市町村合併を巡って対立
町長選は現職と前副議長の一騎討ち(10月7日・火)
任期満了に伴う中仙町の町長選(12月11日任期)と町議選(11月2日任期)は21日告示、26日投・開票される。町長選には現職の熊谷勲町長(61)=同町北長野=が6月議会で「市町村合併に向けた諸課題を解決していく責務が私にはある」などとして再選目指して出馬を表明。これに対して9月議会で副議長を辞任した冨岡喜芳氏(52)=同町上鶯野=が、大曲市ほか7町村との合併を選択することになった町のアンケート調査は「世帯主だけを対象に行ったもので住民の総意ではない」と批判、8月10日に記者会見して町長選への出馬表明。熊谷町長と冨岡前副議長との一騎討ち(いずれも無所属)の公算が大きくなっている。一方の町議選(定数20)には22人が出馬する激戦となりそうだ。7日、熊谷町長は本紙と会見した。
熊谷町長は4年前、議会から2度にわたる不信任案議決で町長を失職しながらも、再選目指して出馬した前町長と一騎討ちを演じて初当選した。「政治とは無縁で、好きにもなれなかったが、混乱している町を救ってもらいたい」と議員有志や町民の強力な要請を受け経営していた建設会社から離れての出馬だった。失職した前町長への批判票もあって、大差をつけて当選した。
この4年間を振り返って熊谷町長は「会社を経営していた時は自由な時間もあったが、町長という職は酒席も伴い、束縛されて結構不自由なものと言うのが実感。今は、その酒もそこそこ付き合えるようになったが不自由さに変わりはない」と笑った。そして町政運営で最も配慮した点は「前任者が議会と対立して混乱を起こしており、議会と話し合う事に重点を置いた」と話す。
また役場職員の仕事への取り組みも、毎週金曜日朝の始業前に課長会議を開いて情報を交換。「仕事上で問題になっていることは隠さずに報告するようにさせた。いいことは報告を受けなくてもいいが、悪い事なら教えてもらわないと即座に対応できない」と職場の風通しを良くすることに専念。全職員とも3年間、毎年一度は昼食を取りながら面談し、仕事上で困っていることや悩みなどを聞いた。そして特殊な部門でない限り、同じ課に職員を3年以上は置かず、いろんな分野で可能性を引き出す工夫もした。
昨年は学校給食センターを完成させ、懸案だった学校給食をスタートさせ、今年4月には約21億円を投じた町民会館「ドンパル」をオープンさせた。会館を造る時は「町民に知恵を貸してほしい」と呼びかけ、好きな人に集まってもらいその人たちの意見を聞きながらステージ中心の施設ではなく、子育て支援センターや保健センター、トレーニングセンター、学習情報室といった複合施設とした。会館でイベントがあれば30人のボランティアが協力しながら運営するといった町民参加型にもした。
銀行勤務が長かっただけに「曲がった事は嫌い」とハッキリ。笑顔を絶やさず口調も穏やかだが、直截的なもの言いで「誤解を招く事もある」と本人。今度の市町村合併で対立する冨岡氏は「アンケート調査は世帯主だけを対象に行ったもので住民の総意ではない」と批判。また議会の議決にしても「住民にとって最も大切な方向性を決めるのにほとんど議論されないまま決まった。むしろ私の耳には歴史的にもつながりのある北部3町村(角館町・田沢湖町・西木村)との合併を望む声が聴こえてくる」と訴える。
これに対して熊谷町長は「世帯主だけを対象にしたものではなく、世帯全体の家族から回答をもらったものだ」と反論する。「家族で話し合ってもらい、その回答を参考にしたもので議会もその結果を受けて、私の意見も含めて検討し、北部4か町村の任意合併協議会から離脱した」と話す。そして「北部3町村のうち角館町と田沢湖町は合併後は観光立町を目指そうとしている。中仙町は10年ほど前から島根県から導入した肉用牛が定着してきた。その酪農と農業を守るためには食糧供給基地を目指すと新市の将来構想に掲げる大曲仙北合併協議会を選ぶべきだと判断した」と話す。アンケート調査によると大曲仙北広域での合併を選ぶべきだとしたのは49.5%。角館町を含む北部4町村を選択すべきだと回答したのは37.8%で、他の近隣町村との合併が11.3%だった。
再選されても05年3月の市町村合併まで残す任期はわずかに1年半。その残された任期の間に町内4つの保育所と幼稚園を統合した幼保一体の仮称「西保育園」を6億円の事業費で完成させ、子どもを生み育てやすい環境や町民会館を中心に高齢者の生涯学習の場の充実に努めたいとしている。
議会は現在、一人欠員の19人。そのうち二人は冨岡氏を支援し、16人の大方は熊谷氏の支援。しかし、今度の町長選は町議選と同時のため、選挙が始まると現職町議たちは自分の選挙に走らなければならない。町長選初挑戦とは言え過去4回も町議選を経験している冨岡氏。一方は今度が二度目の熊谷氏。大曲仙北広域合併を選択した熊谷氏に対して冨岡氏は「大曲が中心となる。地域の文化・伝統がすたれていく」と「デメリットばかりが見える」など批判文書を盛んに印刷して配布。激しい前哨戦を展開しており、現職と新人の一騎討ちとはいえ予断の許せない選挙戦となりそうだ。9月1日現在の有権者数は男4598人、女5176人の合わせて9774人。
熊谷勲氏=1941年11月23日生まれ。秋田高校、東北大学を経て65年から88年まで三井銀行勤務。帰郷して合資会社熊与組代表社員に。92年に株式会社熊与組代表取締役に就任。中仙町商工会副会長、町建設業協会理事を歴任。