いのちを考える特別講演会

生と死の教育のデーケン教授

思いわずらいから解放される「生きがいとユーモア」を語る(10月1日・火)

 著書を買いもとめた人と握手を交わすデーケン氏To Be〜共に生きる会主催の「いのちを考える特別講演『生きがいとユーモア』」が29日、大曲市の大曲中央公民館で開かれた。講師は「死とどう向き合うか」(NHKライブラリー)、「生と死の教育」(岩波書店)など多数の著作もある上智大学文学部教授のアルフォンス・デーケン氏。1932年ドイツ生まれのデーケン氏はフォーダム大学大学院(ニューヨーク)で哲学博士の学位を取得。59年に来日し、同大教授として「死の哲学」などの講義を担当している。

 死という重い課題をテーマにした講演会だったが、市内はもちろん秋田市や横手市など各地から訪れる人が多く、会場は約400人の聴衆となった。共に生きる会の代表で、大曲キリスト教会の横井伸夫さんは「大曲市は日本の都市の中でも最も住みよいまちとして知られる。一方で秋田県は自殺率が高い。生きやすい土地なのに生きることができない現実がある。未来に希望を持てない中高校生、生きるより死んだ方がましと考える高齢者。生きるとはどういうことか、死ぬとはどういうことか。講師にデーケン先生を招き、それを考えてみたい」と訴えた。

 デーケン氏は最初に生きがいの探求をテーマに人間の持つ「潜在的能力の開発」の必要性を語った。会場の前列に座っている人たちに指さし、「あなたは自分の潜在能力をどのくらい活用していると思うか」と尋ねた。「30%」とか「50%」と答えると「アメリカの心理学者によればアメリカ人は自分の潜在能力の10%しか活用してないと言うのに秋田で50%も活用しているとすれば、秋田の人はアメリカ人より優れてます」と会場を笑いに渦にした。そして「ローマ法皇は50カ国語を話すことができる」と人間の潜在能力の大きさを訴えた。

 また、「コップに半分の水がある時、『半分もなくなってしまった』と考える人はペシミストで、『まだ半分ある』と考える人はオプチミストと言えるが、ペシミストになってはいけない。明日の天気が心配で憂鬱になる人がいるが、天気は人間の力では変えられない。遠い将来を思いわずらうような自分から解放することが大切」とも語った。

 さらに「人生の見直しと再評価」を行い、自分の役割意識を改革していくことの大切さを語った。また、生きがいとは「他者のために生きることだ」とボランティアを勧めた。

 そして死のテーマに入り「死は遅かれ早かれ誰にも訪れるもの。タブー化してはならない。死を見つめることで『生きる』意味が見えてくる」と語り、「死の準備教育」の必要性を訴えた。デーケン氏によると「死」といっても「心理的な死」「社会的な死」「文化的な死」「肉体的な死」という4つの死の側面があるという。また音楽療法、読書療法、芸術療法、作業療法、アロマセラピー、ペット療法などの効果についてや臓器移植などの問題にも触れた。

 さらに「出会いが深ければ深いほど、別れは辛いものになる」と語り、愛する者との死別を経験した人への悲嘆教育(グリーフワーク)と「配偶者の死に備える教育」の必要性を訴え、「共に喜ぶのは二倍の喜び、共に悲しむのは半分の悲しみ」と訴えた。また「心の傷を結ぶユーモア」と題して退職後の「第三の人生」を有意義に過ごすには発想の転換が必要とも述べた。それには「手放す心(執着を絶つ)」「ゆるしと和解」や「感謝の表明」、そして「さよならを告げる」ための「遺言状」の作成、さらに自分なりの葬儀方法を考え、それを周囲に伝えていくことも大切と語った。同時に他者を責めたり、変えようとするのではなく、自分自身が変わることで平和な人生を送ることができるとも。

 最後にユーモアとは他者をけなして笑わせるジョークとは違い、自分の失敗やいたらなさを笑い飛ばして生きることだとも訴えた。そしてユーモアを持って生きることが生きがいのある人生になると。

 講演後は茶話会も開かれたが、デーケン氏は「キリスト教は愛の宗教だが、喜ばしい便りでもある。喜びを伝える宗教でもあり、喜びを伝えるにはユーモアが必要で、ユーモアこそキリスト教の大切な要素」とも語った。そして「多くの人々は死をタブーとし、学びたくないものとしてきた。死を知らないから大きな恐怖を抱く。知ることで心配を乗り越えられるもの。そのための教育が必要だし、希望も死の恐怖を乗り越える手段だ」と示唆に富んだ話をした。会場では講演会の前後、デーケン氏の著書の販売も行われたが、多くの聴衆が買いもとめ、気さくにサインに応じたり、記念写真に収まっていた。

 主催したTo Be〜共に生きる会の横井さんは「このような生と死を考える活動はこれからも継続したい」と話し、参加したいとあれば連絡してほしいと呼びかける。横井さんへの連絡は下記へ。

 0187─62─2598

 Eメール jcross@rnac.ne.jp