南外村の「出羽鶴酒造」

新酒の初絞りと杉玉のつり下げ

酒造りシーズン到来、25日から新酒の販売へ(11月15日・金)

 新酒の絞り込み作業南外村悪戸野の「出羽鶴酒造株式会社」(伊藤辰郎社長)で15日朝、新酒の初絞りが行われた。この日、絞り出された酒は25日から出羽鶴新米「初しぼり」として全国の店頭に並べられる。初絞りと同時に杜氏(とうじ)の佐藤賢孔さん(52)=同村及位=が玄関先に「新酒」ができ上がったことを知らせる「杉玉(酒林)」をつり下げ、酒造りシーズン到来を告げた。

 日本酒は秋の冷え込みを待って、本格的な酒造りが始まる。気温が低いほどおいしくできあがることから、雪がしんしんと降り始める冬が本番となる。今年は10月15日から蔵人(くらびと)と呼ばれる14人の酒造り職人が出羽鶴の蔵に入った。蔵人は杜氏、頭(かしら)、麹(こうじ)師、もと師(酒母)、精米師、蒸し番、槽長(ふなちょう)、精米長などと呼ばれる専門職。麹(こうじ)と蒸した米に酵母菌を混ぜた「酒母」を一緒にした「もろみ」をタンクに入れ、櫂棒(かいぼう)を使って20日前後の時間をかけて発酵させていた。

 「今年は雪が想像以上に早く来たが、蔵入りしたころは気温も高めで、酒の仕込みはタンクを冷却しながらの作業だった」と杜氏の佐藤さん。技師長の佐渡高智さん(40)は「酒は厳しい環境に置き、酵母に冷や汗をかかせるのがコツ」と解説した。酒母が冷や汗をかくと、酒独特の味の深みや甘さが生れると言う。

 新米「初しぼり」はこれまで「あきたこまち」と「トヨニシキ」を原料としていたが、今年からは県が開発した酒造用米「秋の精」で仕込んだ。また酒造用アルコールを添加せず、「純米酒」にグレードアップさせて販売することにした。

 巨大なタンクの中の「もろみ」はこうじの粒が混じってまだ白く濁っているが、これを布製の酒袋に詰め、絞り出すと原酒が生れる。タンクからパイプラインで運ばれた「もろみ」を2人の蔵人が絞り場で次々と酒袋で受け止め、槽(ふね)と呼ばれる容器の中に横積みした。2層3層と袋が重なるとその重みで槽の下の細い管から酒が流れ出す。

 静まり返った絞り場にチョロチョロと流れ出す原酒の音だけが静かに響いた。絞り場の気温は5℃。外気と同じ冷えきった空気だ。日本酒独特の甘い香りが流れ、杜氏の佐藤さんと技師長の佐渡さんが流れ出した原酒を熱い眼差しで見つめた。時には手で仰ぎ、香りを確認。「香りが立っている」と佐渡さん。茶わんを手に流れ落ちる原酒を口にした佐藤さんは「切れのいい酒が生まれた」とホッとした表情を見せたが、「初絞りとしては初めての純米酒なので、お客さんの反応がちょっと心配」と感想を述べた。

 新しい酒が出来たのを知らせる杉玉を吊るす佐藤杜氏初絞りの酒は「縁起もいい」とあってそれを待っているファンも多い。この日、絞り出された酒は仙北町の「秋田清酒」で瓶詰めされ、出羽鶴新米「初しぼり」として25日から店頭に出される。1升瓶で2000本(2200円)、720ミリリットル入りで2400本(1000円)、300ミリリットル入り700本(430円)が販売される。純米酒へとグレードアップしたが、値段は変わらない。例年、12月でほぼ売り切れるという。