西木村出身の詩人

小田嶋忠宏さんのエッセー集刊行

画家・小野さんの思い出などつづった「んだら、な!」(10月25日・金)

 繊細な筆致で緻密な写実画を描いて画家としてデビュー、中央の画壇からその将来が注目されながら、1994年に47歳で急逝した大曲市の小野則夫さんを主題にしたエッセー集「んだら、な!」が文芸社から出版された。西木村出身の詩人・小田嶋忠宏さんの著作で、生活苦から知り合いから預かっていた「一万円」に手をつけ、その消費をつづった「壱万円日記」や15歳で横浜に出て、定時制高校に通い、職場もアパートも転々とし、結婚までのいきさつや子どもたちとの貧しい生活を飾ることなく物語った「花がさの家」、小野さんの思い出などを書いた「んだら、な!」、「小野則夫遺作展─こころの壁飾り─」、詩篇「月光市場」などからなる。妻と二人の子の父でもあるが、都会での生活苦を赤裸々につづったエッセーはやるせなく切ない。

 無職の果て、妻との生活の糧を賭けて知り合いと興した編集の下請け事務所。しかし、友の裏切りで会社は消滅し、残ったのは借金だけ。「家出して享年8、学校ではみな敵だった享年13、人生行き先不明の享年19、社会なるものの奈落へ落とされて享年25、無職生活無能者享年28、倒産が見せてくれた借金地獄で享年34。肉体が滅んでいれば、僕の墓標にはそのうちのどれかが刻まれていたかもしれない。生きて墓標を立てている。享年34から、僕はね、生きようと、諦めたんだ」(壱万円日記から)。

 小野さんとは20歳になった年の夏、栄養失調で東京を離れ、大曲市に住んでいる叔母を頼って、市内の病院に半年間入院、退院後のライブハウスで手製の詩集を朗読していた時に知り合った。小野さんも当時は東京から失意のまま、故郷・大曲へ戻って間もないころ。二人はお互いに「僕は詩人になるんだ」、「おれは画家を目指す」と励まし合いながら、夜の街を「都落ちだ、都落ちだ」と叫びながら、毎晩のように徘徊したことなど小野さんの苦悩時代が描かれている。

 「ボクネ オオキクナッタラネ テンシ ニナルンダヨ ダッテネ テンシハネ ミギウデノナイヒト ヤ ビンボウナヒトヲ テンゴクニ ツレテ イクンダヨ」

 小さな会社を倒産させて

 酒でも飲まなきゃ 息がつけないような

 人生の袋小路に堕ちて 堕ちても生きたくて

 まだ 金銭価値が判らない

 四歳の保育園児の財布になら その金銭が

 入っているだろうと

 キャラクター財布を覗いてみれば ひっそりと

 一円玉が数枚 その中に遊んでいる(詩篇・月光市場の人々─天使の握力より)

 ミュージシャンで映画監督のあがた森魚が「小田嶋忠宏」に関するコメントを寄せている。現在、神奈川県横浜市在住。定価1000円。全国書店で販売中。