ダチョウのいる老人ホーム
子どもたちとの触れ合い、いやしなど明るい話題提供(5月31日・金)
社会福祉法人県南ふくし会(石川勝三理事長)が運営する西木村下桧木内の特別養護老人ホーム「清流苑」のミニ動物園がオープンして一カ月が過ぎた。ダチョウ3羽とウサギやニワトリ、ヤギを飼っているのだが、牧野忠彰施設長は「毎日のように近くの保育園児が訪れ、動物と触れ合い、お年寄りとの交流もあって、苑内のムードが明るくなった」とそのいやし効果を喜ぶ。今では県南唯一の動物園と県内各地から親子連れで見学者が訪れるほどという。老人ホームにミニ動物園があるのは全国でも珍しい。
同苑でダチョウを飼うきっかけとなったのはケアハウスに入所している高橋哲四郎さん(85)の提案から。高橋さんは角館町出身。大阪府職員時代、社会福祉を担当。定年を前に退職して愛知県で焼き鳥店を経営して成功した。そして現役を引退し、終(つい)の住かとして同苑のケアハウスを選んだ。
その高橋さんから「ダチョウが今、注目されている。ダチョウはしぐさの滑稽さもあって眺めているだけで楽しい動物だし、心を和ませてくれる。責任を持って世話するので苑内で飼いたい」との希望が出された。高橋さんはダチョウに関する資料を取り寄せ「どんな環境にも順応するし、鳴かない。それに臭わないし、性格も穏やか」とダチョウの特徴を語って、牧野さんら職員を説得。同じようにケアハウスで生活している同村出身の秋元寿徹さん(81)からも「何もしないでいては退屈。動物の世話をさせてもらえないか」との申し出があった。
こうしたことから牧野さんは石川理事長に相談。石川さんもダチョウのいやし効果の話を聞いて「面白いじゃないか。苑で生活している人たちの生きがいにもなりそうだ」とゴーサインを出した。そして社会福祉・医療事業団に「高齢者・障害者福祉基金助成金」を申請。その結果「人(高齢者・子ども)と動物がふれあう笑顔の広場づくり事業」として200万円が助成された。
ミニ動物園は駐車場の一角に造られ、広さは約300平方メートル。建物は畜舎とフェンスからなり、ダチョウ3羽とジャンボウサギとミニウサギ合わせて12羽、ヤギ1頭、比内地鶏14羽を取り寄せ、先月25日に「ひのきない動物ランド」としてオープンさせた。
ダチョウは青森県十和田市の農事組合法人「ヘライファーム」からオス1羽とメス2羽を取り寄せた。オスは「ダッキー」、メスは「クリン」「メリー」と地元の保育園児に名付けられ、今では毎日のように子どもたちが見学に訪れている。
ダチョウの世話をしている高橋さんは「子どもたちとも触れ合え、多くの人も見学に来るので毎日が楽しい」と喜び、ダチョウの研究にも余念がない。「ダチョウの体重は100キロ。産むタマゴの重さは1.4キロから1.5キロ。タマゴ焼きにしたら一個で25人から30人分になる。冬の寒さ?。心配ない。ダチョウは零下30度だって耐えられるさ」とダチョウに関してなら百科事典のような知識の豊富さ。
今ではエサを与える高橋さんを肉親のように長い首を振って甘えるダチョウ。「身を寄せて来るほどだが、100キロを超える体でこちらにすり寄られてはたまったもんじゃない」と笑う。牧野施設長は「当初は心配もあったが、今では秋田市などからも見学に来る人がいる。痴呆症状で徘徊するお年寄りも前はすぐ前の国道にでて心配していたが、動物が来てからは、真っ直ぐに動物ランドにいってダチョウを眺めている。そしてニッコリして帰ってきます。動物にいやされてるんですね」と目を細める。
2羽のメスのダチョウは1週間に8個もタマゴを産み、販売元でも驚くほど。高橋さんは配合飼料のほかに野菜をたっぷり与えているが「その野菜が良かったのでは」とほほえむ。タマゴは学校給食センターの食材としても提供されている。老人ホームにオープンしたミニ動物園は人と人との交流の輪となって様々な明るい話題を提供しているようだ。