楽器まつり演奏会
102人の児童、さわやかな音楽とミュージカル演じる(11月25日・月)
大曲市大川西根小学校(築地明校長)の「第32回楽器まつり演奏会」が23日、市民会館で開かれた。全校児童102人が一体となって歌い、演奏する伝統の「全校音楽」。今年も西根小らしい明るくさわやかな音楽を演奏し、ミュージカルを演じて見せた。ホールは西根小の「全校音楽」を聴いてみたいと地元の人たちだけでなく、秋田市など県内各地区から訪れた人もあって800人ほどの聴衆で埋まった。
大川西根小の全校音楽は1961年にうぶ声を挙げた。当時の児童数は400人近かった。しかし山間の閉ざされた環境で育ったせいか、子どもたちの行動には自己主張するといった元気さがなく、消極さが目立った。「町の子に負けない子どもたちに育てたい」。当時の先生たちは話し合った。「音楽はどうだろう。子どもたちみんなで音楽をやってみたらどうか」。そんな提案から全校児童で合唱することから全校音楽が始まった。それを指導したのが教師として赴任した後藤昭三さん(74)=日の出町=だった。全校児童で歌うと同時に鼓笛隊も作った。小太鼓とハーモニカー、足りない分は手拍子で音を出すという貧弱な鼓笛隊だった。その鼓笛隊が西根地区の評判となった。
後藤さんは鼓笛隊だけでは物足りなくなり、楽器店から借金をしてアコーディオンを買い求め、児童に教えた。これがきっかけで同校の合唱を支える合奏団の誕生となった。音楽熱はさらに高まり、児童たちに「バイオリンを教えるから買ってみないか」と勧めた。高価なバイオリンを児童に個人で買わせると言うのは冒険だった。子どもたちにせがまれてかなり苦労して買い求めた親もあった。それでも「音楽が子どもたちを変えた」と喜ぶ親も多く、子どもたちの楽器購入には苦労しながらも温かく受け入れられた。
全校児童が歌い、それに合わせてバイオリン、アコーディオン、ピアノ、木琴、打楽器なども加わった合奏団へと成長した。欲しかったトランペットやトロンボーンなどの管楽器は大曲中学校から中古品を譲り受けた。
しかし、楽器を手に入れても子どもたちがそれを学ぶのは大変だった。特にバイオリンは正しい音を出すだけでも大変な楽器だ。後藤さんは「音楽が〃音が苦〃になってはならない」と気長に指導した。しかし、後藤さん一人での指導では手が回らず、楽器の操作を覚えた児童が下級生にマンツーマンで指導すると言う形を取った。それが現在の大川西根小学校の音楽の伝統となった。
後藤さんの苦労と試行錯誤は次第に大きく実り、全県や全国的な音楽コンクールで大きな賞を取るまでになった。楽器も地元企業の応援で寄贈され、次第に現在の形のオーケストラへと成長した。そのオーケストラをバックに子どもたちが歌う全校音楽活動は全国的にも知られるようになり、海外からお客さんが来ると同校を視察する定期コースにもなった。
この日の楽器まつり演奏会では普段の学校での音楽の時間を再現しようと同校創立110周年賛歌「はばたきマーチ」に始まり、タイケの「旧友」やシュランメルの「ウィーンはウィーン」を元気に演奏した。映画「サウンド オブ ミュージック」、そしてチャイコフスキーのバレエ曲「くるみ割り人形」から「行進曲」や「序曲」の演奏もあった。まだ練習中で未完成のようだったが、「くるみ割り人形」ではチャイコフスキーらしい高度な管楽器の音を響かせるシーンもあった。最後は快適なリズムの「アフリカンシンフォニー」で幕を閉じた。アフリカの灼熱の大地を想わせる子どもたちの懸命な歌声は感動を呼び、会場から「アンコール」の声も掛かった。
第2部ではミュージカル「あしたへのおくりもの」を演じた。6年生が中心になってストーリーを作り、どんな場面にするかを全校児童で相談しながら「詞」を作り、曲も作った。「誰にだっていい所もあれば悪い面もある。みんな同じなんだから、いじめたりしないで仲良くしよう」。そんな内容のミュージカルを子どもたちは一丸となって約1時間、ステージ場で踊ったり、歌ったりの躍動的な劇を演じた。ホールを埋めた多くの人たちに感動と勇気を与えるステージとなった。