大曲市で琵琶語りを聴く会
声のサークル「蓄音館」が視覚障害者らを招待(11月8日・金)
「祇園精舎の鐘の声〜」。8日午前10時半から大曲市の産業展示館で「古典への誘い『琵琶語りを聴く会』」が開かれた。視覚障害者のために市の広報をテープに録音し、届けている声のサークル「蓄音館(佐藤多喜子代表)」が主催した。招待を受けた目の不自由な方やその家族、そして一般市民ら50人が「平家物語」や「耳なし芳一」などの琵琶語りを楽しんだ。
語って聴かせたのは秋田市の鷹觜優水さん(55)。鷹觜さんは夫の転勤で大曲市に住んでいた時に「蓄音館」の会員としてボランティア活動。秋田市に転勤なってからは県点字図書館音声訳ボランティアを続けながら詩吟を学び、1985年からはさらに「薩摩錦心流琵琶全国一水会」に入会して琵琶を学んだ。そして県内の史実や民話、伝説を題材に師匠が作詞・作曲した「琵琶で聞く〜秋田の昔ものがたり」を県内各地で講演している。鷹觜さんの演奏するレパートリーは「冨貴娘」「お延(のぶ)の井戸」「雄物川」「女の戊辰戦争・沼田香雪」「小野小町」などがある。
鷹觜さんの活躍を知った蓄音館の仲間たちが「大曲でもやってもらおう」と発案、鷹觜さんに依頼したら「昔の仲間だもの」と喜んで応じた。蓄音館のメンバー17人は会場として借りることになった展示館の和室に座布団を敷いたり、琵琶語りの資料を作るなど、前日から準備を進めた。そして当日になって雨にも関わらず次々と訪れる聴衆に「思った以上に来てくれた」と歓迎していた。
鷹觜さんは白い「玉衣(ぎょくい)」という古典的な装いで琵琶を手に登場。最初に童話「花さき山」を弾き語りし、続いて「祇園精舎 平家物語より」と題して有名な「平家物語」の出だしを名調子で語った。ベンベンベンと奏でる琵琶の音色は神秘的。そして哀調を帯びた鷹觜さんの声がしみ入るように流れる。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の小説から取った「耳なし芳一」は正座しながら聴いている人たちも「引き込まれそう」と目を閉じてじっくりと静聴していた。
鷹觜さんがバチを手に奏でる琵琶の音は時には大河の流れのように激しくなったり、雨のしずくのようにささやかに響き、語る口調は波のようにうねり、ドラマに満ちていた。琵琶語りを終えると蓄音館のメンバーはかつての仲間である鷹觜さんを囲んで「また大曲で演奏して」と懐かしがっていた。