大曲の花火に70万人

好天と風も味方で過去最高の人出を記録

大会提供「輝彩繚乱」に感動と興奮の渦=総理大臣賞は野村花火工業(8月29日・日)

大会提供の花火「輝彩繚乱」第78回全国花火競技大会(大曲市、大曲商工会議所、大曲市観光物産協会主催)「大曲の花火」は28日夕、雄物川河川運動公園を会場に行われ、全国から選び抜かれた花火師28業者(県内4社)が〃音と光り〃の豪華絢爛なドラマを展開した。3年ぶりの好天に恵まれ、花火の煙をサーッと運んでいくという東風(だしかぜ)をも味方にした絶好のコンディションの中で展開された。観客数は過去最高の「70万人(主催者発表)」を記録した。審査の結果、夜花火の部で最優秀賞の「内閣総理大臣賞」を受賞したのは山口百恵の歌「コスモス」を背景に創造花火「移りゆく季節の中で」を打ち上げた茨城県の野村花火工業株式会社だった。同社は10号割物の部でも優勝した。表彰式は29日午前10時から大曲エンパイヤホテルで行われた。

  晴れた─。しかも、風は南東から北西へと流れ、花火の煙が観客席とは逆方向へ流される最高の条件に恵まれた。大量に煙を残す花火となってもそれを常に風が運び、夜空は常に新しいキャンバスを次の花火のため用意した。

  しかし、大会当日にも関わらず午前中は車の渋滞も見られず国道13号、105号はあっけに取られるほどスイスイと流れた。駐車場も空間が目立った。いつもならトラブルや問い合わせの電話で振り回される市役所の花火渋滞対策本部も出足の鈍さにやきもきし、「大曲の花火にやってくる人、全てから入場料を取るというデマが夕べ流れたようだ」といぶかる声さえ聞かれた。しかし、その不安も午後からは解消し、満員の観光客を乗せた県外からの大型バスが次々と大曲入りした。JR大曲駅に入ってくる列車も臨時を含め、あふれるほどの乗客を吐き出した。車の混雑も始まった。結局、天気が良かったため、安心して会場に行けるという安堵感が出足を鈍らせたと関係者は観測した。

  昼花火の始まる午後5時には堤防斜面に今年初めて設けた桟敷C席も含め、約9万5000人を収容する客席はほぼ埋まった。面積20ヘクタール、野球場なら13面は取れる広大なスペースの河川敷も人ひとひとであふれ返った。堤防で雑踏警備をしていた大曲消防署員は「こんな大変な人出は過去、見たことがない」と驚いた。

  ドーン。西山を背景に大音を響かせ、昼花火が始まると「ウオー」と大観衆の喜びとため息も始まった。そして午後6時50分。待ちに待った夜花火が500メートルのナイアガラの滝で幕を切った。桟敷を埋めた観客は「ウオー」「ワーッ」と興奮し、身体が右に左にと揺れた。しかも伝統の技で磨き上げた割物の大輪の花。そしてこれでもか、これでもかと秘術とアイディアを凝らした創造花火が繰り返し夜空を焦がすと「こんな花火は観たこともない」と感動させ、あきれさせた。

  大曲の大会は選び抜かれた花火師が直接、会場に乗り込んで打ち上げるのも特徴だ。花火師が名誉をかけての真剣勝負の場としているからだ。それだけに花火の質も高く、〃日本一〃の折り紙が付けられている。

  花火師が真剣勝負とする場が競技玉なら、大会提供花火はまさに花火の楽しさを知った大曲っ子たちが企画し、デザインする花火のショー。アナウンサーが「大変、お待たせしました」と大会提供花火の打ち上げを伝えると、広い河川敷は観客の期待する声でどよめき、緊張感が一気に高まった。今年は「輝彩繚乱(きさいりょうらん)」。〃輝彩〃は造語だが、「速射連発での輝きと彩りを楽しんでもらいたいと企画した」と大会関係者。幅550メートルを舞台に今年、流行した女子十二楽坊の音楽などを背景に4部構成で1700発の花火が右から左からとリズミカルに飛び出し、6分30秒にわたってさく裂すると会場は「ウオー」とばかりに興奮の坩堝(るつぼ)に陥り、拍手が鳴りやまなかった。

  最後のスポンサー付きのフィナーレ花火「10号割物30連発」も尺玉の大きさと迫力で観客を魅了した。「大曲の花火はこれだから来るのを止められない」。桟敷席で総立ちとなって帰りの準備を始めたグループは満足そうな言葉を残し、過ぎ行く夏を惜しんだ。

  花火競技大会の表彰式は29日午前10時から大曲エンパイヤホテルで行われた。大会会長の栗林次美大曲市長は「近年にない素晴らしいコンディションと感動の中で大会が行われた。素晴らしい花火を見せてもらい、心から感謝申し上げたい。本当に高いレベルの花火だった。会場で感動の涙をする女性の姿もあった。アテネオリンピックも大きな感動を与えているが、昨日の花火はそれに劣らぬものだった」と絶賛した。

人ひと人で埋まった花火会場審査は経済産業省製造産業局化学課の眞鍋隆課長、日本煙火協会の本田正憲会長、大曲市音楽協議会理事長の後藤昭三氏ら15人によって行われた。審査委員長で横浜国立大学客員教授の田村昌三工学博士は「最高の技術と伝統を持った花火を見せてもらった。技術開発にかけるなみなみならぬ努力が見られた。審査は盆の開き、色彩、形のいいもの、そして安全性と創造性、玉名に近い表現力か、新しい技術への挑戦かなどを基準にした」と述べた。

  その結果、夜花火の部の最優秀賞には茨城県の野村花火工業株式会社(野村陽一社長)が選ばれ、内閣総理大臣賞が贈られた。同社は創造花火の部で「移りゆく季節の中で」と題して歌手・山口百恵の「コスモス」の歌を背景に秋をイメージにした芸術性豊かな花火を打ち上げ、経済産業大臣賞と大会会長賞、大曲商工会議所会頭賞などを受賞した。10号割物の部でも見事な盆の開きで高い技術を見せて優勝した。

  花火を作製し、打ち上げた中村忍さん(31)は「今回で5回目の出場となった。初めて大曲の花火で打ち上げた感動は今も覚えている。それを会社の仲間みんなに伝え、こんな大会で認められる花火を作りたいと試行錯誤しながら工夫してきた。本当に嬉しい。これからも大曲の花火に集まる皆さんに認められる花火を作るよう努力したい」と礼を述べた。中村さんは「大曲の花火が終わると秋を迎える。どんな曲を選ぼうかと苦労したが、山口百恵さんの『コスモス』だと決め、それに合わせて作品をイメージした」と話した。

  審査結果は次の通り。

  ◇創造花火の部▽準優勝=株式会社磯谷煙火店(愛知県)「3,2,1,0!ロケット発射!!」▽優秀賞=株式会社北日本煙火興行(秋田県)、有限会社菊屋小幡花火店(群馬県)、有限会社太陽堂田村煙火店(長野県)▽入賞=株式会社イケブン(静岡県)、株式会社山内煙火店(山梨県)、株式会社和火屋(秋田県)、有限会社篠原煙火店(長野県)、信州煙火工業株式会社(同)、有限会社菅野煙火店(福島県)、有限会社川崎火工服部煙火店(同)、三遠煙火株式会社(静岡県)、株式会社ホソヤエンタープライズ(東京都)、株式会社小口煙火(長野県)

  ◇10号割物の部▽優勝=野村花火工業株式会社「昇曲導付四重芯引先紅光露」「昇曲導付四重芯冠菊先緑点滅」(中小企業庁長官賞・大会会長賞・大曲商工会議所会頭賞)▽準優勝=株式会社磯谷煙火店(愛知県)▽優秀賞=有限会社篠原煙火店(長野県)、株式会社山崎煙火製造所(茨城県)、根岸火工有限会社(埼玉県)▽入賞=有限会社若松煙火製造所(宮城県)、株式会社和火屋(秋田県)、株式会社北日本花火興行(秋田県)、株式会社山内煙火店(山梨県)、有限会社菅野煙火店(福島県)

  ◇昼花火の部▽優勝=株式会社ホソヤエンタープライズ(東京都)「昇曲付彩光彩雲」(秋田県知事賞・大会会長賞・大曲商工会議所会頭賞)▽準優勝=有限会社菊屋小幡花火店(群馬県)▽優秀賞=有限会社若松煙火製造所(宮城県)、株式会社芳賀火工(同)▽入賞=有限会社太陽堂田村煙火店(長野県)、信州煙火工業株式会社(同)、株式会社小松煙火工業(秋田県)

  ◇特別賞▽文部科学大臣奨励賞=株式会社磯谷煙火店(愛知県)・新技術の開発と向上に尽くした▽社団法人日本煙火協会長賞=株式会社イケブン(静岡県)創造花火「まわれ!まわれ!メリーゴーラウンド」