角館町の親子心中事件
「介護の疲れ」誰にも相談できず(9月12日・木)
角館町山谷川崎字山谷558番地2の民家で11日夕、88歳の泉多市さんが自宅居間で、首をひもで巻かれた状態で死んでいるのが発見された事件で、角館署は12日、泉さん宅の敷地内から見つかった男性の焼死体を秋田大学医学部に依頼して司法解剖していたが、歯形から長男で無職の泉健一郎さん(58)であると断定した。角館署では父の看病に疲れ、本人も病気がちだったことから将来に絶望し、多市さんの首を締め、自らも灯油を被って焼身自殺を図った無理心中と見ている。
父親の泉さんは2年前に妻が亡くなって以来、すっかり体が弱り、近所の人の話では物忘れも激しく、長男の健一郎さんがその面倒を見ていた。また、西木村に嫁いだ長女(58)も毎日のように顔を出して食事の面倒を見ていた。しかし、健一郎さんは姉にも、また近所の人にも「介護に疲れた」ともらしていたという。多市さんの遺体は実家を訪ねたその姉が発見し、向かいの家を通じて角館署に通報した。
泉さん宅は町中心部から約10キロほど離れた山間(やまあい)の集落の最奥地にポツンとあるだけ。30年ほど前に開拓者として移り住んだ。泉さん宅の向かいに一軒の家はあるが、山谷川崎集落からは孤立したような生活環境にあった。近所、といってもかなり離れた家の人は「多市さんを車に乗せて病院に行く姿を見たことがある」と話した。そして「無口でおとなしい人だった。親を殺して自分も焼身自殺するなんて残念なことが起きてしまった。前向きになって相談すれば良かったのだが、こもりがちな人なのでそういう行動も取れなかったかもしれない」と顔を曇らせた。
親子で左官をしていたのはかなり前のことで、田畑があることから食べ物には不自由しなかったが、生活費などは多市さんの年金と3人の姉妹の支援で細々と暮らしていたのではないかとの見方もある。
町役場福祉課では「老人だけの世帯はある程度、その生活状況は把握しているが、子どもと同居している高齢者の場合はプライバシーもあって、どんな生活をしているのかと踏み込むわけにはいかない。介護に困っているようであれば民生委員に相談すれば良かったが、そちらからも何の情報もなかった」と話す。