かって檄を飛ばし、応援を約束した。
一方の本間氏は4月11日にテレビ番組「笑点」でお馴染みの落語家・三遊亭楽太郎を呼んで、同文化センターで約800人の町民を集め、文化講演セミナーを開くなど選挙戦を前に話題性を提供した。町内も4巡、座談会も45カ所以上で開いた。19日に同じ会場で開く総決起大会でも「1000人以上は来てもらいたい」と意気込む。その総決起大会では原県議が応援の演説をすることになっている。「若さで拓く町づくり」をキャッチフレーズに支持を呼びかける。
今度の町長選に向けて両氏の主張に大きな違いはない。どちらもいの一番に強調するのは南地区(高梨)の飲み水の緊急確保だ。簡易水道が敷かれているが、水が涸れ、濁り水となっている。「安全で安心して飲める水源地を緊急に確保しなければならない」と訴える。そして福祉行政の充実や働く場の確保、町の振興、発展につながる道路網の整備などを強調する。
しかし、市町村合併に関しての考えは微妙に違う。伊藤氏は「当選したら大曲市の合併に向けた任意協議会の呼びかけには参加するつもりだ」と積極的な姿勢を示し、「体育館の改築、サッカー場の誘致など、この町の立地条件の良さを訴え、合併に向けて仙北町は何をやってもらえるのか合併をプラスの方向に持っていきたい」と話す。一方の本間氏は「町長選で勝っても、結論を出すのは難しい。農協が合併して良かったと思っている町民は一人もいない。結論を出すのは町民であり、時間をかけて話し合いたい」と慎重だ。
本間氏の町議辞任で議会は17人となったが、その議会も議長をはじめ共産党、公明党も含めた10人の町議が伊藤氏を支持し、7人は本間派と分裂した。しかも本間氏辞任で行われる町議補選には二人が立候補を表明しているが、こちらも一人は伊藤氏支持、もう一人は本間氏支持と真っ向から対立した前哨戦を展開している。町議補選の熱い戦いが、町長選での票の掘り起こしにつながると相乗効果を期待する。
「体制的には必勝の陣営が整った。しかし、最後まで読みきれないのがこの町の選挙。最後まで気を引き締めたい」と伊藤陣営。「相手は一度、町長選を経験し、3000票という基礎票を持っている。それに比べたら知名度も低く、まさに横綱・貴乃花に挑むようなもの。しかし、勝っても負けても2?300の差。厳しい戦いとなる」と本間氏。
どちらも横堀地区を地盤としているだけに勝敗の行方は高梨地区と見る。同町の有権者は3月1日現在で男3124人、女3509人の合わせて6633人。特に大曲市と隣接する戸地谷川前地区はここ数年、新興住宅街が広がり、浮動票が多くなっている。その票の行方も気になるところだ。