ユラユラと幻想的な絵
夜空の旅立ちを見守る観光客(2月11日・火)
火を灯した巨大な紙風船がユラユラと夜空に舞い上がった。「ああ。行ったな。行ったな」。紙風船の旅立ちを見守りながら、観光客たちは感慨深げにつぶやいては空を見上げた。西木村上桧木内の冬祭り「紙風船上げ」が10日夜行われた。県外からも大勢の観光客が訪れ、約1万人が地元住民と共に紙風船上げを楽しんだ。
上桧木内の紙風船は美人画や武者絵を描いた和紙をつなぎ合わせて円筒形にし、五穀豊穣や家内安全などの祈りを込めて熱風で浮力を付けて上げるもの。熱気球の原理を活かしたもので、江戸時代の科学者・平賀源内が秋田藩の招へいに応じて阿仁銀山の技術指導に赴く途中、上桧木内の地に宿を取り、伝えたと言われている。
夜の闇の訪れを待って6時ごろから次々と各集落から紙風船が運ばれ、ガスバーナーで熱風が紙風船の中に送り込まれた。観光客は地元住民と一緒になって紙風船の下を持ち上げ、膨らむのを手伝う。10メートルを超える大きさの紙風船も登場。夜の止みにフワリフワリと浮かび上がる紙風船は幻想的な絵そのもの。熱風の入り口となった最下部にタンポと呼ばれる油をしみ込ませた布玉を固定し、点火すると紙風船はその熱をエネルギーに夜空へユラユラと舞い上がり、旅立った。午後8時半ごろまでに約100個の紙風船が飛ばされた。この日は半月も時折顔を見せるおだやかな天候。舞い上がった紙風船は星のようなきらめきを残して消えた。「ああ。行ったな。行ったな・・・」。観光客はいつまでもいつまでも夜空を見上げて紙風船の旅を見送っていた。