一時お預かりします=民間の「福祉施設」
十文字町=「休養が取れた」と家族に好評(4月11日・金)
平鹿郡十文字町に障害を持つ人や赤ちゃんからお年寄りまでを家庭的な雰囲気の中で一時的に預かり、世話をする地域生活支援センター「レスパイトハウス『はぐらんど』」がある。運営しているのは同町十五野新田字坊主沢80の3、佐藤淳子さん(49)と長女のあかねさん(23)親子。佐藤さんはホームヘルパー2級と保育サポーターの資格を持ち、あかねさんは仙台市の医療福祉専門校を卒業、介護福祉士と保育士の資格を持っている。乳幼児からお年寄り、障害者の世話をしたいと思ったのは3人の子供のうち長男(21)がダウン症という障害を持って生まれたことから。世話になった医師からは当初「5歳までしか生きられない」と言われたが、そのお医者さんの熱心な治療と手当てで無事、長男は成人した。成人するまで佐藤さんが一番、欲しいと思ったのが「障害を持った子供が周囲の偏見の目から解放され、堂々と暮らしていける環境だった。そうした施設があれば自分でもどんなに助かったか。なら自分でやってみたい」と専門校を卒業した娘さんと相談し、障害を持つ人のための理想的な福祉施設を運営しようと昨年12月30日に自宅敷地内に木造二階建て約160平方メートルのハウスを建設した。「自宅と同じようにくつろげる」と佐藤さんらの手厚い介護を受けた本人はもちろん、その家族からも「久しぶりに休養が取れた」と喜ばれている。民間のそうした施設を応援してほしいと読者からの要望があり、10日、十文字町へと訪ねた。
レスパイトサービスとは障害児(者)を持つ親、家族を一時的に介護から解放し、日ごろの心身の疲れを回復させ、ホッと一息つけるように援助する介護施設。県内では初めての誕生だ。重い障害を持つ子供を抱えたり、痴呆老人を世話している家族は24時間、その世話から解放されることがなく精神的にも体力的にもクタクタというのが実態。このため地域によってはそうした悩みを持つ家族が力を合わせて交互に面倒を見て、買い物や温泉で一時的に休養している例もある。しかし、実際はそうした相互協力で助け合っている例は少ない。
ダウン症の子供を育てた佐藤さんもそうした経験を味わった。それでも自分の子供は自分の手で育てたいと保育所も小学校も地元の学校に入学させ、社会の一員として迎え入れてもらえるよう努力した。しかし、中学生になってからはやはり専門家による教育を受けるべきだと養護学校へ入学させた。中学は県立横手養護学校、高校は県立大曲養護学校だった。5歳まで生きられないだろうと医師に言われた子供だったが、当時、横手市の平鹿組合総合病院の小児科医として勤務し、現在は横手市で開業している石橋貢医師に週4日は通院し、治療を受けた。そのおかげで小学校まで行けるようになった。そして中学、高校も卒業した。一番下の男の子も高校3年生。そして長女は介護福祉士と保育士の資格を取得して専門校を卒業。
佐藤さんは「長男がここまで成長したのも地域のおかげだし、家族の協力があったからだ」と感謝する。障害があっても保育園、小学校では普通の子として迎え、普通の子として教育し、クラスの子供たちも一緒に遊んだ。そのようになれたのも佐藤さん自身が自分の子を地域の人たちにとけ込めるよう積極的に社会に出した努力もあった。それでも偏見の目を意識することはあった。「同情はされても同じ空気ではないという雰囲気を何度も味わった」と佐藤さん。
子供の介護に疲れ、一時でもいいから休養したいと思ったこともあった。しかし、子供への偏見の目を持たず、安心して預けられる場はなかった。介護者がストレスをためると介護される人にも悪影響を与えることを佐藤さん自身も味わった。そうした体験から障害を持つ子を温かく迎え入れ、介護で疲れ切っている親やその家族に憩える時間を与えられる24時間介護可能な施設を自分で作ってみたいと思った。
備品も含め約2600万円をかけて自宅敷地内に木造二階建てのハウスを建設。居間や台所は普通の家のような雰囲気とした。自宅と同じような気持ちでくつろいでもらいたいからだ。それに介護を受ける人がいつでも佐藤さん親子の目に触れ、管理できるからだ。「かゆいところに手が届くような福祉サービスをしたい」と佐藤さん親子。このため同時間タイムで預かれる人数は5人までとした。近所の人たちからは赤ちゃん用にとオモチャや絵本、童話、図鑑などの寄付もあった。必要がなくなったからと車いすの寄贈まであった。
利用してもらうには法的な関係もあって会員登録制(年間1万円)となっており、会員なら2時間まで1500円、時間超過の場合30分ごとに400円、午後5時から翌朝8時までの「ナイトタイムレスパイト」は7000円。そして食事は1食あたり350円で入浴は100円。 「今すぐ預かってほしい」という緊急時の要望にも対応したいと非会員の料金も設定した。非会員の場合は2時間で1800円、時間超過なら30分ごとに500円の上乗せ。
現在、会員登録しているのは5人だけ。「まだまだ採算取れるような状況ではないけどお金のことを考えたらこのサービスはやってられない。ただ私はボランティアでいいけど娘の人件費ぐらいは出せるようになれば」と佐藤さん。農業と日雇い作業員として働いている夫も「娘と好きでやっているのだから」と理解を示し、温かく見守っている。
「はぐらんど」には今は障害を持つ人や赤ちゃんの世話だけでなく不登校の児童、あるいは近所のおばあさんたちも世間話やお茶飲み話をしたいと顔を出す。いわば営業にならないボランティアだが、佐藤さん親子は「遊びに来てもらって障害のある人と接し、理解してもらう場になるのも『はぐらんど』の目的の一つですから」と話す。二人とも「福祉の仕事は自分のライフワークだった」と言うだけに気さくでとても明るい雰囲気で話す。
利用するには障害の内容、程度、利用理由、年齢、地域、時間帯、曜日は基本的に問わない。「いつでも、どこでも、誰にでもの福祉を目指してます」と佐藤さん親子。はぐらんどに行くには十文字町の国道13号「文化センター入り口」交差点を横手方向からなら右折、反対の湯沢方向からなら左折して平鹿町に向かう県道に入ると町営の陸上競技場、十文字中学校への道路がある。その道を走ると間もなく看板が見える。
電話での問い合わせは0182─42─3748へ。