酒造米の田植えを手伝い
無農薬栽培農家に酒造りの心を伝えたいと意気投合(5月31日・月)
南外村の出羽鶴酒造(伊藤辰郎社長)の看板商品でもある自然米酒「松倉」の原料米は大曲市松倉で無農薬栽培されている。その米づくりに30年以上もひたすら取り組んでいるのは小松政雄さん(72)をはじめとする大曲市無農薬栽培研究会の人たち12人。小松さんはその研究会のリーダーとして会員を引っ張ってきたが29日、小松さんの田んぼで田植えがあり、出羽鶴酒造とその製造会社である仙北町の秋田清酒の社員合わせて11人が田んぼに入って昔ながらの田植えを手伝った。
特別純米酒「松倉」は独特の風味とこくの深い酒として人気があり、値段も1.8リットル入りで4074円(税込み)する。しかし、無農薬栽培された米を原料に造った酒という健康志向も買われ、出羽鶴酒造のブランド商品になっている。
小松さんたちが無農薬米栽培に取り組んだのは最上源之助市長(故人)時代。当時、農薬の薬害が全国的に問題になっていた時代で、農薬を使わないで米を作ってみないかとの呼びかけを受けて小松さんらが挑戦した。だが、農薬を使わないでの米づくりは普通の栽培に比べ、除草から病虫害対策の面でも数倍もの手間ひまがかかった。しかし、無農薬栽培米は東京の消費者から大歓迎され、安定した販売ルートに乗った。
出羽鶴酒造でも小松さんたちのつくる米に注目。無農薬栽培米でブランド酒を造ろうと20年以上前から栽培契約をし、取り引きしている。小松さんたちが自然米酒「松倉」の原料米として栽培してきたのは「キヨニシキ」だったが、栽培が年々少なくなってきたことから03年でJAからの種もみの供給は終わった。
これを機に出羽鶴酒造では酒造米「秋の精」の栽培を小松さんらに依頼。不慣れな米の栽培に小松さんらは戸惑いを見せたが、出羽鶴酒造では社員もその米作りに取り組んで小松さんと一緒に悩んでみたいと田植えを申し出た。
小松さんらが松倉で無農薬栽培を取り組めるのは田んぼが山間にあって航空防除の対象外となっていること。それに農薬を使った田んぼから隔離され、農薬が混ざった水が流れて来ないなどの条件に恵まれているからだ。昔ならどこでも見られたホタルや赤とんぼも今では限られた場所しか見られないが、小松さんの田んぼでは夏になるとホタルが舞い、秋になると赤とんぼが稲に止まる。
田植えは出羽鶴酒造の杜氏・佐藤賢孔さんら蔵人たちが中心になって行われたが「さすがに久しぶりの手植えは腰が痛い」と悲鳴。だが「酒を造る側の誠意を田植えを通じて小松さんらに伝えたかった」と蔵人たち。あいにくの雨だったが全員、雨合羽を着て手際よく苗を一本、一本丁寧に植えていた。途中、栗林次美市長もその現場に駆けつけ、励ましていた。
小松さんは「今年から品種も変わったので、肥料の加減が分からない。JA秋田おばこが魚かすや骨粉、油かすなどを原料に製造し、市も一部を補助してくれるので無化学肥料の『米の精』を使ってとにかく慎重に育ててみたい」と話していた。
無農薬米栽培研究会では3.4ヘクタールの田んぼに酒米「秋の精」を植え、残り7.8ヘクタールには「あきたこまち」を栽培し、東京の米店に出荷する。