高橋良臣講師の講演から=その1
外出できる子ども、外出できない子ども(11月25日・火)
ToBe〜共に生きる会(代表・横井伸夫=日本キリスト教団大曲教会牧師)が年度活動として取り組んでいる「不登校・引きこもりを考える集い」の定例会は23日、大曲市の中央公民館で開かれた。登校拒否文化医療研究所の高橋良臣所長が講師となって概要、次のような講話をした。この日はボランティアも含め18人が参加した。3回にわたって掲載したい。
外出できる子ども、外出できないこども=登校拒否・不登校をしている子どもたちの多くは外出ができにくくなっている。しかし、一部に外出は苦もなくできる子どもも10%前後いる(過去25年間に高橋氏及び登校拒否文化医学研究所がかかわった人々の集計から)。最近はこの外出できる子どもがわずかに増加している。外出をしにくい子どもでも友だちが家に来れば会ったり、家族とはごく普通に生活している子どもは30%前後はいる。この子たちの多くは、たまには友だち以外の外部の人とも会える。外部から来る人とは全く会えないが、家族(特に母親)となら一緒にいられるという子どもは30%前後となる。彼らの一部には「自分のことを分かってくれて趣味が合う人となら会ってもいい」気持ちはあるる。
一方で外出はできないし、家族を含めて人とは顔合わせができない子どもはおおよそ30%前後いる。この割合は25年前も現在もそれほど変化はない。このような状態に置かれている子どもは、環境や関係の変化によって状況は変わり、次々に外出ができるようになったり、できなくなったりして、変化する。どちらの方向へ入れ替わるかは、関わっている人々との関係や環境に影響される。状況が良くなればよい方向へ向かう。
外出できる子ども=登校拒否をしはじめたころから親しい友だちと会って遊べたり、塾や適応指導教室に通うことができる子どもがいる。家族が子どもの様子に理解があり、登校刺激をしなかった可能性がある。また、本人の羞恥心が強くはない可能性もある。登校拒否に関する葛藤が少ないタイプだ。
外出する場合、登校拒否の子どもは親や教師や友だちからどこにいるか分かるようにしている。非行の子どもは親も教師も友だちも本人がどこにいるのか分からない状態をつくる。ゲームセンターに行っているとしても、そのことを家族はたいがい知っている。自転車で出かける際にも、家族にはどこを走るのか、おおよそ見当がつく。友だちと会うにしてもどこの誰と会っているかは見当がつく。非行タイプの子どもの多くは、親にも教師にも見当がつかない。
外出できるのに学校へは行かないので「怠けではないか」「非行ではないか」と疑われる子どももいる。怠けや非行の子どもほどは怠惰ではなく、逸脱行動もない。登校刺激に対して心身の反応を示すのが登校拒否の子どもの特徴だ。
主に母親と一緒なら外出もでき、嫌な人でなければ会える=学校で強い不安を感じ、誰かに助けてもらいたい思いをした子どもが多い。しかし、学校では誰も助けてくれる人がいなく、辛い思いを心に抱えて家に帰り、母親の慰めや癒しを求める子どもだ。
あるいは母親の側に強い不安感があり、そのことを子どもが感じ取っている場合にも子どもは母親から離れられなくなる。母子で離れられなくなる場合もある。母子分離不安とか母子共生と言う。
自分が所属する社会の中で唯一、母親だけが信頼でき頼りになれる人となってしまう。一部には母親と自分の気持ちが一体化していないと気が済まない子どももいる。そのような状態にある子どもは、母親が不在になると家にいても不安が強くなり、電話などで常に繰り返し母親と連絡を取りたがる。
母親と一緒なら嫌いな人ではない限り会える子どもは多くいる。仮に相手が嫌な人の場合、瞬時にして母親の陰に隠れる。メンタルフレンドなど、子どもの気持ちを理解し、楽しい関わりができる家族以外の外部の人との結びつきが、母子分離の実現には役立つ。
外出はほどんどできないけど、本人にいい人なら家で会える=人の目が怖いとか、人が気になるとか、人から変な目で見られるのが嫌だという子どもがいる。あるいは元々人間が嫌いだ、集団が嫌だ、という子どももいる。集団のペースや同世代の共通意識になじめなかった子どもたちだ。同世代の子どもとの共通の話題や話題の展開やものごとへの取り組み方などに違和感を感じている子どもたちが多くこのタイプにはいる。幼いころは「人見知り」程度だったのが、やがて「恥ずかしがりや」になり「人の目が気になる」状態になっていく。そして人の中にいると「動悸がする」ようになる。そのうちに「顔が赤くなってしまう」状態も起こり「集団の中にいると恥ずかしいことになる」とか「集団の中にいるとみんなに迷惑をかけたり、不愉快な思いをさせてしまう」という思い込みが生まれてくる。
このような人は例え善意であっても、外部の人が自分の心の中を探ることを極端に警戒する。最初から心への侵入がない保証をし、趣味の話などで楽しむ相手であるという保証付きの人となら会うことは可能だ。メンタルフレンドは引きこもっている人の「快の神経伝達システム」の活性化の役割を果たす。登校拒否・不登校の子どもたちの多くは「不快神経伝達システム」が発達していて「快の神経伝達システム」は休眠状態にある。快の神経伝達システムが活性化する関わりがあれば、子どもの社会参加は飛躍的に実現する。メンタルフレンドとの関わり方やカウンセリングへの導入がうまくいけば、ほぼ30%のうち27%の子どもたちは学校への復学や社会参加が実現している。
人とは家族であっても顔を合わせず閉じこもっている=人間には誰とも会わない登校拒否の子ども(30%)のうち3〜5%は本格的な引きこもりになる可能性がある。現在は誰とも会わない子どもであっても、2年後には残りの25〜27%の子どもは人と会ったり、外出が可能になっている。これも25年間ほぼ同率で移行してきている。
外部の人との接触が全くなく、家族との対面や声かけにも応じないわけだから、手紙(メモ程度)の伝言のような内容から始めるとうまくいく場合がある。ようするに中身が濃い内容は避けるようにする。「今日は晴れていて気持ちがいいから、布団でも干すといいね」「暑くなってきたからクーラーの準備をしようと思っているけど、都合はどう?」とか「珍しいお魚があったから、フランス料理風に作ってみた。食べてみて」といった内容だ。それからしばらくして「このごろあなたの部屋から音が聞こえなくて、心配しています。必要なものがあったら言って下さい。言えなかったらメモに書いてテーブルの上に出しておいて下さい」といった内容に変えてゆく。少しずつ心の満足感に触れるようにしていくべきだ。最初から不快神経伝達システムを刺激するような内容は避けてもらいたい。できれば引きこもり対応に慣れているカウンセラーの指導を受けながら事を運ぶと、うまくいくことがある。