車いすの犬「チャンプ」の生涯

本を出版した三浦さん、大曲市に寄贈

「子どもたちの道徳の教材になる」と栗林市長もお礼(6月4日・金)

 
三浦さんから寄贈されたチャンプの本 本を寄贈する三浦さん(左)と栗林市長
 
 車いすの犬「ありがとう、チャンプ=車いすの犬と歩んだ15年」を昨年7月、幻冬舎から出版した大曲市大曲西根字鳥居の会社社長・三浦英司さん(61)は4日、大曲市教育委員会にその本33冊とドキュメンタル童話となった「車いすの犬チャンプ=ぼくのうしろ足はタイヤだよ」=池田まき子著=8冊を寄贈した。同教育委員会では三浦さんの著書は市内全小・中学校へ、池田さんの著書は低学年向けとして市内の小学校へ配布する。小学生の女の子が同級生の女子を殺害するなどすさんだ事件が相次ぐ中、三浦さんは「チャンプを通して犬でも人でも支え合っていくことで生きられるんだということを感じてもらいたい」と話す。受け取った栗林次美市長は「子どもたちの道徳の教材にしたいと思っていた本だった。大事に使わせてもらいます」とお礼を述べた。

 チャンプはビアデッド・コリーのオスで、2歳の時に自宅前で車にはねられ下半身不随になった。獣医師から「安楽死」も勧められたが、土木機械のリース業をしている三浦さんは「何とか再び自由に歩かせたい」とアルミでチャンプの胴体を乗せる台を作り、工事現場で使う投光器に付いている移動用のタイヤを利用して、体重20キロ近いチャンプを支えられる車いすづくりに挑戦。試行錯誤を重ねて完成させた。

 その車いすに胴体を乗せてチャンプは自由に走り回り、思いっきり〃生〃を楽しみ、02年11月にがんで亡くなった。15歳だった。人間で言えば80歳の高齢だった。

 車いすの犬として新聞やテレビで話題になったチャンプの死は中央の出版社「幻冬舎」にも届き、昨年1月「本にしてみないか」との誘いを受けた。書くのは苦手だったが、何とかチャンプの生涯を形あるものに残したいと記憶の糸をたぐり寄せて半年かけて原稿用紙260枚にまとめた。そして幻冬舎から昨年7月「ありがとう、チャンプ」の題名で出版され、全国的な話題となった。

 一方で「車いすの犬チャンプ」を童話として書いた池田さんは鹿角市生まれで、オーストラリアの首都キャンベラ在住のフリーライター。池田さんも02年12月、秋田市の実家に里帰りしている時にチャンプの死を新聞で知って三浦さん宅を訪問。車いすの生涯を取材し、ハート出版からドキュメンタル童話犬シリーズとして出版した。

 チャンプの物語はさらに秋田書店の女性向け月刊誌「エレガンスイブ」にも「チャンプ!」で連載中で、今年秋には単行本として出版される。さらに小学校4年生向けの道徳副読本にも「チャンプ、君のことを忘れない」のタイトルで掲載される。一方、韓国からも出版されるなどチャンプの反響は国境を越えた。

 一方の三浦さんには全国から次々と歩けない犬のために車いすを作ってもらいたいと要望が来る。それを全部、ボランティアで引き受けている。材料代などを計算すると1台当たり3万円もかかる。それでも「小遣いが減るばかりだ」と冗談も言いながら「犬が幸せになれればいいんだ」と三浦さんはお金は受け取らない。これまで41台もの車いすを製作した。チャンプは亡くなってからも人と犬との間に入って優しさを運び続けている。