高橋良臣講師の講演から=その2
大きな影響を与える不快神経伝達システム(11月26日・水)
ToBe〜共に生きる会(代表・横井伸夫=日本キリスト教団大曲教会牧師)が年度活動として取り組んでいる「不登校・引きこもりを考える集い」の定例会は23日、大曲市の中央公民館で開かれた。登校拒否文化医療研究所の高橋良臣所長が講師となって概要、次のような講話をした。この日はボランティアも含め18人が参加した。3回にわたって掲載したい。
不快神経伝達システムの発達=ほとんどの人は楽しいことは繰り返し体験したくなります。そしてもっと楽しい状態を創ろうとします。それが快い神経伝達システムを発達させていきます。ところが登校拒否・不登校の子どもたちの多くは、ある時期から、不快な神経伝達システムの支配下に置かれた生活をしています。
人間の神経伝達システムの原則からいえば、その時の関係や環境が本人にとって楽しいもので、快い神経伝達システムが働いている時には、不快な神経伝達システムが働かないように機能します。仮に外部からの不快な刺激があったとしても、自分の神経伝達システムに取り込まないように遮断するシステムが働きます。反対にその時の関係や環境(状況)などから、不快な神経伝達システムが優勢な時には、快い神経伝達システムは外部からの快い刺激を受け付けにくい状態にあります。
登校拒否の子どもたちが、ある時期から繰り返しテレビのお笑い番組や歌番組だけを熱中して見るようになるのは、このような神経伝達システムの影響によるものです。本人の良いところを指摘したり、褒めたり、何を言っても前向きに考えが及ばないのもこのような神経伝達システムの影響によるものです。
いつも嫌なことばかりだった=登校拒否の子どもたちは「やりたいことはやらせてもらえなかった」と言います。「勉強ばかりやらされてきた」り「本当はサッカーをやりたかったのにスイミングをやらされた」り「音楽を聴いていたのに、みんなとおやつを食べるように言われた」などと言います。
日常生活ではたいしたことではないように思いますが、登校拒否の子どもに言わせると一事が万事「嫌なことばかりをやらされてきた」ことになっています。「少しはいいこともあったでしょう」と問い直しても、子どもの言葉は「全然ないよ」のひと言です。後で親から話を聴くと「クリスマスプレゼントに新幹線のおもちゃをもらった時は、おもちゃを抱いて寝たほどでした」など結構、快い思い出もあるのです。
しかし、今、不快な思いをしている時には過去の快い思い出は神経伝達システムの働きの特徴から考えても、意識には登って来にくくなっているのです。仮に「あの時、新幹線を抱いて寝たほど喜んでいたでしょう」と言い返しても「本当は釣りの道具がほしかったんだ。それなのに『もう釣りなんかできる場所がない』とか『お父さんが忙しいから釣りなんかに付き合えない』って言って、新幹線にしたんじゃないか」といった具合に子どもの心には嫌な体験がくすぶっています。
釣り道具が新幹線のおもちゃに変わっても、大人の感覚では日常的には修正できる感覚かもしれませんが、子どもの神経伝達システムの特性から考えると簡単には修正できにくいものです。親たちの生活に影響されている子どもの神経伝達システムであっても、子どもの側には親の都合を斟酌する余裕はあまりないのです。どんな人でも(大人でさえ)自分の心身に不都合な出来事が起こっている時に、今までそれで通してきたやり方を変えたり、より良い方へ自分の気持ちをコントロールするのは困難な作業となります。子どもの意識には「親はいつも子どもの気持ちを無視して、自分の都合だけでものごとを決めてしまう」とか「親は嫌なことばかりをやらせる」とか「子どもがやりたいことは認めないで親の勝手を押し付ける」などといった嫌な思いが残ってしまいます。
先んじても遅れる=子どもの才能の早期発見と英才教育をしようという意識はどんな親にも少しはあります。子ども同士で遊んでいたり、テレビやマンガを見ているくらいなら将来の進学に役立ちそうな教育をしてあげよう、という思いは少しはあります。したがって子どもには好きな遊びよりは、他の子どもよりは少しだけ先に学校でやる勉強をやらせようという親もいます。その時の子どもの意識は「勉強をやらされた」意識なのです。
「やらされた」意識は不快神経伝達システムを刺激します。理由は、今やらされている勉強よりは、遊びの方が絶対に楽しいからです。仮に勉強をやらせる場合には、子どもが楽しみにできるような技法があれば、子どもの意識は「楽しく勉強している」状態になります。しかし、ほとんどの子どもは気持ちが遊びの方に向いているのです。机には仕方なくいやいや向かっているだけになります。不快神経伝達システムが最も活発になるパターンです。
したがって当初こそ、他の子どもよりは学習面では出来が良くても、自発的に学習を始める子どもにはすぐ遅れを取ることになります。自発的学習に取り組む子どもの多くは、遊び(環境)や子ども同士の関わり(関係、集団)の中から、学習についての興味や関心を強めていきます。このように自発型の学習は「自分でやっている」という満足感を子どもの心に残します。これは快い神経伝達システムの支配下に起きる出来事です。先の「親に勉強をやらされてきた」子どもの不快神経伝達システムとは大きく異なります。
不快神経伝達システムを強く刺激されている子どもは、当初こそ、他の子どもよりは知っていることは多いものの、やがて自発的に学習を始めた子どもに比べて、遅れを取るようになります。
快い神経伝達システム=「神経」という言葉を「かかわり」という言葉に置き換えても通じると思います。快い神経伝達システムを活性化することが、登校拒否の克服の早道です。子どもがお笑い番組を見ていたら一緒に笑えるような状態で関わるといいです。「ばかばかしい」なんて批判しないことです。「あの歌手は目だけ大きくて気持ち悪い」なんて言わないでことです。子どもがゲームに興じていたらゲームに関心を示すぐらいはしてみて下さい。
また日常生活ではユーモアを忘れずに取り入れていく心がけが必要です。どんな人でも楽しい生活は心の機能を高めるのです。
どうかすると大人は「子どもが楽しいことばかりに没頭してしまったら困る」という不安から「少しでも学校の勉強をやらせたい」と考えます。また「悪いクセがつくといけない」という不安から「悪いところは早く直してあげたい」という矯正を強制的にしてしまいます。これは不快な出来事そのものとなっていきます。親が子どもの欠点を直したいという思いを持つよりは、子どもが直したいと思うように関わっていくことが大切です。その時にもユーモアは大切です。楽しさは日常生活の不調を調節していくうえでは特効薬なります。