大曲市で生きがいを考える講演会
秋田市のホスピス医、末期がんの患者と家族を支える医療を語る(11月5日・火)
大曲市で2日、秋田市の外旭川病院でホスピス長を勤める嘉藤茂医師を講師にした生きがいを考える講演会「あなたらしさを支える医療〜外旭川病院ホスピスでの試み〜」があった。ToBe〜共に生きる会(横井伸夫代表)の主催。広域交流センターを会場とした講演会に集まった聴衆は40人足らずだったが、がんの末期を迎えた患者を支える外旭川病院のホスピス医療活動に強い関心を示していた。
講師の嘉藤医師は仙北町出身。横手高校を経て1982年、横浜市大医学部を卒業。83年から91にかけて秋田大学第一外科で臨床研修の後、肝・胆道を主とした消化器外科全般を研修した。
講演で嘉藤医師は外科医としてがん患者を手術しながらも、再発し戻ってくる患者さんに接して、正式な病名も告げられず、がんに苦しみながら亡くなっていく姿をみて悩んだのがきっかけとなって再び秋田大学精神科に移籍、がん末期における精神的ケアをよび精神科全般を研修したなどとホスピス医となった経緯を語った。
94年から97年まで埼玉県上尾市の上尾甦生病院ホスピスにホスピス長として勤務、97年から2000年まで県立リハビリテーション精神医療センターに勤務し、痴呆病棟を担当。そして同年4月から外旭川病院ホスピス長となった。
講演では多くのスライド写真を上映しながら、外旭川病院のホスピス病棟を紹介。同病院のベッド数241床のうちホスピス病棟は13床。そこには家族室や瞑想室、患者と医師や看護師、ボランティアの人たちと触れ合えるラウンジがあり、個室の病室のげた箱の上には患者が好きな縫いぐるみを飾ったり、廊下にも花の絵を飾るなど病院らしくない病棟をスライドで見せた。
また病気が重くなって歩けなくなった患者のためのシャワーバス、家族も一緒に泊まれる和室、そして病棟で行われている七夕祭りやクリスマス会などの行事も紹介し、お酒の好きな患者はお酒を楽しんでいることなど自由な雰囲気でその人らしい生活を送っている姿などを報告した。中には入院した時は言葉も通じないほどの末期で痴呆症の患者が、点滴の方法を変えたら家族とのコミュニケーションを取れるほど正常に戻ったケースなどの紹介もあった。
嘉藤医師はホスピス病棟は「がんの苦痛によって失われたその人らしさを回復させるためのケアの提供であり、患者の痛みをとると同時に家族の苦しみを緩和する所だ」とホスピスへの理解を求め、「痛みを取るためにはモルヒネを使うが、それも我慢しきれなくなったから使うのではなく、痛みの強さに合わせてきめ細かく対応している」とモルヒネを使ったから中毒になるとの誤解を持たないよう訴えた。そしてホスピス病棟への入院は治療のための治療ではなく、症状の緩和、家族と患者が入院に同意していること、患者への病名や病状の説明ではウソをつかず、患者の求めに応じて柔らかく真実を告げていくことに家族が同意していることなどが必要と話した。最後にはホスピス遺族会を開いて家族と病院スタッフが、亡くなった人の思い出や辛かった思い出などを語り合っている様子などを紹介した。
聴衆からは「老後は家族に迷惑をかけないようピンピンしながらあっと逝ける方法はないか」など死に対するあっけらかんとした質問もでた。これに対して嘉藤医師は「家族の突然の死は悲しみをもたらすもの。最近は痛みが取れるなら、がんで死にたいと望む人も多い。痛みがないのなら家族と別れる時間も取れるからだ」などと答えていた。